◆リメイクには限界
週末に再放送される昔のドラマの中でも、毎週放映されているわけではないのだが、西村京太郎のトラベルミステリーシリーズは楽しみな番組の一つだ。
十津川警部シリーズは、今でもTBSやテレビ朝日にて制作されているのだけれども、渡瀬恒彦、高橋英樹ともに素晴らしい警部を演じておられるが、個人的に三橋達也の十津川警部が、雰囲気が出ていました。故人となられ、その新作をみることはできないのだけれども、既に30作以上が三橋氏の十津川警部作品として世に出ている。
一時間ものの作品と違い、原作に極力忠実に制作されているものなので、
見たことがある作品であっても、これもたまにみると懐かしいものが、未見のものが放映されると、釘付けだ。作品の原作も短編を含めれば、無尽蔵といっていいほど、作品数が発表されており、リメイクされることもある。
しかし、この十津川警部シリーズ、時刻表トリックや鉄道車両が舞台となる事が多いのだけれども、リメイクの際に舞台となる鉄道車両そのものが無くなっているものが多い。特にブルートレインをはじめ夜行列車は多くが廃止されており、不定期運行、夜行バス、無理やり貨物列車を使用したとしても不可能なトリックが多く、仕方なく、広島から静岡までヘリコプターを利用する描写もリメイク作品ではみられた。
実際問題として、東武鉄道DRC1720形や名鉄パノラマカー、などなど、ある時代の都市を描写するうえで不可欠といえるような車両が無くなっているものも多いわけで、逆に古い作品は、王子の古い車両の車内という描写が出ているわけなのだから、そういった意味で希少価値は出てくるのだけれども、小説の場合、原作にあった食堂車での駆け引きなどは、食堂車そのものが現在では完全予約制になっていたりして本数も非常に少なく、もう再現不可能という状態になっていたりする。
しかし、これは思うのだけれども、原作を無理に再現しようとして、新幹線にどんどん追い越される夜行列車や、謎のトリックを使わずとも、これらの作品はアニメーションにてリメイクしてみてはどうだろうか、とも思う。アニメーションは、映像表現としては、一段低く見られていることは否めないが、再現度合いでは、実写で一時代前を描写するよりお有利だ。
ブルートレインは、JRに頼み込んで、電気機関車にヘッドマークを取り付けて撮影したり、保管されている客車やセットを組んで撮影する、資料画像を出す、という選択肢もあるのかもしれないが、松本清張の“点と線”リメイクのように、物凄い予算をかけて当時の東京駅などを再現する、という方法、今日的には番組制作費が追いつかないだろう。追いついたとしても、予算的にそういった大作は年に何本も制作できるものではない。
思い切って、写真資料や録音資料は多数が残っているのだし、ブルートレイン全盛期の原作をリメイクする場合には、アニメーションで十津川警部シリーズを再現すれば、ブルートレイン同士のすれ違いや、今日と当時とで異なっている駅や車窓の風景なども再現できるのではないだろうか。もっともアニメーション制作会社により、再現度合いは大きく左右されてしまうのではあるのだが。
HARUNA
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