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自衛隊とスーパーハーキュリースの可能性【5】 回転翼機支援にKC-130J空中給油輸送機の必要性

2016-02-16 22:58:01 | 先端軍事テクノロジー
■KC-130Jは必要な装備
 C-130H輸送機後継機としてのC-130J輸送機導入の可能性として数回にわたり視点を示してきましたが、今回はその最終回です。

 C-130は例えば航空自衛隊YS-11輸送機後継機という位置づけとして新規に導入は為されています。そして戦術輸送機以外の用途としまして例えばKC-130等航空救難団ヘリコプター空中給油用の航空機としての採用可能性は、充分考えられるでしょう。ただし、この場合大きな競合機となるのは同じC-130シリーズの予備機となるかもしれません。例えば海上自衛隊が導入したC-130Rなどは、元々が空中給油機で、アメリカ海軍で余剰となったKC-130R輸送機6機を東日本大震災での長時間運用にて酷使し機体寿命が限界となったYS-11輸送機後継機として補正予算により一括取得したものですが、その導入に際し海上自衛隊は当初新造機を要求したものの、限られた予算では適わず、余剰機取得となった背景があり、競合機に中古機の可能性は出てきます。

 C-130J派生型としての空中給油機にはKC-130Jが既にアメリカ海兵隊などにおいて配備されていまして、航空救難団ヘリコプター空中給油用の航空機としての運用適合性は高いものがあるのですが、併せて取得費用も大きくなっています、その分の能力向上も大きく、更に海兵隊に対してメーカーであるロッキード社はISR兵装キットを装備する事で対地制圧任務機としての運用も提示、これは30mm機関砲やJDAM精密誘導爆弾、更にヘルファイア等のミサイルを搭載する攻撃型で、落下傘強襲等の任務に際しても対地攻撃支援を実施可能な点を強調しています、対地攻撃任務と云いますと対地制圧機AC-130UやAC-130J等を連想される方がいるやもしれませんが、ISR兵装キットは攻撃専用機ではなく輸送機へ輸送任務との併用を念頭とした装備です。

 空中給油能力というものは、特に航空自衛隊が新たに導入するUH-60改ヘリコプターの給油用として必要な能力です。C-2輸送機を原型として救難ヘリコプター用の空中給油装置を装備するKC-2という選択肢や、KC-767空中給油輸送機にヘリコプター給油用装置を新たに主翼下に増設し、救難ヘリコプター支援用途に充てる、という選択肢も考えられなくはないのですが、C-2派生型のKC-2については機体が大型過ぎ、KC-767の転用方式については低速で飛行するヘリコプターとの巡航速度の差が大きな障壁となり現実的ではありません。他方で、空中給油は、陸上自衛隊が新たに導入するMV-22可動翼機に対しても必要となるでしょう。

 特にUH-60改に関しては空中給油受脂装置を標準装備していますので、航空自衛隊としてこのヘリコプターへ給油する航空機は必ず一定数が必要となる訳で、この意味から新造機か中古航空機か、は別としましてヘリコプターと同程度まで速度路落とすことができる空中給油輸送機が必要となることは間違いありません。また、航空救難支援任務へも、例えば輸送機は旅客機遭難事案等において海上捜索に低空飛行する能力を活かし投入された事例が昨年と一昨年の航空遭難事案において報じられていますが、滞空時間が8時間以上と非常に長い機体であり、長く捜索救難任務とその指揮に当たる事が可能で、こうした意味でも空中給油機と救難航空機の連携という必要性から維持される可能性は大きいといえるでしょう。また、何より輸送機を二機種同時調達する方式は財政当局からの視点から難しいでしょうが、ヘリコプター用空中給油輸送機という別区分の航空機としてならば、C-2輸送機の調達期間中で当ても取得する余地は出てきます。

 ISR兵装キットについて言及しましたが、今後航空自衛隊や陸上自衛隊が特殊作戦能力の投射を重視する、若しくは戦闘地域からの要員救出などを重視する場合、特殊作戦支援航空機としてISR兵装キットを搭載したC-130Jは、特殊作戦航空機としての運用に最適な航空機でもあります。特殊作戦用のC-130としては米空軍のMC-130が挙げられ、C-130に悪天候時での飛行に必要なAN/APN-147気象/航法レーダー、地形追随飛行に必要となるAN/AAQ-17FLIR赤外線航法装置、機体を敵の攻撃から防護するAPN-59Eレーダー赤外線ミサイル発射警報装置ALE-40チャフ・フレアディスペンサー、地上の特殊部隊員と連携するKY-75-SATCOM無線装置、携帯地対空ミサイルから機体を防護するQRC-84-02A対赤外線アクティブジャマー等各種機材を搭載し、特殊作戦支援に当たるもの。

 MV-22の巡航速度と航続距離はCH-47輸送ヘリコプターと比較し大きなものがありますが、元々MV-22は搭載量がCH-47よりも抑えられ高速飛行と行動半径の大きさを重視した航空機です、そしてそのMV-22も、数十m程度の短距離離着陸を行うのか、ホバーリングにより回転翼航空機として運用するかにより航続距離は変化し、その距離を大きくとればとるほど搭載量に影響が生じますので、空中給油支援を受けての飛行が理想ではあります、こうしますと航空自衛隊にはC-130系統の空中給油能力を持つ航空機の必要数というものが最低限ある事を意味します、このあたりがC-130J導入の可能性といえるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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