■西方航空部隊再編下総点検
沖縄防衛の第15旅団第15ヘリコプター隊と西部方面隊航空部隊再編下の防衛力総点検について。
第15ヘリコプター隊が縮小改編されているのではないか、こうした指摘が寄せられまして、一つの根拠は高遊原分屯地へ10機のCH-47J/JAが配備されている、というものでした。実は西部方面隊は空中機動を重視しており、西部方面航空隊へもここ数年間でCH-47J/JAの数機程度の配備が開始されていましたが、10機というまとまった数ではありません。CH-47J/JAが10機というと、そんなものか、という印象かもしれませんが、例えば陸軍兵力52万を誇る韓国軍のCH-47保有数は12機、CH-47を20機以上保有する国は世界でも多くはありません。
西部方面航空隊の高遊原分屯地へのCH-47J/JA輸送ヘリコプター10機の配備上方には驚かされたのですが、陸上自衛隊の保有するCH-47J/JA輸送ヘリコプターは55機、うち32機が木更津駐屯地の第1ヘリコプター団に装備されており、群馬県相馬原駐屯地の第12ヘリコプター隊に8機が装備、残る15機を、第15ヘリコプター隊と西部方面航空隊に北部方面航空隊と明野航空学校本校と霞ヶ浦航空学校分校が装備しています。もっとも北部方面航空隊の機体は管理替えとなった可能性があり、丘珠駐屯地創設記念行事では第1ヘリコプター団103飛行隊のCH-47JAが参加していました。
閑話休題、第15ヘリコプター隊のヘリコプター保有数ですが、CH-47J/JA輸送ヘリコプターについて、高遊原分屯地の展開すと那覇駐屯地の展開数では差異があり、このためには陸上自衛隊のヘリコプター定数に上限がある以上、どこからかは引き抜いていると考えなければなりません。そしてもう一つ、第15ヘリコプター隊のUH-60JA多用途ヘリコプターについても配備数について、縮小している可能性が出ているのです。
第8飛行隊、北熊本駐屯地に司令部を置く第8師団の隷下部隊で高遊原分屯地に駐屯している師団飛行隊ですが、このほど、UH-1J多用途ヘリコプターをUH-60JA多用途ヘリコプターへ改編したとの情報がありました。第8師団は管区内に鹿児島県全域が含まれており、奄美大島や種子島など鹿児島県島嶼部もその管区に含めている為、従来装備しているUH-1Jよりも航続距離の大きなUH-60JAが必要とされていたためでした。
第8師団がUH-60JA多用途ヘリコプターを必要としていた背景には師団管区の島嶼部という存在があったのですが、危惧が的中したのは2010年10月20日に発生した奄美大島豪雨災害でした。災害初動として鹿児島県の鹿児島市の北、国分駐屯地の第12普通科連隊が出動準備をしたものの、鹿児島空港から奄美大島までは390km、第8師団の装備では奄美大島まで空路展開する事が出来ず、結局情報小隊と連絡幹部を海上自衛隊鹿屋航空基地に展開する第72航空隊分遣隊のUH-60J救難ヘリコプターにより派遣されています。
第8師団の災害派遣部隊主力は、海上自衛隊第1輸送隊の輸送艦により展開する事も検討したようですが、呉基地から鹿児島港や宮崎港を経由して展開した場合には時間がかかり過ぎ、結局民間フェリーにて鹿児島港から派遣されることとなりました。この後、西部方面隊へ管理替えとなったCH-47J/JA輸送ヘリコプターは孤立地域へ九州電力高圧発電機車を空輸するなど活躍しましたが、初動で砥用の装備が不十分であった第8師団は、改めてUH-60JA多用途ヘリコプターの師団飛行隊への配備を要望したと伝えられます。
第8師団の第8飛行隊へのUH-60JA多用途ヘリコプター配備ですが、ようやく充足した、ものの陸上自衛隊のUH-60JA多用途ヘリコプター調達は1995年度の2機調達から開始され、1998年度には5機が要求されたものの2003年から2009年までは1機しか調達されず、2010年には3機が調達、2013年に1機と補正予算で1機が要求されたのを最後に2014年以降調達が停止し、その後は航空自衛隊が調達しているのですけれども、保有機数は陸上自衛隊全体で40機でしかなく、どこからか管理替えしなければなりません。
UH-60JA多用途ヘリコプターは陸海空自衛隊で110機を調達し、更に航空自衛隊の次期救難ヘリコプターとして改良型40機の生産が決定しているのですが、陸上自衛隊が保有するUH-60JA多用途ヘリコプターはCH-47J/JA輸送ヘリコプターよりも少なく、第8飛行隊へUH-60JAを装備させるにはどこからか補填しなければなりません、UH-60JAを装備する部隊は第1ヘリコプター団第102飛行隊や第12ヘリコプター隊と第15ヘリコプター隊に航空学校となっていますが、40機という数はぎりぎりの機数となります。
そしてもう一つ、防衛省が示した佐賀空港駐屯地化に関する説明資料として“目達原駐屯地に所在する陸上自衛隊航空機50機と新しく導入されるV-22可動翼機17機の約70機を佐賀空港へ配備する”という表現が用いられたことです。70機、というとかなりの機数ですが、そもそも目達原駐屯地から航空機全てを移駐するとして50機、第4師団第4飛行隊、第3対戦車ヘリコプター隊、西部方面航空隊の一部が駐屯しているのみで50機には達しません。50機とV-22を17機併せて70機、としていますので、数が合わない、というもの。
佐賀空港への新駐屯地とヘリコプター部隊集約は水陸機動団創設に併せての増強措置となりますが、併せて、訓練環境に限界がある那覇駐屯地へのヘリコプター集中体制を訓練環境がすぐれた九州へ再集中するという措置が採られている可能性があります。また、佐世保基地から佐賀空港が距離的に近い点を重視している旨の防衛省説明がありますから、将来的に輸送艦からの運用上必要となる機体、つまり輸送ヘリコプターの配置なども再編されるのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま
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沖縄防衛の第15旅団第15ヘリコプター隊と西部方面隊航空部隊再編下の防衛力総点検について。
第15ヘリコプター隊が縮小改編されているのではないか、こうした指摘が寄せられまして、一つの根拠は高遊原分屯地へ10機のCH-47J/JAが配備されている、というものでした。実は西部方面隊は空中機動を重視しており、西部方面航空隊へもここ数年間でCH-47J/JAの数機程度の配備が開始されていましたが、10機というまとまった数ではありません。CH-47J/JAが10機というと、そんなものか、という印象かもしれませんが、例えば陸軍兵力52万を誇る韓国軍のCH-47保有数は12機、CH-47を20機以上保有する国は世界でも多くはありません。
西部方面航空隊の高遊原分屯地へのCH-47J/JA輸送ヘリコプター10機の配備上方には驚かされたのですが、陸上自衛隊の保有するCH-47J/JA輸送ヘリコプターは55機、うち32機が木更津駐屯地の第1ヘリコプター団に装備されており、群馬県相馬原駐屯地の第12ヘリコプター隊に8機が装備、残る15機を、第15ヘリコプター隊と西部方面航空隊に北部方面航空隊と明野航空学校本校と霞ヶ浦航空学校分校が装備しています。もっとも北部方面航空隊の機体は管理替えとなった可能性があり、丘珠駐屯地創設記念行事では第1ヘリコプター団103飛行隊のCH-47JAが参加していました。
閑話休題、第15ヘリコプター隊のヘリコプター保有数ですが、CH-47J/JA輸送ヘリコプターについて、高遊原分屯地の展開すと那覇駐屯地の展開数では差異があり、このためには陸上自衛隊のヘリコプター定数に上限がある以上、どこからかは引き抜いていると考えなければなりません。そしてもう一つ、第15ヘリコプター隊のUH-60JA多用途ヘリコプターについても配備数について、縮小している可能性が出ているのです。
第8飛行隊、北熊本駐屯地に司令部を置く第8師団の隷下部隊で高遊原分屯地に駐屯している師団飛行隊ですが、このほど、UH-1J多用途ヘリコプターをUH-60JA多用途ヘリコプターへ改編したとの情報がありました。第8師団は管区内に鹿児島県全域が含まれており、奄美大島や種子島など鹿児島県島嶼部もその管区に含めている為、従来装備しているUH-1Jよりも航続距離の大きなUH-60JAが必要とされていたためでした。
第8師団がUH-60JA多用途ヘリコプターを必要としていた背景には師団管区の島嶼部という存在があったのですが、危惧が的中したのは2010年10月20日に発生した奄美大島豪雨災害でした。災害初動として鹿児島県の鹿児島市の北、国分駐屯地の第12普通科連隊が出動準備をしたものの、鹿児島空港から奄美大島までは390km、第8師団の装備では奄美大島まで空路展開する事が出来ず、結局情報小隊と連絡幹部を海上自衛隊鹿屋航空基地に展開する第72航空隊分遣隊のUH-60J救難ヘリコプターにより派遣されています。
第8師団の災害派遣部隊主力は、海上自衛隊第1輸送隊の輸送艦により展開する事も検討したようですが、呉基地から鹿児島港や宮崎港を経由して展開した場合には時間がかかり過ぎ、結局民間フェリーにて鹿児島港から派遣されることとなりました。この後、西部方面隊へ管理替えとなったCH-47J/JA輸送ヘリコプターは孤立地域へ九州電力高圧発電機車を空輸するなど活躍しましたが、初動で砥用の装備が不十分であった第8師団は、改めてUH-60JA多用途ヘリコプターの師団飛行隊への配備を要望したと伝えられます。
第8師団の第8飛行隊へのUH-60JA多用途ヘリコプター配備ですが、ようやく充足した、ものの陸上自衛隊のUH-60JA多用途ヘリコプター調達は1995年度の2機調達から開始され、1998年度には5機が要求されたものの2003年から2009年までは1機しか調達されず、2010年には3機が調達、2013年に1機と補正予算で1機が要求されたのを最後に2014年以降調達が停止し、その後は航空自衛隊が調達しているのですけれども、保有機数は陸上自衛隊全体で40機でしかなく、どこからか管理替えしなければなりません。
UH-60JA多用途ヘリコプターは陸海空自衛隊で110機を調達し、更に航空自衛隊の次期救難ヘリコプターとして改良型40機の生産が決定しているのですが、陸上自衛隊が保有するUH-60JA多用途ヘリコプターはCH-47J/JA輸送ヘリコプターよりも少なく、第8飛行隊へUH-60JAを装備させるにはどこからか補填しなければなりません、UH-60JAを装備する部隊は第1ヘリコプター団第102飛行隊や第12ヘリコプター隊と第15ヘリコプター隊に航空学校となっていますが、40機という数はぎりぎりの機数となります。
そしてもう一つ、防衛省が示した佐賀空港駐屯地化に関する説明資料として“目達原駐屯地に所在する陸上自衛隊航空機50機と新しく導入されるV-22可動翼機17機の約70機を佐賀空港へ配備する”という表現が用いられたことです。70機、というとかなりの機数ですが、そもそも目達原駐屯地から航空機全てを移駐するとして50機、第4師団第4飛行隊、第3対戦車ヘリコプター隊、西部方面航空隊の一部が駐屯しているのみで50機には達しません。50機とV-22を17機併せて70機、としていますので、数が合わない、というもの。
佐賀空港への新駐屯地とヘリコプター部隊集約は水陸機動団創設に併せての増強措置となりますが、併せて、訓練環境に限界がある那覇駐屯地へのヘリコプター集中体制を訓練環境がすぐれた九州へ再集中するという措置が採られている可能性があります。また、佐世保基地から佐賀空港が距離的に近い点を重視している旨の防衛省説明がありますから、将来的に輸送艦からの運用上必要となる機体、つまり輸送ヘリコプターの配置なども再編されるのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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