北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】平成28年第1空挺団降下訓練始【07】空挺部隊の攻撃開始(2016-01-10)

2019-12-15 20:18:51 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■第1空挺団,攻勢に転じる!
 空挺作戦は時間と時機が戦域優勢獲得への主導権への重要な要素となっています、降下訓練始めでは全てが最適に進んだ仮定で進む。

 AH-64D戦闘ヘリコプターが空挺部隊を強力に掩護する。戦闘ヘリコプターは第一線近くに開設する野飛行場を補給拠点として、弾薬や燃料を再補給し繰り返し展開が可能です。飛行場から運用するF-2戦闘機やアメリカ空軍のA-10攻撃機と違い、戦場近くに待機する。

 FH-70榴弾砲が、宇都宮駐屯地より展開した第12旅団第12特科隊の特科火砲が、更に強力な特科火力を敵に叩きつけるべく布陣を完了しました。手前には120mmRT重迫撃砲、81mm迫撃砲も少し奥に展開していまして、陸上自衛隊火力の一端が体系化され並びます。

 謎の車両がL-16/81mm迫撃砲の背後を進んでゆく。奥に見える茂みの様なものは写真では分かりにくいのですが、動いています。こういう生き物をどこかで見た事がありますが、当たり前ですけれどもこちらの方がずっと大きい。それも地を這うようにかなりの速度で。

 完全に擬装した車両とはこういうものをいうのでしょう、運転士が見えなければ車両とさえ気づきません。これは1/2tトラックが87式対戦車誘導弾中MATを積載した1/4tトレーラを牽引し増援へ駆けつけている所で、連接部分が地を這うようで、ちょっと不気味だ。

 空挺特科大隊の120mmRT重迫撃砲牽引車が汎用車輌として様々な輸送任務に当る、1/2tトラックが87式対戦車誘導弾中MATを積載した1/4tトレーラを牽引した先ほどの無茶な擬装に比較するならば、まだ人間味があるというかトヨタの工業製品らしい車両ですね。

 FH-70榴弾砲の射撃準備が完了する、120mmRT重迫撃砲は最大射程13kmで通常弾でも8.1kmの射程を有するが、FH-70はBB特殊装薬を用いた場合の最大射程は38kmといい、通常砲弾でも射程は30km、迫撃砲との格の違いというか、野砲の凄さを垣間見る印象です。

 1/2tトラックが87式対戦車誘導弾中MATを積載した1/4tトレーラを牽引し、二両並んで進む。違和感感じられるかもしれませんが、この二つの車両は擬装の有無が違うだけで、同じ車両が同じものを牽引し同じミサイルを搭載しています。自衛隊の擬装は凄いなあ。

 87式地雷散布装置を搭載したUH-1Jが、敵戦車部隊の接近経路を閉塞するべく展開する。87式ヘリコプター散布対戦車地雷54発を搭載し、一挙に地雷原を構成する。ただ、接近経路を塞ぐことは、我が方の攻撃進路を狭める事にもなり、指揮官の運用決断が迫られます。

 87式地雷散布装置は9発づつ3区画に分け27発の対戦車地雷を収容しているところが良く見えます。左右合せて54発、この装備が在れば敵の攻撃進路を瞬間的に閉塞する事も可能です。目立つために障害処理が容易ですが、短時間でも足止めする事に大きな意味が。

 BTR-96やT-74戦車が繰り返し接近したことで、轍が目立つような経路へと低空からUH-1Jが向かう、轍が目立つという事は窪地の経路など遮蔽物が多い地形上の特色を有しているのでしょうか。87式ヘリコプター散布対戦車地雷54発投下の地点はこのあたりか。

 87式ヘリコプター散布対戦車地雷54発が87式地雷散布装置より一斉に投下されてゆきます、落下し破損し爆発する事の無いように空気抵抗で落下速度を落とす形状となっていまして、写真を確認しただけで31発が空中を零れ落ちる様に敷設される様子がみえました。

 尖兵小隊の路上斥候を果たした情報小隊の隊員が離脱します、CH-47JA輸送ヘリコプターにより一挙に空中へ離脱します。進出した路上斥候が離脱するという事は何を意味するのか、それは我が方の火力戦闘、効力射がその地域へ降り注ぐため、といえるでしょう。

 87式対戦車誘導弾中MATを第一線へ展開させた車両が撤収する。87式対戦車誘導弾中MATの射程は2000mで01式軽対戦車誘導弾の1500mよりも若干長いのですが。後継装備として射程8kmという中距離多目的誘導弾の配備が始まっています。かなり大型ですが。

 負傷者後方搬送が開始されます、併せて捕縛した仮設敵の残置斥候も後送する事となり、逃走しないよう警戒要員と共にヘリコプター発着地点へ誘導されてゆきます。流石にこの第一線へ野外手術システムは展開できませんので、負傷者は迅速に後送せねばならない。

 UH-1J多用途ヘリコプターが後送へ進出する。赤十字の徽章を明示し救急ヘリコプターである事を明示しています。徽章を取り外せば、即座に多用途ヘリコプターへ復帰できるのですが。ただ、救急ヘリコプターは戦時国際法で守られているとはいえ、遠目に分り難い。

 UH-60Q救急ヘリコプターというアメリカ陸軍にはUH-60派生型が配備されています。驚いたのはアメリカ軍がアフガニスタン介入の際にUH-60Qを36機も配備し、迅速な後方搬送体制を確立していた、と話を聞いた際でした。日本ももう少し人命重視はできないのか。

 UH-2としてUH-1Jの後継機が現在明野駐屯地航空学校において評価試験中です。せめて機数が充分確保出来れば、救急ヘリコプターという選択肢も増えるのでしょうが。多用途ヘリコプターはドクターヘリなどよりもエンジン出力等に余裕があり、輸送力もあります。

 負傷者後方搬送へ離脱するUH-1J多用途ヘリコプターが二機、この少し前に前型のUH-1H多用途ヘリコプター最後の機体が北海道で用途廃止となりました。UH-2は当初川崎重工が開発する予定でしたが、開発制度の混迷と過剰な公正追求により頓挫し、大きく遅延した。

 AH-64D戦闘ヘリコプターとAH-1S対戦車ヘリコプターが編隊で増援へ展開します。本来の調達計画ではAH-64Dが既に50機程揃っている筈でしたが、2000年代初頭からの弾道ミサイル防衛という2兆円規模の防衛事業が従来予算の枠内で行われ、頓挫しています。

 弾道ミサイル防衛という大義名分は在れど、62機調達するという政府方針に従い62機分の部品を取得し、生産ラインを建設した富士重工は突如11機で調達中止を求められ、残る51機分の取得部品費用を防衛省へ損害賠償する訴訟へ発展、2機追加と賠償金を払いました。

 30mm機関砲を敵へ向ける。賠償金は351億円でしたが、富士重工と国の関係は一時険悪となり、これが多用途ヘリコプター後継開発でも富士重工外しと誤解される行動に繋がり、数年単位の開発遅延へ。51機分3672億円を補正予算に載せてでも調達するべきだったか。

 10式戦車、AH-64Dが空挺部隊の防衛線を支えている最中に第1師団の第1戦車大隊が駒門から増援へ駆けつけました。10式戦車はC4I機能を重視すると共に複合装甲と大出力エンジンに120mm戦車砲を採用し、優れた自動化により重量を44tまで抑えた戦車です。

 第1戦車大隊、10式戦車も当初は戦車定数600両の時代に開発されましたが、弾道ミサイル防衛への予算捻出を背景に防衛計画の大綱が改訂されるたびに戦車定数は400両、そして現在は300両へと削減され、戦車量産数が減り逆に非常に割高となってしまいました。

 戦車は、しかし、このように機動打撃では絶対に必要な装備です、10式戦車は三菱重工が2010年に年間52両生産した場合の単価を7億円としていましたが、結局予算不足から毎年9輌生産に抑えた事で単価は13億円まで上昇しています。その戦車が戦闘加入します。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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