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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

イージスアショアにSSRレーダー選定,北朝鮮核ミサイル廃止不透明とミサイル防衛事業

2018-07-04 20:06:43 | 先端軍事テクノロジー
■秋田山口イージスアショア建設
 北朝鮮核廃絶の見通しが不透明である中、秋田県と山口県へ整備予定のイージスアショアへ前進がありました。

 イージスアショア陸上型イージス防衛システム用レーダーへ防衛省はロッキードマーティン社製SSRレーダーシステムの採用を決定しました。当初はアメリカ海軍のアーレイバーク級フライトⅢミサイル駆逐艦へ搭載されているSPY-6,海上自衛隊イージス艦のSPY-1後継機種を運用互換性から選定される可能性が指摘されていましたがSSRとなったもよう。

 SSRレーダーは富士通社製半導体素子を採用し、部分的に日本へ経済波及効果が見込めると共に長期運用費用を計算した場合、SPY-6よりも経済性に優れているとの算定があるとの点が決定に影響したと考えられ、防衛省は2023年までに秋田県と山口県の自衛隊演習場内にイージスアショア設置を完了、日本全土へのミサイル防衛体制を完成させる方針です。北朝鮮のミサイル脅威はひと段落したように思われる中、イージスアショアの建設を急ぐ背景はどう云ったものがあるのでしょうか。

 米朝初首脳会談、6月12日にシンガポールにてアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金委員長との間で合意した核廃絶の方針、トランプ大統領は北朝鮮核脅威は消滅したと豪語していますが、具体的な核廃絶計画は皆無で北朝鮮が現在何発の核弾頭を有しているかも不明でした。しかし、現状を見てみますと廃絶とは逆行している可能性が浮かんできます。

 核関連施設を北朝鮮は拡大しミサイル生産の強化を行っているのではないか、2日付CNN報道によればモントレー国際大学院MIIS研究者が咸興市内のミサイル関連部品製造施設をプラネット-ラブズ社の撮影した衛星画像を解析し、拡張工事が行われていると結論を出しました。同施設ではミサイル本体部分や弾頭部分の炭素複合素材部品を製造しています。

 核施設の整備も継続されている、これは6月28日付CNN報道において、アメリカの研究機関38ノースが北朝鮮の寧辺核関連施設衛星写真を解析し発表したもので、これまでの核実験用核物質等を抽出したプルトニウム製造用原子炉の改修や周辺に複数の支援施設増設が確認、上記のミサイル開発と核関連施設の周辺整備の継続、6月12日の米朝首脳初会談における北朝鮮の核廃棄姿勢と明らかに逆行している。

 昨年2017年の毎週のように弾道ミサイルが発射され、日本国内でもJアラートにより空襲警報が鳴り響き、小中学校ではミサイル避難訓練、冷戦時代のキューバ危機の際でも日本では行われなかった程の緊張状態、アメリカ海軍は原子力空母3隻を日本海に展開させ、大統領決断で即開戦、という状況よりは緩和されていますが、核問題は進展していません。

 海上自衛隊は日本海におけるイージス艦ミサイル警戒監視体制を完了させました。イージス艦の常時貼り付けを終了させるものですが、北朝鮮ミサイル危機を受け、射程1300kmのSM-3迎撃ミサイルを搭載し弾道ミサイル飛翔中間段階の迎撃能力を有するイージス艦を常時展開させていました。しかし日本のイージス艦は現在6隻、海上自衛隊は南西諸島において軍事圧力を強め、尖閣諸島近海に公船の侵犯を繰り返す中国に対する警戒監視を継続しなければならずイージス艦の日本海常時展開は負担が大き過ぎました。

 破壊措置命令は継続されます。この為、北朝鮮弾道ミサイルによる奇襲に備え全国の航空自衛隊高射隊のPAC-3迎撃ミサイルは従来通り警戒態勢を維持するとのこと。イージス艦は艦隊防空艦であり、高度な能力の一端をイージスBMDシステムとしてミサイル防衛に供しているもので、本来任務は艦隊防空、ミサイル防衛に専従させられぬ事情がありました。

 現段階では、北朝鮮核廃絶に向けての見通しはいまだ不透明です。こう断言する背景には、北朝鮮はクリントン政権時代の朝鮮半島核危機以来、核開発中止を約束しては反故にした先例がブッシュ政権とオバマ政権と積み重なり、このままではトランプ政権も名を連ねる事となりかねません。イージスアショア、この整備には巨額の費用を要し、例えば島嶼部防衛へ水陸機動部隊の強化や全国の即応機動連隊整備、そして戦闘機更新事業と多額の費用を要する最中で疑問符もありますが、北朝鮮ミサイル脅威の現状からイージスアショアをはじめ、まだまだ日本本土ミサイル防衛体制の整備は必要といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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