北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮長距離弾道ミサイル実験、国際海事機関へ2月8日~25日実施を通知 沖縄上空飛行

2016-02-03 21:41:11 | 防衛・安全保障
■ミサイル破壊措置命令発令中
 北朝鮮は発射準備の兆候が指摘される長距離弾道ミサイル試験について今月8日から25日までの期間に発射すると発表しました。

 これはIMO国際海事機関へ航路危険情報の通知と共に広報されたもので、“人工衛星を打ち上げる”との名目の通知を実施、今月8日から25日までの期間で北朝鮮時間の0700時から1200時の時間帯、日本時間では0730時から1230時の時間帯に実施するというもので、北朝鮮製長距離弾道弾は多段ロケット方式を採用しているため発射と共に切り離したロケット燃料タンクが海上へ落下します。

 東倉里ミサイル試験場から発射されるミサイルは、南下し沖縄県先島諸島上空からフィリピンルソン島沖の経路を飛翔します。今回の北朝鮮のIMO国際海事機関への航路危険情報通知は、北朝鮮が想定するミサイル飛行経路下に燃料タンクが切り離され落下するため、経路上を航行する船舶や陸上施設へ落下し直撃する危険があり、この為の注意喚起というものです。

 防衛省はミサイル破壊措置命令を発令、全国の航空自衛隊高射隊弾道弾迎撃部隊と海上自衛隊イージス艦は、万一我が国領域へミサイル本体、若しくはミサイル燃料タンク部分が落下する経路を飛翔した際にはSM-3迎撃ミサイルとPAC-3迎撃ミサイルを射撃し処理する態勢です。弾道ミサイルが首都圏へ向けられた倍に備え徴候が指摘された時点からミサイル破壊措置命令発令とともに、首都圏へ迎撃準備が進められ、市ヶ谷基地での準備体制は既に完成しました。

 北朝鮮がミサイル開発を進める背景には、アメリカ本土への核攻撃能力を整備する長期的な展望があり、従来短距離弾道ミサイルであるスカッドを韓国本土用のミサイルとして、准中距離弾道弾であるスカッドCと中距離弾道弾ノドンを日本本土全域を射程に収め対日戦用に整備し、長射程のテポドンミサイルを米本土攻撃用として開発しています。

 今回事件されるミサイルは、テポドンミサイルを原型としロケットとしたもので、アメリカ本土を射程とする長距離弾道ミサイルの開発が目的とされています。今後、北朝鮮の長距離弾道ミサイル開発と量産が進む場合、アメリカ国内世論の影響によっては北東アジア情勢へ大きな影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

 北朝鮮は国連安保理決議によりミサイル技術を含む如何なるロケット実験も禁止措置が採られており、これはロケットとして人工衛星打ち上げを含む打ち上げが禁止されています、また、国連安保理決議には国際司法裁判所により法的拘束力がある強行規範であり、今回は弾道ミサイル実験と人工衛星打ち上げ共に国連安保理決議へ明確に違反する不法行為以外何物でもありません。

 2012年12月に北朝鮮は同様のミサイル実験を実施しましたが、今回北朝鮮が公表した飛翔経路も2012年に実施した弾道ミサイル実験の経路と同等の経路が示されており、沖縄県の沖縄本島付近と先島諸島上空を飛行する経路が執られます。この為、政府と防衛省自衛隊及び警察庁と総務省消防庁は連携を採って情報収集、警戒態勢に当たると共にJアラートによる非常警報発令という措置を採ります。

 ミサイル警戒態勢ですが、2014年より京都府の日本海側、経ヶ岬分屯基地に隣接する経ヶ岬通信所の米陸軍第14ミサイル防衛中隊にミサイル防衛用早期警戒レーダーAN/TPY-2が配備されているため、青森県の車力分屯基地に同じくアメリカ陸軍が前方展開させているAN/TPY-2レーダーとあわせ、前回の北朝鮮ミサイル実験よりも精密な警戒が可能でしょう。

 前回のミサイル実験に際しては航空自衛隊が宮古島分屯基地へペトリオットミサイルPAC-3部隊を緊急展開させる措置を採り、中京地区のミサイル部隊を沖縄へ転用、第4高射群の高射隊が海上自衛隊輸送艦の支援を受け航空自衛隊宮古島分屯基地へ展開し、射撃指揮官命令により即座に射撃可能とする態勢をとりました。今回、航空自衛隊の防空体制は市ヶ谷以外、人口密集地を中心とした各分屯基地での警戒態勢となっていますが、飛翔経路の公開に伴い場合によっては高射隊の機動展開措置が採られる可能性もあるやもしれません。

 2012年の実験に際しては、万一沖縄県内へ落下した場合を想定し、有毒なロケット燃料ヒドラジン被害に備えるべく、陸上自衛隊は沖縄救援隊を編成、先島諸島の石垣島と宮古島、そして沖縄本島へ増援部隊として派遣しており、その展開規模は石垣島へ450名、宮古島に200名、沖縄本島へ200名、与那国島へ50名、となっています。主として化学防護部隊と衛生部隊が中心となり、沖縄の第15旅団を支援しました。今回のミサイル事案に対して、どこまでの対応が執られるかは現在進行中ですが、万全の対応が求められます。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (11)
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