◆第3特科隊・第3高射特科大隊の観閲行進
日曜日の姫路駐屯地祭、この観閲行進の模様をG-12で撮影した写真から紹介しましょう。
姫路駐屯地の観閲行進は徒歩行進を行わず、全て車両行進により展開されます。これは、特科部隊が基本的に車両により機動展開を行うためで、併せて特科部隊は目標を直接視認せず戦闘を展開する間接照準射撃を行うため、各種装備は高度に情報化され、連携しているのも特色です。
観閲行進の先頭は第3特科隊副隊長の行進、後方には観閲行進への待機車両が並んでいます。副隊長は今回の姫路駐屯地祭観閲部隊指揮官を兼任しています。第3特科隊は師団特科連隊をコンパクト化したもので、2006年の第3師団改編に伴う第3特科連隊の改編により誕生しました。
第3特科隊本部及び本部管理中隊の観閲行進、82式指揮通信車です。もともと82式指揮通信車は特科大隊の情報通信用に開発され、現在は普通科連隊本部や偵察隊などに232両が生産されました。今日的には通信能力は各種通信機六基を搭載しますが、画像データ通信能力を欠くため、近く新型車両への行進が求められるところ。
本部管理中隊の観閲行進。本部管理中隊は特科隊が任務遂行を行う上で必要な様々な支援、例えば通信支援をおこなう通信小隊、指揮所設置や独立した最小限の任務を行う作業支援を行う施設小隊といった様々な機能を有する小隊から編成されています。
情報中隊の観閲行進、写真はJTPS-P16対砲レーダ装置、現代の砲兵戦は相手の火砲を直接破壊せねばなりません。この為にレーダ装置で砲弾の弾道を測定し発射位置を評定、砲弾を叩き込み、火砲そのものを無力せねばならず、JTPS-P16は50°の幅で40km以内を飛翔する砲弾など同時に18発を追尾し、発射位置を評定します。情報中隊には対迫レーダ装置とこの対砲レーダ装置が各一基装備され、この装備密度はかなり高いといえる。
第1中隊のFH-70榴弾砲、第3特科隊は、本部管理中隊、情報中隊、四個特科中隊という編成です。特科連隊時代は直接支援にあたる特科大隊三個と全般支援にあたる第五大隊という45門のFH-70榴弾砲を装備していました。見ての通り特科大隊を基本単位とした編成なのですが、特科隊への改編で特科中隊が基本単位となったことがわかります。
第2中隊のFH-70榴弾砲、観閲行進へは各中隊から2門が参加しています。特科連隊時代は1300名の定員があったのですが特科隊になり人員は500名程度に縮減されたとのことです。これにともない火砲数も20門に縮減された、ということですが縮小ではなくコンパクト化、とのこと。ちなみに観閲台後方が火砲置き場となっており、後ろには12門ならんでいました。
第3中隊のFH-70榴弾砲。FH-70榴弾砲は半自動装填装置により高い発射速度を持ち、短距離自走能力をもつ優秀な牽引砲として欧州共同開発され、第二次大戦時の火砲近代化型を置き換えることが期待されたのですが、高性能化を目指し過ぎ自走榴弾砲並みのコストを要するようになったため普及しませんでした。しかし、大柄な自走榴弾砲では機動力を発揮できない日本の地形に合うことが注目され、479門もの多数が陸上自衛隊に配備されました。
第4中隊のFH-70榴弾砲。最大射程30kmを発揮するFH-70榴弾砲は対砲レーダ装置と野戦特科情報処理システムとの連携により、少数であっても分散し的確に目標に砲弾を投射することが可能で、いわゆる情報RMAと呼ばれた陸軍デジタル化も、砲兵部隊のデータリンクを全陸軍規模に普及させたもの、と理解することもできます。新しく火力戦闘指揮統制システムFCCSも開発され、無駄な火力を効率化することがコンパクト化の主眼です。
第3高射特科大隊の観閲行進。第3高射特科大隊は大隊本部と本部管理中隊に加え、近接防空を担う第一中隊と拠点防空を担う第二中隊より編成されています。元々は第3特科連隊の第6中隊という位置づけでしたが1992年の師団改編で高射特科大隊として独立しました。今年は第3高射特科大隊創設20周年という記念すべき年です。
情報小隊の低空警戒にあたる対空レーダ装置JTPS-P9と対空レーダ装置JTPS-P14.二基のレーダ装置は最大100kmの目標を警戒、得た情報は師団対空戦闘情報システムDADSにより処理され、戦闘を展開します。なお、P-9はJTPS-P-18に更新される計画でしたが、情報漏洩事故防止への業務用パソコン一斉調達により取得費用が削られ、制式化から30年以上を経た今日でもなかなか更新することが出来ません。
第1中隊の93式近距離地対空誘導弾、射程5kmの91式携帯地対空誘導弾8発を、複合光学センサーにより照準し射撃するもので、情報小隊のレーダー情報をDADSにより共有し、脅威度の高い目標を優先して迎撃します。中隊には12両が装備され、各小隊4両が普通科連隊戦闘団への近接防空支援にあたる。分かりにくいですが、レーダーと情報処理システムとミサイルの関係は、護衛艦のレーダーと射撃指揮装置とミサイルを分散しているようなもの、というとわかりやすいでしょうか。
第2中隊の81式短距離地対空誘導弾、これは東芝が苦心の末開発した国産初のミサイルシステムで、索敵追尾距離50kmというレーダを搭載した射撃統制装置一両と四連装発射装置二両によりシステムを構成し、多目標同時対処が可能、8km以内、改良型であるC型は15kmの射程を持つとのことですが、目標を迎撃します。中隊には4セットが配置され、師団補給拠点や火力戦闘部隊等の拠点防空にあたります。
第3後方支援連隊の観閲行進、連隊本部は千僧駐屯地に置かれていますが、第二整備大隊特科直接支援隊と高射直接支援隊が姫路駐屯地に駐屯しています。これは各種装備の高度化に際し、稼働率を維持するには部隊駐屯地に駐屯し部隊を直接整備支援することが必要だ、という判断に基づくもの。
観閲行進の最後を飾るのは新隊員で、配属されたばかりの新鋭、と解説されていました。前期教育を修了し、部隊での専門教育を受ける後期教育中の隊員たちです。こののち、姫路駐屯地祭は、訓練展示模擬戦へと展開しました。G-12のEOS-7Dと協同した活躍はここまで、こののちはEOS-7Dの出番です。
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