◆アラスカ沖から日本列島沖にかけてのプレート境界
想定外、という単語を用いないために地球が起こし得る最大の地震の規模はどの程度か、この問いに一つの回答が出されました。
NHKの報道によれば東北大学の松澤暢教授が21日の専門家会合において、地球の大きさやプレート境界に蓄積しうる弾性限界などを元に地球上において発生しうる地震の最大規模のものを計算した一つの結果として、最大規模のものはマグニチュード10.0前後に達するとのこと。このマグニチュード10.0、これは東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の32倍前後という規模となり、歴史上最大の地震とされる1960年チリ沖地震のマグニチュード9.5をも上回る規模となるもよう。
マグニチュード10.0の巨大地震を地球上で引き起こし得るプレート境界は、北米アラスカ沖に端を発し、ユーラシア大陸カムチャツカ半島沖を経て日本列島沖に達する全長8800kmのプレートであり、このプレートが20mずれ動くことでマグニチュード10.0の巨大地震が発生するとのことです。揺れは20分から60分程度持続し、揺れが到達し収まる以前に地域によっては津波が到達することとなり、津波は環太平洋を反響し数日間に渡り大規模な津波が沿岸を押し流す、という被害が想定されるようです。
8800kmの断層が動くことで生じる巨大津波は、東京湾や大阪湾の湾口から侵入し東京と大阪に被害を与えると共に、地形が外洋に面している上海や香港などの大都市は歴史上かつてない被害を受ける事になり、ロスアンゼルスや湾奥に所在するサンフランシスコへも被害が及ぶほか、長周期振動は対策を施していない日本周辺国の超高層建築物を直撃することとなり、大きな被害が生じるほか、多数の島嶼がその全域を津波により浸水することとなることが予想されます。
ただし、松澤教授は、今回のマグニチュード10.0の想定について、過去日本酒編ではマグニチュード8までを想定すればよいと考えた上で9.0が生じたため、日本近海で起きる最大規模の地震への想定が甘かったのだという反省から、ごくわずかであっても可能性がある地震の脅威を最大規模で算出するという計算の結果、この数字が出た、としています。こうした観点から、予知に偏重するのではなく過去の地震被害を検証することで防災と減災の在り方について考える指針として最大規模の地震の想定はいかされるべきやもしれません。
喫緊の防災上の課題は南海トラフ地震であり、これが南海トラフ地震を契機として南海地震及び東海地震と同時期に連動する三連動型地震の発生が我が国防災政策最大の課題となっており、活断層の存在は僅かな可能性であっても大きなリスクと解釈され、今日に至ります。今回の10.0という想定は、被害を起こさないという無理な施策を試みるのではなく、リスクを管理することで被害を抑える、という観点からも考えられるべきでしょう。
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