北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ゴラン高原でシリア側の攻撃にイスラエル軍反撃 自衛隊PKO任務部隊活動地域

2012-11-13 23:43:50 | 国際・政治

◆事態は非常に緊迫、森本防衛大臣記者会見で

 シリア内戦ですが、シリア側のイスラエル領内への砲撃に対しイスラエル軍が反撃に転じました。

Fimg_8012 写真は陸上自衛隊の99式自走榴弾砲ですが、イスラエル軍はシリアとの国境地域を含めたゴラン高原に第三次中東戦争以来部隊を展開させ、現在はM-109自走榴弾砲と対砲レーダ装置を配備、同じくゴラン高原を隔てて国境を接するレバノンやヨルダンからの攻撃を警戒し、特にレバノン領内からイラン革命防衛隊外殻組織であるヒズボラなどの組織が実施するロケット弾や迫撃砲弾による射撃に対し、砲撃や時には越境作戦などを含め応戦を実施してきました。

Img_6039 そしてこの地域には第四次中東戦争後の、イスラエルシリア戦力引き離し任務として国連PKO部隊が駐留しており、我が国も1996年以降国連兵力引離監視軍司令部要員と警務部隊に加え空輸支援任務部隊を派遣し、第一線へはゴラン高原派遣輸送隊を派遣しています。軽武装も軽武装で、司令部要員は拳銃のみ、小銃も自衛用のみの派遣となっているもので、機関銃なども装備されていますが戦闘などは想定していません。こうした地域へシリア側から砲撃が行われたことは、イスラエル軍の反撃を含め事態を緊張させるものに他なりません。

Img_4469 ゴラン高原でのイスラエル側への攻撃はレバノン領内から実施されるものが多く、実際2006年にはレバノン側からの国境越えロケット弾攻撃の増大に対しイスラエル軍が大規模な越境攻撃によるロケット弾発射拠点及び補給線の寸断を目的とするレバノン侵攻が実施されおり、この際にはフランス軍が機甲部隊を緊急展開させ事態拡大阻止に向かったこともありました。他方で、シリア側は1973年の第四次中東戦争においては千両もの戦車を先頭に奇襲攻撃を実施しましたが、国連PKO部隊駐留後は大規模な戦闘を実施してきませんでした。

Img_6109 今回、シリア側から迫撃砲による攻撃が行われ、イスラエル軍が反撃、野砲により実施された反撃は正確にシリア側の迫撃砲陣地を破壊したとされます。これについて森本防衛大臣は本日の記者会見において、シリア側からの攻撃がどういった主体で行われているかはわからないとしつつ、自衛隊からのPKO部隊に対し危険は差し迫っているという認識をしていないものの、自隊は非常に緊迫しており、隊員の安全を鑑みれば非常に注意して現状の変化を見てゆかなければならない、という点を強調しました。

Simg_4251 森本防衛大臣は、現在東京の防衛省とゴラン高原派遣部隊との間において殆ど毎日、現地指揮官からの情報報告を受けていることを明かし、こうした報告を受けたうえで現在のイスラエルとシリアの停戦合意は継続されているとの判断や自衛隊の派遣部隊に関する安全状況を把握していると述べました。ここで把握されているのは、警告射撃などではなく、具体的にシリア側からの攻撃に対し、イスラエル軍が攻撃を行っている陣地を破壊するために反撃を行った、という事です。

Nimg_4320 大臣が述べたシリア側からの砲撃がどういった主体で行われているかは重要で、反政府勢力が行っているものを別として、武装勢力の混乱に乗じた攻撃であるか、シリア政府の指揮系統に関係するものであった場合には策源地攻撃としてイスラエル側が越境攻撃を行う必要に迫られることもあります。我が国としては指揮系統は国連の指揮系統に参加しているという形を採るため独自の行動を行うことは限定的ではありますが、今後の状況を見守り、派遣と安全確保の在り方についてさらに考えてゆく必要もあるでしょう。

北大路機関:はるな

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