■巨大水害は最早想定外ではない
大災害の度に思うのですが個々人の努力や現場の頑張りでは対応に限度があります、必要な装備が充分な数で必要と思う、例えばBV-206のような装備が。

西日本豪雨災害、改めて必要性を感じるのはBV-206のような全地形車両です。全地形車両とは普段の生活ではなじみがない車両ですが、要するにどこでも走れ、水上浮上航行性能があり、山間部などでの登坂能力が高く、履帯駆動方式により雪上を含めた不整地突破能力も十分あり、連接車輌構造を採用しており急傾斜地での横転可能性を抑えた車両です。

水陸両用車輌、仮に西日本豪雨災害のような災害は数十年に一度であり2030年代や2050年代までは当面再来は無い、という根拠でもあれば別なのですが、数十年に一度の豪雨が、広島豪雨災害や九州北部豪雨災害と北関東豪雨鬼怒川水害のように毎年発生する災害という念頭で真剣に考えるならば、自衛隊は勿論、消防や警察にも多数が必要となりましょう。

国内法ではしかし水陸両用車は非常に面倒な事情があります。自動車登録と船舶登録が二重に必要、自衛隊の94式水際地雷敷設車を見ればわかるように自動車ナンバーと船舶番号が両方記されているのはこのため。車検と船舶検査が定期的に必要ですし、操縦にも自動車免許に加えて船舶免許が必要となります、一両二両は兎も角、簡単に数は揃えられない。

全地形車両はこの点、水には浮くのですが推進装置は履帯が水を掻いて前に進むだけですので船舶ではありません、その分水上での速度は低く、当然、スクリュープロペラで航行する水陸両用車程水上は得意ではありませんが、浸水地域や海岸線で起動するには十分な機動力がありますし、何より船舶ではありませんので、大型免許があれば運転可能です。

総務省はレッドサラマンダーとしてシンガポール製ブロンコ全地形車両を一両保有していますし、国土交通省北海道開発局は湿地帯用に保有、航空自衛隊も輪島のレーダーサイト輸送用に保有しています。日本に少数配備されているのですが、一両や二両では数十カ所で同時進行する救助を求める状況に同時対応できない、今回西日本豪雨災害のような大災害ではこの種の車両が多数あれば孤立地域への派遣が容易となったのではないか。

BV-206,履帯駆動ですので最高速度は55km/hと必ずしも高速ではない為に高速道路をそのまま走行する事は出来ません。しかし車幅は1.85mですので高機動車などと同じように道路運送車両法の枠内で運用が可能ですし、BV-206の路上航続距離は330kmありますのでガソリン車程ではないにしても市販電気自動車よりは航続距離が大きく十分に実用性は高い。

大規模水害などで浸水した地域ではBV-206は道路上を自由に前進出来ます、渡河ボート以上に水没地域とそうでない地域とその向こうの水没地域を踏破でき、無論水没車輌に行方不明者がとの危惧は無いにも無いですが、連接車輌であるBV-206の輸送力は意外に大きく操縦者1名に加え17名の人員か2.2tまでの資材を輸送可能です。自衛隊に広く配備されている資材運搬車の輸送力が3tですので若干物足りないですが速度と浮航能力があります。

土砂災害等で地域が孤立した場合でも土砂で塞がった山間部道路や斜度が浅い登山道を踏破する事も可能です。資材運搬車のように長距離機動では自走は難しいものの一旦被災地へ到達したらば、具体的には斜度30度以上の急傾斜地を登攀でき、48度という急傾斜地で転換しても横転しません、履帯構造上超堤能力は0.2mと戦車よりも低いのですが斜度があれば踏破可能、孤立地域から住民を救出、加えて道路復旧資材等を集積可能でしょう。

自衛隊の任務は防衛であり災害派遣専用装備は不要、という反論もあるかもしれませんが、この登攀力は元々冬季戦の雪上機動や山岳戦を念頭としたもので、81mm迫撃砲や携帯地対空ミサイルを山間部の稜線に展開させる事は可能ですし、後部輸送能力は中距離多目的誘導弾を機動運用可能です。重量は4.5tですので屋根を取り外せばCH-47輸送ヘリコプターにそのまま搭載可能だ。

全国の普通科連隊の本部管理中隊や施設大隊本部に各4両程度配備したならば用途は広い。国土の大半が山間部の我が国では山岳戦が必至となり、各種重装備を稜線に展開可能であると共に、池沼地帯や湿地帯をそのまま弾薬などの輸送経路に転用可能、通信大隊へ配備したらば通信中継点の設置が地形制約を大きく克服出来ますし、高射特科に装備し近距離地対空ミサイル等を機動しても良い。

雪上車としての能力は充分あります、元々雪上車である為なのですが、陸上自衛隊には700両以上の78式雪上車と10式雪上車が配備されているものの、冬季以外全く活躍できていませんし、そもそも行事にも観閲行進にも参加しません。雪上車の任務に物資牽引がありますが、2.5tまで牽引も可能です。通年活躍する雪上車として運用する事も可能でしょう。

高機動車のような高速道路網を韋駄天の如く緊急展開する性能はありませんが、一旦山間部や沿岸部に湿地帯に入ってしまえば高機動車とは比較にならない機動力を発揮できます、水陸機動作戦においてもAAV-7両用強襲車のような外洋航行は不可能ですが沿岸部では機動力が大きく、日本の国土の特性を考えれば普通科連隊に中隊規模で装備されていてもおかしくない装備と考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
大災害の度に思うのですが個々人の努力や現場の頑張りでは対応に限度があります、必要な装備が充分な数で必要と思う、例えばBV-206のような装備が。

西日本豪雨災害、改めて必要性を感じるのはBV-206のような全地形車両です。全地形車両とは普段の生活ではなじみがない車両ですが、要するにどこでも走れ、水上浮上航行性能があり、山間部などでの登坂能力が高く、履帯駆動方式により雪上を含めた不整地突破能力も十分あり、連接車輌構造を採用しており急傾斜地での横転可能性を抑えた車両です。

水陸両用車輌、仮に西日本豪雨災害のような災害は数十年に一度であり2030年代や2050年代までは当面再来は無い、という根拠でもあれば別なのですが、数十年に一度の豪雨が、広島豪雨災害や九州北部豪雨災害と北関東豪雨鬼怒川水害のように毎年発生する災害という念頭で真剣に考えるならば、自衛隊は勿論、消防や警察にも多数が必要となりましょう。

国内法ではしかし水陸両用車は非常に面倒な事情があります。自動車登録と船舶登録が二重に必要、自衛隊の94式水際地雷敷設車を見ればわかるように自動車ナンバーと船舶番号が両方記されているのはこのため。車検と船舶検査が定期的に必要ですし、操縦にも自動車免許に加えて船舶免許が必要となります、一両二両は兎も角、簡単に数は揃えられない。

全地形車両はこの点、水には浮くのですが推進装置は履帯が水を掻いて前に進むだけですので船舶ではありません、その分水上での速度は低く、当然、スクリュープロペラで航行する水陸両用車程水上は得意ではありませんが、浸水地域や海岸線で起動するには十分な機動力がありますし、何より船舶ではありませんので、大型免許があれば運転可能です。

総務省はレッドサラマンダーとしてシンガポール製ブロンコ全地形車両を一両保有していますし、国土交通省北海道開発局は湿地帯用に保有、航空自衛隊も輪島のレーダーサイト輸送用に保有しています。日本に少数配備されているのですが、一両や二両では数十カ所で同時進行する救助を求める状況に同時対応できない、今回西日本豪雨災害のような大災害ではこの種の車両が多数あれば孤立地域への派遣が容易となったのではないか。

BV-206,履帯駆動ですので最高速度は55km/hと必ずしも高速ではない為に高速道路をそのまま走行する事は出来ません。しかし車幅は1.85mですので高機動車などと同じように道路運送車両法の枠内で運用が可能ですし、BV-206の路上航続距離は330kmありますのでガソリン車程ではないにしても市販電気自動車よりは航続距離が大きく十分に実用性は高い。

大規模水害などで浸水した地域ではBV-206は道路上を自由に前進出来ます、渡河ボート以上に水没地域とそうでない地域とその向こうの水没地域を踏破でき、無論水没車輌に行方不明者がとの危惧は無いにも無いですが、連接車輌であるBV-206の輸送力は意外に大きく操縦者1名に加え17名の人員か2.2tまでの資材を輸送可能です。自衛隊に広く配備されている資材運搬車の輸送力が3tですので若干物足りないですが速度と浮航能力があります。

土砂災害等で地域が孤立した場合でも土砂で塞がった山間部道路や斜度が浅い登山道を踏破する事も可能です。資材運搬車のように長距離機動では自走は難しいものの一旦被災地へ到達したらば、具体的には斜度30度以上の急傾斜地を登攀でき、48度という急傾斜地で転換しても横転しません、履帯構造上超堤能力は0.2mと戦車よりも低いのですが斜度があれば踏破可能、孤立地域から住民を救出、加えて道路復旧資材等を集積可能でしょう。

自衛隊の任務は防衛であり災害派遣専用装備は不要、という反論もあるかもしれませんが、この登攀力は元々冬季戦の雪上機動や山岳戦を念頭としたもので、81mm迫撃砲や携帯地対空ミサイルを山間部の稜線に展開させる事は可能ですし、後部輸送能力は中距離多目的誘導弾を機動運用可能です。重量は4.5tですので屋根を取り外せばCH-47輸送ヘリコプターにそのまま搭載可能だ。

全国の普通科連隊の本部管理中隊や施設大隊本部に各4両程度配備したならば用途は広い。国土の大半が山間部の我が国では山岳戦が必至となり、各種重装備を稜線に展開可能であると共に、池沼地帯や湿地帯をそのまま弾薬などの輸送経路に転用可能、通信大隊へ配備したらば通信中継点の設置が地形制約を大きく克服出来ますし、高射特科に装備し近距離地対空ミサイル等を機動しても良い。

雪上車としての能力は充分あります、元々雪上車である為なのですが、陸上自衛隊には700両以上の78式雪上車と10式雪上車が配備されているものの、冬季以外全く活躍できていませんし、そもそも行事にも観閲行進にも参加しません。雪上車の任務に物資牽引がありますが、2.5tまで牽引も可能です。通年活躍する雪上車として運用する事も可能でしょう。

高機動車のような高速道路網を韋駄天の如く緊急展開する性能はありませんが、一旦山間部や沿岸部に湿地帯に入ってしまえば高機動車とは比較にならない機動力を発揮できます、水陸機動作戦においてもAAV-7両用強襲車のような外洋航行は不可能ですが沿岸部では機動力が大きく、日本の国土の特性を考えれば普通科連隊に中隊規模で装備されていてもおかしくない装備と考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)