◆航空母艦を再考する
築城基地航空祭でF-15から少し部品が脱落したり、弾道ミサイル防衛関連の装備は輸出できるのでは、と北澤防衛相が、中国が人民解放軍を派遣するスーダンへ自衛隊がPKOの後方支援で行けないか岡田外相が発言したりしているのだが、本日は別の話題。
11月29日は、日本海軍の空母信濃が静岡県沖で米海軍の潜水艦アーチャーフィッシュに撃沈されたその日から65周年にあたる日。本日からNHK、坂の上の雲の放映が始まったようですが、帝国海軍の巡洋艦筑紫が出ていました。筑紫は、今日の海上自衛隊護衛艦と比べた場合決して大きくない常備排水量1350㌧。チリ海軍向けの巡洋艦としてイギリスで建造されたものの財政上の理由で日本が買い取った巡洋艦。当時の日本海軍の陣容は、佐賀藩から接収した木製巡洋艦日進の排水量1468㌧、舷側装甲を有する木製巡洋艦の金剛、比叡が満載排水量2250㌧、すべて汽帆混成方式の推進でしたので、石炭のみを動力として装甲巡洋艦である筑紫の就役は、待望の近代軍艦といえた。
日本海軍は、その後、国家方針と国際情勢への対応の観点から、強力な戦艦などの主力艦を整備し、日清戦争では産業革命を終えた大陸中国と、日露戦争では世界最大の陸軍国であるロシアと戦火を交え、第二次世界大戦では、アメリカをはじめ世界の大半を相手として戦うこととなったのだが、その第二次世界大戦において、日本海軍は巨大な航空母艦を建造していた。信濃だ。空母信濃は、大和型戦艦の三番艦として起工され、太平洋戦争開戦に伴い建造は中断されていたものの、1942年6月30日、戦況の悪化に伴い建造は戦艦ではなく空母として再開され、1944年11月19日に竣工した。
信濃の基準排水量は62000㌧、空母赤城が36500㌧、大鳳の基準排水量が29300㌧、改装空母隼鷹で24140㌧であるから、日本海軍最大の空母であったばかりか、米海軍のレキシントン級で36000㌧、量産されたエセックス級は27100㌧、つまり第二次大戦中最大の空母であった。そればかりか、第二次大戦直後に就役したミッドウェー級で基準排水量45000㌧、フォレスタル級は59650㌧(後期型60000㌧)、キティーホーク級で60100㌧なので、信濃の大きさはよくわかるだろう。世界が信濃を追い越したのは1961年の原子力空母エンタープライズ就役だ、基準排水量は75700㌧。しかし残念ながら、竣工から十日後、前述のように潜水艦により撃沈されてしまっている。
さて、今日、海上自衛隊には全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦の基準排水量13950㌧(当初は13500㌧の計画)の、ひゅうが、を運用中、いせ、が建造中で22DDHとして、より大型の水上戦闘艦を計画中。事業仕分で22DDHは、個の建造に関しては事業仕分に馴染まず、政治判断を待つべき、という結論に至っており、22DDHは計画通り建造される方向となっている。22DDHは基準排水量19500㌧の計画で、満載排水量では30000㌧に迫る大型護衛艦として完成することとなろう。ひゅうが、いせ、が、はるな、ひえい、の後継となり、22DDH、ながと、むつ、になるのだろうか、しらね、くらま、後継となれば、四個護衛隊群は、それぞれ一隻の全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦を運用することとなる。
しかし、今後、海洋戦略で、日本のシーレーンと競合する中国海軍が、満載排水量で60000㌧程度の航空母艦二隻を建造中であり、固定翼艦載機を運用する航空母艦として完成させる方向で検討されている。日本近海への航空母艦による脅威に対しては、F-2支援戦闘機により対応することも可能であろうが、インド洋やアラビア海において、中国海軍が、そのポテンシャルを行使しようとした場合、ヘリコプター搭載護衛艦や、イージス艦では十分に対応できるとは言い切れないだろう。いわゆる空母外交を行使する場合、実能力以上に、象徴としての位置づけが重要となる。
結果的に、日本には信濃、と同程度の、もしくは赤城程度の大きさの航空母艦、その必要性が問われる時が将来的に来るのではないだろうか。固定翼を運用することのできる航空母艦となれば、建造費、維持費、必要な人員、護衛艦隊や航空集団の部隊編成などに、革新的な改編が必要となろうし、これまでの防衛大綱の枠内では不可能だろう。なによりも停泊できる埠頭が思い当たらない。整備補給を考えれば2隻、恒常的にインド洋のような外洋で部隊運用を行うとするならば、3隻でも不十分となろうが、最低限のポテンシャルだけならば2隻でも対応可能だ。必要ならば無理をしてでも、成し遂げる必要があり、信濃の命日である今日、少し考えてみるのもいいのではないか。
HARUNA
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