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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

百里基地でF-4戦闘機火災!誘導路走行中脚部欠損と負傷者なし,奮闘する五〇年代傑作老朽機

2017-10-19 20:03:19 | 防衛・安全保障
■ファントム誘導路で炎上
 F-4戦闘機、旧式ながら防空の第一線で活躍する機種が昨日、茨城県百里基地で誘導路上にて火災を発生しました。

 百里基地第七航空団所属のF-4EJ改戦闘機が18日昼前1145時頃、離陸滑走へ向かう誘導路上で出火しました。航空自衛隊は待機している航空消防車を出動させ、F-4EJ改への消火活動を実施、30分程度で鎮火しました。火災を察知した乗員2名は迅速に手動でエンジンを停止させると共に風防を開き機外に退避した為、負傷等の事案はありませんでした。

 第302飛行隊の所属機で、誘導路上を走行中に左側の脚部が欠損し機体が大きく傾斜、主翼の一部が地面に接触し、結果誘導路に擦り付けられる事となった燃料の増槽タンクから摩擦熱により出火したもようです。百里基地は茨城空港と滑走路を共用していますが、誘導路は航空自衛隊側で、今回の火災により茨城空港への民航機運用への影響はありません。

 小野寺防衛大臣は今回の火災を受け全国のF-4戦闘機全ての安全確認を指示しました。F-4EJ及びF-4EJ改は、1966年正式採用の旧型機で、ライセンス生産を含め144機が調達され全国に配備されましたが、現在は大半が除籍、百里基地第7航空団隷下の2個飛行隊とともに百里基地の偵察航空隊、そして岐阜基地の飛行開発実験団に配備されています。延命改修は行っているのですが、機体構造部分などは採りかえる訳に行かず、補修部品を製造する防衛産業もすでに製造ラインが無い部品が多い。

 首都防空を主任務とする第7航空団は、太平洋を南下するロシア機等を警戒します。従来、比較的新しいF-15戦闘機2個飛行隊を有していましたが、一方の飛行隊が南西諸島防衛強化へ那覇基地のF-4と交替し転出、続き南九州防空強化の一環として新田原基地のF-4と交替、二つの飛行隊が共にF-4となり、自衛隊で最も古い戦闘機が東京防空を担っている。

 第302飛行隊は2018年度に百里基地から青森県三沢基地へ移駐し、旧式のF-4EJ改を新型のF-35戦闘機へ代替させる計画です。元々F-4EJ改戦闘機は2002年頃から後継機選定が本格化していました。ただ、航空自衛隊は高性能で防空戦闘能力に特化したアメリカ製F-22戦闘機の取得を希望していましたが、予算や情報保全の面で遅延し、新型機を導入できないまま、F-4が引退する訳にもいかず、現役に残りました。

 火災発生の機体も1978年製造の機体で自衛隊では古い機体です。ここまで古い機体が現役で運用できるのは、三菱重工がライセンス生産を行っており、アメリカでは運用が1994年に終了した機種でも、三菱重工が独自に整備支援を行えたため維持できています。F-4は原型初飛行が1958年、世界50カ国以上で採用されましたが、残るのはギリシャや韓国など。

 茨城空港への影響はありませんでしたが、F-4EJ改の点検を完了するまで、首都圏防空は石川県の小松基地に配備されるF-15戦闘機と青森県三沢基地のF-2戦闘機が実施することとなります。一方、旧式化した戦闘機は構造寿命検診に超音波検査等の非破壊検査を重ね、稼働率を維持していますが、実際のところ究極の解決策は新型機への代替以外ありません。古いから不具合があったのは仕方ない、と笑い話ではすみません。

 F-35が後継機となっていますが、2012年に4機、2013年に2機、2014年4機、2015年から毎年6機の予算が計上されており、今年に入り2013年調達分の機体が最終組立を完了し、試験飛行を実施しています。ただ、六年間で調達できた機体は28機であり、F-4と共にF-15戦闘機も旧式化が進んでいる為、最低毎年12機程度の調達が必要となるでしょう。

 財政状況が厳しい事は理解できますが、1950年代設計の機体を改良し1970年代に生産し、しかも常続的な任務として飛行させ続けるには限度があります。この為には戦闘機定数を削減する選択肢もありますが、対領空侵犯措置任務が年間1100回を超える現状では不可能です。予算が無いので我慢、というには限度がある、第一線の運用当事者はこの点を強調すべきですし、為政者も政治の責任として補正予算に計上してでもF-35への置換えを急がねば、次の事故に繋がりかねません。

北大路機関:はるな くらま
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