北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日米共同統合実動演習キーンソード2012完了 演習内容の一部が報道

2012-11-27 23:57:12 | 防衛・安全保障

◆異例の報道非公開下での大規模演習

 11月16日に終了したキーンソード2012演習の詳細が朝雲新聞より報じられていましたので本日はこの話題を。

Gimg_1585 今回のキーンソード2012演習は、報道公開があまり行われない近年では異例と言える対応で行われていましたが、その実施規模は昨年度と同程度、昨年度のキーンソード2011演習が過去最大規模ということでしたので、併せて過去最大規模と言える規模の日米共同統合実動演習となりました。

Img_84451 自衛隊からの参加規模は3万7400名、米軍からは1万名が参加した規模となり、主たる演練項目は、陸海空における作戦、基地警備訓練、統合共同輸送、捜索救助活動訓練が実施されると演習開始当初に報道公開されましたが、このうちいくつか詳細が報じられたのが今回です。

Img_90_00 岩崎統幕長は6日に原子力空母ジョージワシントンを視察、岩崎統幕長はF-15戦闘機パイロットを経て空幕長から統幕長に着任された方ですが、このジョージワシントン視察には航空総隊司令官の斉藤治和空将と第1護衛隊群司令の酒井良海将補が随行、艦上において米海軍第70任務部隊JRハーレイ司令官と会談を行った、とのこと。

Gimg_2360 9日には米軍の横浜ノースドックにおいて第27普通科連隊の日米共同輸送訓練が行われました。横浜ノースドックは新港埠頭の対岸に見える米軍の補給拠点で、第27普通科連隊は眞部和徳1佐指揮下で帯広の第5旅団に所属し、釧路駐屯地に駐屯する普通科連隊です。

Kuramaimg_3350 この前日である8日には佐世保基地において武力攻撃事態を想定した共同基地警備訓練が実施されています、なお、この訓練は昨年その開始式が報道公開され、集約チョッキを着用した佐世保警備隊の隊員が整列している様子がありましたね。この基地警備訓練には佐世保地方隊の佐世保基地隊と米軍基地司令部の警備部隊が参加し、行われました。

Img_0356 今回の訓練では沖縄県太平洋側の離島を訓練地とし、実際に奪取されたことを想定しての部隊揚陸と奪還までの一連の実動訓練を行う計画がありましたが、近隣諸国に無用の刺激を与えることを避けたいという政治的理由、一部には内閣府の一部には国務省からの、と報じられた事由により中止されています。

Img_0198 昨年のキーンソード2011演習では離島奪還訓練に際し、九州の日出生台演習場を離島に見立て、陸上部隊の長距離機動訓練などを演練しました。本来であれば、これら過去の訓練を元にした実績に依拠し、離島への実動訓練を行うべきなのですが、前述の事由があります。ただ、来年には硫黄島あたりに移し実動演習が行われる可能性は残る。

Timg_7675 本演習が終了したのとほぼ同時期に、中国海軍が空母からの固定翼艦載機試験発着に成功した内容が報じられ、ソ連海軍ミンスク極東配備以来の空母脅威が生じたこととなり、来年度からは海上自衛隊においてもこれまで米海軍との間で演練した対航空母艦対処の実動訓練などの成果が反映される訓練体系となるのでしょうか。

Jimg_9422 さて、以上の通り演習は完了したのですが、前述の通り報道公開はほとんど行われませんでした。この点についてですが、我が国の防衛態勢は万全であることを積極的に公開し、軍事演習には国民が過度な外圧への影響と反発を抑止し冷静な判断を主権者として行使できるよう行う機能はあるべきと考えます。

Img_0435 これは、例えば周辺国の我が国領土への軍事的野心を表面化させる行動のみが報じられている昨今、わが国民は我が国が劣勢にある、と誤認しがちである状況が成立しているわけです。何故ならば、我が国は憲法九条との関係から軍事力による抑止力を表だって教育や政治の場で誇示していませんでしたから。

Mimg_1330 この点で、少し考えれば東西冷戦構造下において我が国が太平洋正面における自由主義圏の防壁として役割を果たした背景で、一定の防衛力と抑止力があったことは理解でき、現在の周辺国と当時のソ連との脅威度が軍事的にどちらが高いかは考えられるものなのですが、具体的に我が国の防衛力はどの水準にあり、どういった問題があるかは広く周知し普及されているとか言いきれません。

Img_2358 我が国の防衛力が充分脅威に対応できるという範囲内で、なお問題がある、という視点ではなく、周辺国に対し劣勢である、という認識の下で主権者が判断を行うとすれば、結果として過度に攻撃的な政策を支持する事とも成り得るため、防衛力と演習はもっと積極的に公開され、国民が防衛力を理解し、討議し十分な水準とするための資材とするべきだと考えるのですが、どうでしょうか。

北大路機関:はるな

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