■専門職化進む現代軍隊と徴兵制
欧州で徴兵制再開の波があり、このままでは日本も徴兵制が敷かれる、一部野党が与党の保守政策に反発し流布されている視点ですが、フランスは再開を断念しました。

フランスのマクロン大統領は選挙公約に掲げていた徴兵制再開の中止を発表しました。フランスは徴兵制を永らく維持してきましたが冷戦後に廃止しています。フランスの徴兵制再開大統領公約は厳しい安全保障情勢の反映ともいえましたが、驚かされたのは大統領が提案していた徴兵制の徴兵期間が一か月間という、非常に短い期間であった点でした。

日本にも徴兵制が施行されるのではないか、この視点は近年、民主党系の立憲民主党や国民民主党、そして共産党や社会民主党などで提示されている視点です。具体的には自民公明連立与党の保守政策に対し、徴兵制の可能性があると危機感煽る事で自らの支持に繋げる試み。実際問題、自衛隊と自民公明党は徴兵制に否定的、世界的にも潮流は志願制です。

徴兵制の時代が終わりつつある、これは2003年イラク戦争を見ても分かる通り、陸上戦闘は機動戦闘へ大きく転換しており、情報共有に基づく集合と分散や火力指向の効率化を目指しているという点です。つまり少数の機械化部隊と空中機動部隊が敵中枢と策源地や通信中枢や物流中枢を分散と集合を繰り返し、敵正面にのみ急速集結し打撃を加えるという。

高度に専門化した陸上戦闘は、しかし同時に戦闘要員一人一人の負担が増大し高い技術と教育が求められます。すると従来型の大群でも対応出来そうな錯覚に陥りますが、大軍でも指揮系統を破壊されれば何をすべきか遊兵化し、機動力が少なければ大軍でも一点突破で集中攻撃された際に脆弱性は否めません、志願制要員に高度な訓練を行う事が望ましい。

厳しい安全保障情勢、欧州各国は冷戦後一貫して良好化を辿っていたロシアとの国際関係が突如悪化した事に右往左往している状況です。ドイツ連邦軍は当時ドイツ統合直後にアメリカ陸軍よりも人数が多い状態となっていましたが現状は6万3000名、フランス陸軍も9万名台となっており、欧州で10万以上の陸軍を持つのは現在ギリシャ陸軍ぐらいです。

クリミア半島へロシア軍が直接侵攻し、ウクライナ政変に便乗しクリミア半島を武力併合すると共にウクライナ東部紛争へ義勇兵を名乗り最初は揃いのジーンズに身を固めた国籍不明の特殊部隊が、続いてロシア軍装備の義勇兵がウクライナへ侵攻したのは2014年でした。ロシアのプーチン大統領はミリタリーショップで軍装は売っていると関与否定します。

国際情勢の緊張はこのクリミア併合と共に、冷戦終結後の欧州との蜜月関係は終了しつつあり、少なくとも民主主義や平和主義という意味での欧州諸国との価値観の共有は、ロシアとの間では難しい、という現実を突き付けられた瞬間でした。こうした国際情勢の緊迫化を背景に、スウェーデンが2012年に中断した徴兵制の再開を発表、そしてフランスも。

しかし、一ヶ月で何を教えるのか、フランス陸軍は現在二個機甲師団を基幹としています。機甲師団は機甲旅団と軽機甲旅団に機械化歩兵旅団と山岳旅団か落下傘旅団を基幹とする2万8000名規模の編制で、戦車を乗りこなせる要員か軽装甲車で砂漠を踏破できる要員か装甲戦闘車で市街戦を戦える要員か山岳旅団でアルプスを踏破できる要員、専門性が高い。

徴兵制中止は、大統領が徴兵制の目的を社会の団結、という軍事以外の視点を掲げた為でしょう、陸軍は専門化しており、一ヶ月ではFA-MAS小銃の分解結合と軍曹の指揮に従って行進するのが限度、体力練成や専門教育等は出来ず、有事の際の予備人員としても招集訓練の期間の方が徴兵期間よりも長くなるでしょう、この為に陸軍は施策に否定的でした。

合同合宿、マクロン大統領が徴兵制の代案として提案したのはフランス国民に男女ともに一か月間の協同合宿を行う事で団結を強化する、というものでした。合宿ならば事故の危険がある武器教育も不要、間違いも起きない。所管官庁については報じられていませんが、フランス軍は専門職化を期しており、一ヶ月徴兵の教育という負担は回避できたようです。

本土決戦、勿論、防衛政策を誤りフランス本土までロシア軍が侵攻した場合は国民皆兵制か亡国かの決断を迫られますが、フランス軍専門職化はフランスまで脅威が及ぶ前に対処する事が主眼であり、この点は不変のようです。日本も統合機動防衛力や周辺事態法対処能力を維持している限り、フランスと同様の防衛政策を志向しています。ただ、現在の野党の様に着上陸まで自衛権発動を許さないという施策を採った場合、その限りでもありません、徴兵制はあり得る、という野党勢力が政権を取った場合は、あり得るのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
欧州で徴兵制再開の波があり、このままでは日本も徴兵制が敷かれる、一部野党が与党の保守政策に反発し流布されている視点ですが、フランスは再開を断念しました。

フランスのマクロン大統領は選挙公約に掲げていた徴兵制再開の中止を発表しました。フランスは徴兵制を永らく維持してきましたが冷戦後に廃止しています。フランスの徴兵制再開大統領公約は厳しい安全保障情勢の反映ともいえましたが、驚かされたのは大統領が提案していた徴兵制の徴兵期間が一か月間という、非常に短い期間であった点でした。

日本にも徴兵制が施行されるのではないか、この視点は近年、民主党系の立憲民主党や国民民主党、そして共産党や社会民主党などで提示されている視点です。具体的には自民公明連立与党の保守政策に対し、徴兵制の可能性があると危機感煽る事で自らの支持に繋げる試み。実際問題、自衛隊と自民公明党は徴兵制に否定的、世界的にも潮流は志願制です。

徴兵制の時代が終わりつつある、これは2003年イラク戦争を見ても分かる通り、陸上戦闘は機動戦闘へ大きく転換しており、情報共有に基づく集合と分散や火力指向の効率化を目指しているという点です。つまり少数の機械化部隊と空中機動部隊が敵中枢と策源地や通信中枢や物流中枢を分散と集合を繰り返し、敵正面にのみ急速集結し打撃を加えるという。

高度に専門化した陸上戦闘は、しかし同時に戦闘要員一人一人の負担が増大し高い技術と教育が求められます。すると従来型の大群でも対応出来そうな錯覚に陥りますが、大軍でも指揮系統を破壊されれば何をすべきか遊兵化し、機動力が少なければ大軍でも一点突破で集中攻撃された際に脆弱性は否めません、志願制要員に高度な訓練を行う事が望ましい。

厳しい安全保障情勢、欧州各国は冷戦後一貫して良好化を辿っていたロシアとの国際関係が突如悪化した事に右往左往している状況です。ドイツ連邦軍は当時ドイツ統合直後にアメリカ陸軍よりも人数が多い状態となっていましたが現状は6万3000名、フランス陸軍も9万名台となっており、欧州で10万以上の陸軍を持つのは現在ギリシャ陸軍ぐらいです。

クリミア半島へロシア軍が直接侵攻し、ウクライナ政変に便乗しクリミア半島を武力併合すると共にウクライナ東部紛争へ義勇兵を名乗り最初は揃いのジーンズに身を固めた国籍不明の特殊部隊が、続いてロシア軍装備の義勇兵がウクライナへ侵攻したのは2014年でした。ロシアのプーチン大統領はミリタリーショップで軍装は売っていると関与否定します。

国際情勢の緊張はこのクリミア併合と共に、冷戦終結後の欧州との蜜月関係は終了しつつあり、少なくとも民主主義や平和主義という意味での欧州諸国との価値観の共有は、ロシアとの間では難しい、という現実を突き付けられた瞬間でした。こうした国際情勢の緊迫化を背景に、スウェーデンが2012年に中断した徴兵制の再開を発表、そしてフランスも。

しかし、一ヶ月で何を教えるのか、フランス陸軍は現在二個機甲師団を基幹としています。機甲師団は機甲旅団と軽機甲旅団に機械化歩兵旅団と山岳旅団か落下傘旅団を基幹とする2万8000名規模の編制で、戦車を乗りこなせる要員か軽装甲車で砂漠を踏破できる要員か装甲戦闘車で市街戦を戦える要員か山岳旅団でアルプスを踏破できる要員、専門性が高い。

徴兵制中止は、大統領が徴兵制の目的を社会の団結、という軍事以外の視点を掲げた為でしょう、陸軍は専門化しており、一ヶ月ではFA-MAS小銃の分解結合と軍曹の指揮に従って行進するのが限度、体力練成や専門教育等は出来ず、有事の際の予備人員としても招集訓練の期間の方が徴兵期間よりも長くなるでしょう、この為に陸軍は施策に否定的でした。

合同合宿、マクロン大統領が徴兵制の代案として提案したのはフランス国民に男女ともに一か月間の協同合宿を行う事で団結を強化する、というものでした。合宿ならば事故の危険がある武器教育も不要、間違いも起きない。所管官庁については報じられていませんが、フランス軍は専門職化を期しており、一ヶ月徴兵の教育という負担は回避できたようです。

本土決戦、勿論、防衛政策を誤りフランス本土までロシア軍が侵攻した場合は国民皆兵制か亡国かの決断を迫られますが、フランス軍専門職化はフランスまで脅威が及ぶ前に対処する事が主眼であり、この点は不変のようです。日本も統合機動防衛力や周辺事態法対処能力を維持している限り、フランスと同様の防衛政策を志向しています。ただ、現在の野党の様に着上陸まで自衛権発動を許さないという施策を採った場合、その限りでもありません、徴兵制はあり得る、という野党勢力が政権を取った場合は、あり得るのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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