■南シナ海での中国攻勢の背景
南シナ海での中国軍の行動は、今後どのように展開するのかについて。
中国はアメリカとの軍事衝突を避けようとするものの、アメリカの軍事力投射が非活性化している現政権の任期中に次の行動へ出る、つまりアメリカが軍事力を地域紛争予防に積極的に投入しない2017年1月20日のオバマ大統領任期終了までの期間、活性化する可能性があります、そしてこれまで活性化しなかった背景には中国政府の意思決定過程の複雑さにあるとしました。今回はこの視点を、小牧基地で撮影しました航空自衛隊航空機の写真と共にしめしてゆくこととしましょう。
中国の意思決定過程は、中国共産党中央軍事委員会主席に非常に大きな権限が集約されているものの、支持母体が中国共産党と国家機関と行政機関に中国人民解放軍と複雑化している為、意見集約と調整に複雑な過程を経る必要があり、此処に時間を要する訳です。中国の指導者は国民からの指示を気にする必要はありませんが、人民解放軍や共産党からの支持を失えば選挙を経ず即座に失脚するため、調整を充分行わねばなりません。
アメリカ軍の即応性が高くともアメリカ政府の決心の即応性は低い、この事象への自国安全保障のみを考慮した施策へは、ロシア政府は大統領が国民からの支持に依拠している為大きな権限を有していますが、中国は指導者の権限は大きいものの支持母体への責任が多極化している為、即座の決定と行動を行う事が可能ですが、中国の政治システムの際がこのアメリカの軍事力の対応能力の低さを見極めたうえでの行動の遅延に起因していると考えるべきでしょう。
2017年1月20日のオバマ大統領任期終了は、中国政府にとりほぼ中期的に唯一の南シナ海周辺海域での軍事行動を実施する機会です。最も警戒すべきは、中国海軍がヴェトナム海軍を攻撃し島嶼部を占領した1988年の赤瓜礁海戦と同じような、示威行動を越えた武力紛争へ発展する可能性です。東南アジア諸国の海軍はタイ海軍のようにヘリコプター空母を保有する海軍はありますが、少数のフリゲイトとミサイル艇を主体とした海軍が多く、外洋海軍力が乏しいのが現状です。
東南アジア諸国は中国の急激な海洋進出と南沙諸島での軍事行動増大を受け、現在急速に海軍力を強化中です。長らく第二次大戦中のアメリカ製護衛駆逐艦で海上自衛隊中古艦のみしか有さなかったフィリピン海軍が欧州中古大型フリゲイト導入に着手、ヴェトナム海軍とインドネシア海軍は新しくオランダよりステルスコルベット導入を開始し、マレーシア海軍はフランスより潜水艦導入計画を開始、中古潜水艦の導入の動きも2000年代から急速に広まっています。
しかし、実能力面で現代的な海洋戦闘に対応できるかと問われた場合、未知数の部分が多いことも否めません。東南アジア諸国は冷戦期においては国内の治安作戦と隣国との国境紛争における衝突が基本であり、師団規模の機械化部隊が参加した事例も例外はアメリカとヴェトナムのヴェトナム戦争と中国がヴェトナムへ侵攻した中越戦争程度でしかありませんでした。海戦は魚雷艇や哨戒艇の機銃主体の交戦が主流でした。
現代の海洋戦闘、このなかで対水上戦闘は、艦艇間のデータリンクと広域防空艦や哨戒機との連携により三次元的に対潜戦闘とミサイル戦を展開するものですが、東南アジアには広域防空艦にあたる艦艇を欠いており、個艦防空能力を持ち自艦のみを防護できる艦艇も、少数派となっています。故に現時点で中国海軍と東南アジア諸国海軍との間には大きな能力の開きがあり、またASEANにはNATO型の軍事同盟も存在しない事から各国間の連携などは望めないでしょう。
2017年1月20日のオバマ大統領任期終了まで、南シナ海方面において大規模な海上戦闘を経ての南沙諸島での他国軍事力排除への決心を中国が行う可能性は、現状では高まると考えられ、西沙諸島配備の戦闘機と南沙諸島のレーダーサイトが稼働開始すると同時に防空識別権を設定し、東南アジア諸国空軍力を排除、その上で南沙諸島全域の島々を海軍歩兵部隊により強襲し奪取するという可能性が高くなります。
アメリカ政府が南シナ海での武力紛争を回避するには、方法は非常に簡単で、東南アジア地域へヴェトナム戦争時代に挙げられるようなヤンキーステーションを再構築することです。ヤンキーステーションとはヴェトナム戦争時代にヴェトナムでの航空支援へ南沙諸島近海に常時数隻の空母機動部隊を遊弋させた海上配置を示します。勿論、ヴェトナム戦争期と比較すればアメリカ海軍の航空母艦は配備数が縮小していますが、一隻を常時遊弋させることは、不可能では、ありません。
ペルシャ湾での空母配備状況に影響が出る可能性も考慮せねばならないのですが、イラク戦争前の時代と比較すれば、ペルシャ湾への空母常時遊弋の必然性は、イランへの牽制という意味合いと対ISIL上の必要性というものであり、フセイン政権時代のイラクと比較すれば、大規模な陸上戦闘を海軍航空戦力により阻止しなければならない切迫性は、南シナ海での情勢と比較すれば切迫度は下がってきており、アメリカ政府に意志さえあれば、紛争を抑止する事は可能でしょう。
北大路機関:はるな くらま
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南シナ海での中国軍の行動は、今後どのように展開するのかについて。
中国はアメリカとの軍事衝突を避けようとするものの、アメリカの軍事力投射が非活性化している現政権の任期中に次の行動へ出る、つまりアメリカが軍事力を地域紛争予防に積極的に投入しない2017年1月20日のオバマ大統領任期終了までの期間、活性化する可能性があります、そしてこれまで活性化しなかった背景には中国政府の意思決定過程の複雑さにあるとしました。今回はこの視点を、小牧基地で撮影しました航空自衛隊航空機の写真と共にしめしてゆくこととしましょう。
中国の意思決定過程は、中国共産党中央軍事委員会主席に非常に大きな権限が集約されているものの、支持母体が中国共産党と国家機関と行政機関に中国人民解放軍と複雑化している為、意見集約と調整に複雑な過程を経る必要があり、此処に時間を要する訳です。中国の指導者は国民からの指示を気にする必要はありませんが、人民解放軍や共産党からの支持を失えば選挙を経ず即座に失脚するため、調整を充分行わねばなりません。
アメリカ軍の即応性が高くともアメリカ政府の決心の即応性は低い、この事象への自国安全保障のみを考慮した施策へは、ロシア政府は大統領が国民からの支持に依拠している為大きな権限を有していますが、中国は指導者の権限は大きいものの支持母体への責任が多極化している為、即座の決定と行動を行う事が可能ですが、中国の政治システムの際がこのアメリカの軍事力の対応能力の低さを見極めたうえでの行動の遅延に起因していると考えるべきでしょう。
2017年1月20日のオバマ大統領任期終了は、中国政府にとりほぼ中期的に唯一の南シナ海周辺海域での軍事行動を実施する機会です。最も警戒すべきは、中国海軍がヴェトナム海軍を攻撃し島嶼部を占領した1988年の赤瓜礁海戦と同じような、示威行動を越えた武力紛争へ発展する可能性です。東南アジア諸国の海軍はタイ海軍のようにヘリコプター空母を保有する海軍はありますが、少数のフリゲイトとミサイル艇を主体とした海軍が多く、外洋海軍力が乏しいのが現状です。
東南アジア諸国は中国の急激な海洋進出と南沙諸島での軍事行動増大を受け、現在急速に海軍力を強化中です。長らく第二次大戦中のアメリカ製護衛駆逐艦で海上自衛隊中古艦のみしか有さなかったフィリピン海軍が欧州中古大型フリゲイト導入に着手、ヴェトナム海軍とインドネシア海軍は新しくオランダよりステルスコルベット導入を開始し、マレーシア海軍はフランスより潜水艦導入計画を開始、中古潜水艦の導入の動きも2000年代から急速に広まっています。
しかし、実能力面で現代的な海洋戦闘に対応できるかと問われた場合、未知数の部分が多いことも否めません。東南アジア諸国は冷戦期においては国内の治安作戦と隣国との国境紛争における衝突が基本であり、師団規模の機械化部隊が参加した事例も例外はアメリカとヴェトナムのヴェトナム戦争と中国がヴェトナムへ侵攻した中越戦争程度でしかありませんでした。海戦は魚雷艇や哨戒艇の機銃主体の交戦が主流でした。
現代の海洋戦闘、このなかで対水上戦闘は、艦艇間のデータリンクと広域防空艦や哨戒機との連携により三次元的に対潜戦闘とミサイル戦を展開するものですが、東南アジアには広域防空艦にあたる艦艇を欠いており、個艦防空能力を持ち自艦のみを防護できる艦艇も、少数派となっています。故に現時点で中国海軍と東南アジア諸国海軍との間には大きな能力の開きがあり、またASEANにはNATO型の軍事同盟も存在しない事から各国間の連携などは望めないでしょう。
2017年1月20日のオバマ大統領任期終了まで、南シナ海方面において大規模な海上戦闘を経ての南沙諸島での他国軍事力排除への決心を中国が行う可能性は、現状では高まると考えられ、西沙諸島配備の戦闘機と南沙諸島のレーダーサイトが稼働開始すると同時に防空識別権を設定し、東南アジア諸国空軍力を排除、その上で南沙諸島全域の島々を海軍歩兵部隊により強襲し奪取するという可能性が高くなります。
アメリカ政府が南シナ海での武力紛争を回避するには、方法は非常に簡単で、東南アジア地域へヴェトナム戦争時代に挙げられるようなヤンキーステーションを再構築することです。ヤンキーステーションとはヴェトナム戦争時代にヴェトナムでの航空支援へ南沙諸島近海に常時数隻の空母機動部隊を遊弋させた海上配置を示します。勿論、ヴェトナム戦争期と比較すればアメリカ海軍の航空母艦は配備数が縮小していますが、一隻を常時遊弋させることは、不可能では、ありません。
ペルシャ湾での空母配備状況に影響が出る可能性も考慮せねばならないのですが、イラク戦争前の時代と比較すれば、ペルシャ湾への空母常時遊弋の必然性は、イランへの牽制という意味合いと対ISIL上の必要性というものであり、フセイン政権時代のイラクと比較すれば、大規模な陸上戦闘を海軍航空戦力により阻止しなければならない切迫性は、南シナ海での情勢と比較すれば切迫度は下がってきており、アメリカ政府に意志さえあれば、紛争を抑止する事は可能でしょう。
北大路機関:はるな くらま
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