北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑦ 用途によっては輸入も選択肢

2012-11-09 23:54:48 | 防衛・安全保障

◆専守防衛と海外派遣、異なる仕様

 防衛産業特集、10月1日以来の再開ですが、国産装備の重要性を推していた一方で一つの視点を。

Bimg_5760 ライセンス生産を含め一部装備品については国産品よりも海外装備を重視するべきものもあるということ。特に我が国の基本政策は専守防衛であり、狭小な道路と厳しい交通基盤に多くの自国民が都市部に暮らす国土を防衛するという特殊性があります。この中d海外装備が能力を発揮できる状況は即ち二つ、一つは自衛隊が想定していなかった運用を念頭とした装備、もう一つは専守防衛と異なる運用が為される海外派遣用装備、これらについては前者は後の技術基盤として、後者は優先度から開発費を負担するよりも特殊装備として納入する程度で十分、というもの。

Img_5695 例えば耐爆装甲車などについて、我が国では道路限界からその車体規模に限界があります。例えばMRAP等を陸上自衛隊が制式採用したとして国内で運用すると仮定すれば高い車高は格好の標的となり、それ以前に狭い道路上で装甲車同士が接触事故を繰り返し、戦う前に戦力漸減で戦うと同時に破壊されるでしょう。耐爆構造は海外派遣においては必要な能力ですが、専守防衛を国是とする自衛隊では地雷は仕掛けられる側というより仕掛ける側、また米軍やイラクでやられたように日本国内で住民がパトロール中の自衛隊を仕掛け爆弾で襲うという事態は考えられません。

Img_5755 仮に自衛隊が専守防衛政策を政治の要請で大きく超えた海外での作戦、例えば脱原子力政策により今後は中東などに数個師団規模の方面隊レベルでの派遣を行う可能性が生じる、もしくは島嶼部防衛を一つ進め策源地攻撃という方式へ転換し、我が島嶼部への侵攻を試みる脅威に対し、その仮想敵国の首都を直接占領する念頭での改編を行う、というようなことを行わない範疇では、海外派遣は中央即応集団と、精々方面隊規模で国際協力器材隊をおく程度でしょう。この限りでは独自に少数の装備を導入するために開発費を投じるよりは、海外装備をそのまま取得する、という方式は採られてもよいのではないでしょうか。

Bimg_5744 加えて後方支援車両、写真はHIMARSですがこの場合扱うのは運転区画なのですけれども、この防弾加工技術など、陸上自衛隊が想定しない状況において後方支援任務を行うことを考えれば、陸上自衛隊が73式大型トラック3t半で一部に実施している装甲板付与と防弾ガラス配置では十分とは言い難いものであり、これも広範囲装備するというものでゃなく海外派遣に用いる国際平和協力用装備としての導入は、国産に過度にこだわるよりも少数ならば輸入したほうが早いやもしれません。もっとも、そのご広範に装備するならば、技術移転を受け国産型を開発する必要もあるのですけれども。

Img_5751 また、山岳戦用装備などは、特にこれまで陸上自衛隊では徒歩部隊を重要視し、ここに空中機動部隊との協同を念頭に進めてきたのですが、アフガニスタン等で用いられている山岳用装備などは新たに技術開発を念頭に仕様の研究などを行うよりも、実績ある装備をまず導入し、そののちに導入装備の後継装備を国産開発する念頭に立った装備体系構築は考えられるでしょう。装備の重量が増大する中、対戦車ミサイルなどを携行するのに人力では限界があり、軽装甲機動車や高機動車では対応できない峻険な山間部は、日本国内を見渡せば意外と多くあります。

Bimg_5690 山岳用と共に特殊部隊でも実績がある車両は普通科連隊の情報小隊などに、現在の斥候手段よりも高い情報収集が可能となりますし、例えば空挺部隊の機動打撃車両としても用いることが出来る装備は海外にはあります。これを、一部部隊と空挺部隊、自衛隊には旅団規模の一個空挺団しかありませんので、専用装備を無理して国産開発するよりは、輸入かライセンス生産を行った方が、装備実験隊や技術研究本部での労力、開発や仕様の検討などを省けますので、利点は多いといえるでしょう。

Img_5739 装甲戦闘車などについても、輸入、とまではいかずともライセンス生産により取得、もしくは一括取得と維持部品生産基盤を念頭としたライセンス生産への移行、という方式はあり得るやもしれません。写真はウォリアーなので恐縮ですが例えば、オーストリアスペイン共同開発のウラン/ピサロ装甲戦闘車は30mm機関砲のみを搭載する凡庸な装甲戦闘車ではありますが、エンジンや駆動系に変速装置などを各国が自国仕様に合致できるよう変更が可能となった柔軟性の高い装甲車ですので自衛隊の装備補給体系や教育訓練体系に合わせることが出来ます。スウェーデンのCV-90なども一定の柔軟性がつくようになりました。

Bimg_5691 これは特に我が国が前回の防衛計画の大綱を改訂した際に戦車定数を削減する際、運用の幅が広い普通科部隊に思い切って特化する、という内容が挙げられていましたが、世界は装甲戦闘車を戦車との協同車両という位置づけから機械化部隊の新しい主力へと転換されている一方、陸上自衛隊では89式装甲戦闘車の生産が戦車との協同という位置づけから転換する以前に終了してしまい、十分な数が揃えられていないという問題があるのです。この種の装甲戦闘車は、数百両単位で揃えなければならないのですが出来ていない、緊急性がある命題ですので海外から完成している装備品を暫定的に導入する、ということ。米軍のストライカー装甲車などはこの方針と同様にスイスのピラーニャを制式化しています。

Bimg_5749 陸上自衛隊は無人車両の装備開発を進めていますが自衛隊が想定していない装備、ということで完成までの暫定装備に、また運用研究を行う装備という事で、海外からの導入を考えるべきもの、多いでしょう。もちろん、時間をかけて国産装備を開発することには大きな意義があります、装備体系と、開発した装備は国内に技術基盤を構築しますので、その後継装備にはより必要性に合致した国産装備を開発、もしくは育てる、という表現に似たものを行うことが出来ます。しかし、運用研究の実動装備として、国産装備が開発されたのちには一種ハイローミックス的な運用を行うという事、考えられないでしょうか。

北大路機関:はるな

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