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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

衆議院総選挙二〇一七:原子力政策と南西諸島天然ガス開発視点に与野党産業政策公約を問う

2017-10-04 20:15:27 | 国際・政治
■現実的原発政策を問いたい
 衆院選へ政権公約が間もなく各党から出そろう事となりますが、原子力政策については脱原発か安全化か、即原発全廃かで大きな論点となり得るでしょう。

 原発政策は日本のエネルギー政策を左右する重要要素で、こうした命題こそ総選挙において大きく討議されるべきです。原子翼は我が国エネルギーの三割以上を担うべく全国へ原子力発電所を整備して来ました。これは1973年の石油危機を契機として、化石燃料輸入へ中東依存度の高さに対し、国内に備蓄可能な核燃料を用いエネルギー確保を目指しました。

 東海第一原発が1959年に建設認可を受けた際、最初の発電用核燃料日本到着は全国紙でも、原子力は平和の灯、として歓迎されています。これは1941年の太平洋戦争そのものが石油資源確保へ南方資源地域を占領するべく開始された事に起因し、原子力発電があれば戦争という愚行を冒さずとも、一国平和主義と共に産業を発展させられる、との視点に基づく。

 福島第一原発の2011年東日本大震災に伴う原発事故はこの視点を一転させるものとなりました。当時の菅内閣は東日本大震災を受け、東海地震が切迫しているとの独自見解に基づき静岡県浜岡原発停止を中部電力に強く要請、これを契機に全国原発の停止が順次行われる事となり、膨大な化石燃料調達費が日本経済を逼迫、世界の石油市場を動揺させました。

 太陽光発電を筆頭とする再生可能エネルギーが原子力発電への代替案として提示されていますが、夜間は発電不能で刻々と変動する電力需要に対し天候影響が大き過ぎ、揚水発電等との連動や湾口に配置する潮汐発電や風力発電との連接も限界があります。核融合発電等次世代発言技術は実用化見通しが立たず、結果的に化石燃料を輸入するか、国内開発しか選択肢はありません。

 原発維持を掲げるならばそれも選択肢です、2030年までに原発廃止や、21世紀中の原発全廃を掲げるのも選択肢でしょう、しかし即時廃止を公約としないならば、冷温停止の原発を含め電源喪失となれば炉心核崩壊熱を制御不能となり結局炉心溶解まで達します。この為、事故対策を国としてどのように責任を持つのかまで、政治は責任を負うべきでしょう。

 核事故が発生したならば、電力会社が対応できる部分と、電力会社では対応できない部分まで様々な被害を想定しなければなりません。具体的には旧ソ連がチェルノブイリ原発事故に際し、原子炉消火作業へのソ連軍動員と共に住民は勿論家畜を含めた避難まで国家としての責任を負いました。NBC防護車輛の増強を含め、原発維持には事故への備えを無視するべきではありません。

 原子力事故は我が国にとり非常に大きな脅威を及ぼす潜在要素です。それではなぜ即座に廃止できないかと問われれば代替エネルギーが無い為に原発事故という将来リスク以上に原発停止による即座の電力不足という問題の方がリスクとして大きく、現在停止中の原発大隊の輸入化石燃料費用が日本経済に大きな負担を強いているとの実情は無視できません。

 沖縄トラフ付近の海底天然ガス資源を、中国との対立が本格化する覚悟で開発するならば、原発廃止への代替エネルギーと出来るかもしれません。沖縄トラフ付近の海底天然ガス資源は埋蔵量がかなり豊富に考えられ、尖閣諸島付近に天然ガス液化プラントを埋め立て造成、日本本土へ供給する事が出来たならば、資源リスク分散を含め原子力を代替し得ます。

 しかしこの施策は確実に中国との対立を激化させます。実のところ、代替案なき原発反対には意味がないと考えているのですが、保守政党が中国との対立を防衛力で抑止しつつ、日本近海最大の掘削可能な資源である沖縄トラフ付近の我が国EEZ内の天然ガスを掘削する、という対案を出し、防衛力整備と合わせ実施するのならば、賛同の余地があるのです。

 国連海洋法条約に基づき日中等距離中間線を設定し我が国は中国との排他的経済衰期の境界線としていますが、現在中国は等距離中間線中国側において天然ガス掘削作業を進めています。この掘削作業は日中政府間合意により、日中の合意下での事業計画画定で合意されていましたが、中国は日中協議を経ず一方的海底資源開発を実施、摩擦を生んでいます。

 日本側は中国の一方的開発に反発すると共に共同開発計画などの日中協議の機会を見いだせず、抗議するだけとなっていますが、中国側は日中等距離中間線中国側での開発に限定に留めており、我が国も対抗する形で海底天然ガス掘削用リグ建設、独自開発を等距離中間線日本側の排他的経済水域において実施する、という選択肢も当然考えられるでしょう。ただ、覚悟が必要です。原発廃止という言葉はたやすい、しかし同時に一部電力廃止や一部産業廃止は困る。原発代替案において原発全廃を掲げるのならば、具体的に実現可能な代替案と共に提示される事を切に願います。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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