北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

21世紀のSF世界と先端防衛技術 インデペンデンスデイ/宇宙戦争/ナイトライダー/ターミネーター

2016-02-29 23:44:56 | 北大路機関特別企画
■SF映画実現の先端防衛技術
 2月29日、閏年の229となりましたが本日は21世紀のSF世界と先端防衛技術について、少し考えてみる事としましょう、SF映画にまだ先と思われた先端技術が、追いついてきました。

 先端技術が応用された現代の最新装備を見ますと、一昔のSF映画に描かれた先端技術を同等もしくは凌駕する技術が意外と増えてきたのだなあ、と感心させられるところが多々あります。スターウォーズ最新作が興行成績を塗り替えた事は記憶に新しいですが、現代戦では航空戦と海上戦闘での部隊間データリンクが基本となり、無線で怒鳴りあう描写が必要としなくなり、富士総合火力演習でも通信の指揮が電子音に取って代わられたのは記憶に新しいところ。

 F-35戦闘機が将来的に空対空レーザー兵器を搭載するとの指針に基づき技術開発が進められているとの話、いよいよレーザーという言語が軍用技術として測距や精密誘導の世界から、空対空兵器の世界へ飛び出すのかという感慨と共に、1996年の映画「インデペンデンスデイID4」のアタッカーやスピルバーグの「宇宙戦争」に登場するトライポッドへ対抗し得る技術に達したものだ、と素朴に感動を覚えたものでした。

 インデペンデンスデイID4のアタッカー、宇宙戦争のトライポッド、共に舞台が現代のSF映画ながら相手は人類よりも遥かに文明が進んだ宇宙人であり、その強力な兵器群の最大の特色として透明なシールドを張っており、ミサイルや戦車砲弾を全く受け付けない、という代物でした。しかし、可視光線で視認できるのですから、実体弾以外の粒子をかなりの部分通しており、しかもAIM-120やAIM-9等が命中しているところを見ると、レーダーには写るし赤外線も出していることとなります。

 宇宙戦争に登場するトライポッドに至っては、夜間の索敵にサーチライトを使用しており野戦能力は赤外線サーチライトを使用する74式戦車以下、攻撃開始に合図ともいえる大音響で通信していたことから相互通信では第一次大戦中のマーク1戦車並み、もちろん強力な熱線砲を備えていましたが、防御はシールド依存、NBC防護装置も無く、技術的に進んでいても戦争経験が無ければその技術に反映した高度な兵器は造られない、という印象も。

 そして可視光線と電波と赤外線を通す以上、レーザーが通る事を意味し、トライポッドやアタッカーは、F-35がレーザー運用能力整備後に地球を侵略した場合、普通にF-35、そして同世代の第六世代戦闘機に撃墜される、ということになりかねません。水上戦闘艦用レーザーは現在の20mm機関砲を基本としたCIWSの後継に具体的な進展があり、対水上戦闘では見通し線を越えた超水平線戦闘には課題が残るものの、防空にはレーザーが活用される道筋がついてまいりました。

 ナイトライダー、レーザーに続き、SF世界では、他にも現在NHK-BSで再放送中の1982年アメリカドラマ“ナイトライダー”に登場するドリームカーナイト2000について、ミサイル並の加速性能はまだその加速性から人体を防護する技術が追いつきませんが、自動運転についてはトヨタ等の自動運転技術が追いつきつつあり、人工知能との会話なども目処が立っている為、米軍ア勿論、我が国でも防衛装備庁が自動運転車両を開発中、普通科部隊支援用無人車両の研究も進んでいるとのこと。

 ドリームカーナイト2000程ではありませんが、自衛隊が誇る10式戦車もナイトライダーのM-1戦車が漸く実用化された時代からすれば相当な怪物です。自動装填装置の採用で装填がロボット化され、自動追尾装置の採用は砲手に替わりロックオンした敵地上目標を追尾する、という技術が90式戦車の時点で完成していますが、ロボット装填手とロボット補助砲手の性能、いや熟練度は10式で更に高まり、蛇行運転中に蛇行運転する目標を連続射撃する事が可能となりました。将来的には操縦手の助手を務める副操縦手の役割を自動運転機能が担う事になるでしょう。

 T-800、ロボットと云えばSF映画“ターミネーター”の世界のシュワちゃんことアーノルドシュワルツェネッガー演じるターミネーターT-800を思い出させるものですが、あの水準の自動化歩兵の量産はまだ先の話、となるでしょうが、自衛隊の中距離多目的誘導弾は、ミリ波レーダーにより地上目標をロックオンし、多数をほぼ同時に小隊間データリンクにより交戦する事が出来、ターミネーター2でのT-800がサイバーダイン社研究所において警官隊と繰り広げたような戦闘がFCSの自動化水準では現実味を帯びてきました。

 そもそもネットワーク型の戦闘という概念そのものが、インターネット普及以前の作品では、原型に当たるアーパネットシステム完成の後の作品においてもそうしたネットワークの描写、掲示板による新しい社会的相互行為形態の出現とポピュリズムの創生、ここまで予想できたものはありませんでした。例外的にスタンリーキューブリックが描いた1968年の“2001年宇宙の旅”ではタブレット端末がでているのですが、ね。

 これは、スピルバーグ監督が1985年の世界から30年後の2015年を描いた“バックトゥザフューチャー2”でも自動車が空を飛ぶ現代よりも進んだ描写はありましたが、インターネットに当たるものは出ていません。もっとも、ネットワーク中心の戦いは、少々映画的な意味での派手さを欠くという妙なリアリティもあるのでしょうが、こうした現代の様子はあまり考えられなかったようです。エイリアン2の宇宙海兵隊の戦い方よりも、現代の方が発展したのではないか、とも。

 そもそもコンピューターネットワークが構築されればコンピューターが人類を管理するというディストピア的近未来になるという警戒が抱かれていた時代、ジョージオーウェルの“1984”や東せつなさんが可愛らしい“フレッシュプリキュア”の管理国家ラビリンスのような世界が警戒されていました、しかし、RQ-9等無人機は現実世界では反乱を起こす事も無く、逆に民会がサイバースペースに構築され、フランソワトリュフォー監督が1966年に問うた“華氏451”のような世界と真逆の時代になったのは、ある意味興味深いでしょう。

 2016年になってもF-4ファントムが当然のように飛行していますが、SF映画が予測できなかったのは、スタンリーキューブリックの“博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか”にて映画の大きな部分を担ったB-52戦略爆撃機が、初飛行1952年から後継機不足から少なくとも2040年代まで運用されることとなった事実がある。

 そしてF-4ファントムが未だに防空の一翼を担うというところ、SF映画は予測できませんでした。1977年に近未来を描いた福田純監督の“惑星大戦争”では米海軍がまだF-4ファントムを使用しているという設定でしたが。1991年の東宝映画“ゴジラvsキングギドラ”では地球連邦機関のタイムマシンをかっぱらった地球均等環境会議のテロリストが、F-15をとんでもない旧式戦闘機と云っていましたが、さて、F-15Eはいつまで飛ぶのでしょうか。

 これを云い始めますと、Weblogという個人の情報発信手段、このWeblog北大路機関のようなものも含め、一昔には考えられないものでしたし、今回の特集に掲載しているような高性能のデジタルカメラを個人単位で所持し撮影し編集し公開する、という一点をとっても、また、CANON EOS-7Dmark2の高性能も、ものの十年二十年前では充分SFの世界で、1995年の映画“007ゴールデンアイ”に登場したジェームズボンドの秘密武器コンパクト高倍率ズームデジタルカメラが実現した、といえるのかもしれません、ね。

 SFの世界は深く、蒼き鋼のアルペジオのような、戦闘から作戦立案に後方支援、艦隊戦にダメージコントロールから重整備まで自分でやってくれる水上戦闘艦、ガールズ&パンツァーのどんな攻撃からも車内の乗員を安全に防護し競技としての戦車戦闘を展開できる特殊なカーボン素材、というものは中々実現まで時間を要しそうではありますが、それでも一昔にはSFの世界にしか存在しなかった技術は、着実に実現されているようで、次の閏年にはどのような技術が完成しているのか、楽しみに待ちましょう。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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