◆娯楽のために広報を行うのではない
本来は昨日掲載する予定の記事なのだが、本日掲載。陸海空自衛隊は、それぞれ、その任務と役割を世間に伝えるべく、広報館を配置している。
広報館は、Webサイトによる公示のほか、テレビでもお昼のバラエティー番組などで紹介されることはあり、駐屯地祭や展示訓練、航空祭など特定行事で無くとも常に入館することができる場所として知られており、特に徴兵制をとらない我が国においては、自衛隊とはどのようなものなのか、知ることができる場所は、そのまま志願者というかたちで反映されることが可能な貴重な場所である。
しかし、今回事業仕分に際しては、広報館を一種のテーマパークと勘違いされている仕分人や議員の方もいらしたようで、200円程度の有料化を模索すれば独立採算制がとれるのではないか、という提案が出た。自営隊、というわけか。なるほど、映画を見すぎた方からは装備品や航空機、戦車などのシュミュレーションは娯楽だと誤解されることもあるのだろう、本当に面白いものならば、東京ディズニーランドのような入場料が高額なテーマパークでもリピーターが望めるのだから、と引き合いに出している。
個人的には、浜松広報館や鉄のくじら館を見学した感想として、京都の寺社仏閣と同程度、確かに、500円程度の入場料に値する中身の濃い内容で、用途廃止となった装備品などが整備され並べられているものであっても、驚かされる展示は多い。場所が近ければ何度でも足を運びたくもなるだろう。
ところが、これは広報としての建物であり、軍事マニアを対象とした施設なのではなく、自衛隊とはどのような組織なのか、という最初の興味を持った人たちへの施設ということを忘れてはならないように思う。すなわち、軍事機構最大の資産は人材であり、広報とは娯楽ではなく、人材を獲得するための第一線なのであって、企業広報に有料サイトが無く、会社説明会に有料なものがないように、自衛隊の広報も優良なものは無くて然るべきといえる。
防衛省が渋谷に民間委託という形で広報施設を配置しているが、この来館者数が伸び悩んでいることも問題とされた。しかし、これで廃止、という議論に至る事はおかしく、民間委託で入場者数が伸びないのならば、別の業者に委託すればいい、これが民主党の大好きなイギリスブレア政権が行政改革の一環として導入した外注方式である。
とにかく、有能な人材を集めなければならない防衛省、政府が徴兵制を導入する意思が無いのならば、募集のための広報事業の重要性は変わらず、逆に少子化が進めば重要性は増してゆくことだろう。この点を理解できないようでは、逆に事業仕分そのものの事業評価を低くするほかない。行政刷新会議事業仕分については、防衛省区分だけを一部掲載しているが、ほかの事業仕分もこの程度の愚鈍で浅はかな認識で行われているのでは、と危惧する次第。それとも、事業実施者の説明能力の低さを指摘する声もある事だし、逆手にとり日本にロビイストという職業を広め、雇用を少しでも増進させようという意図でもあるのだろうか。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)