北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊サイバー戦と自衛官募集難【4】打つ良案なきプログラム人材不足の現状とともに

2019-12-17 20:15:53 | 防衛・安全保障
■ハイテク戦争に打ち勝つ
 曹候補学生は陸曹に昇進でねば三十代で退職勧告、任期制自衛官は事実上の非正規雇用、給与額云々ではなくこの待遇で少子化時代に人を集めるのは難しい、故に教育を。

 プログラミング人材の大量養成、一つの目的は自衛隊が今後最も不足するサイバー戦部隊の練成へその基礎となる人材を養成するという目的ですが、もう一つの目的は日本国内で決定的と云える程に不足しているプログラミング人材を組織的に養成し、特に任期制自衛官や陸曹昇進枠から外れた曹候補学生の再就職支援として自衛官職業の魅力を高めること。

 自衛隊員募集難は、少子高齢化の時代に非常に苦戦を強いられているのですが、専門学校などでプログラム教育を集中的に受けるよりも、自衛官として戦闘訓練と共に、いや戦闘訓練の一環としてプログラミング教育を一任期二年単位で修業する事は退官後の第二の人生に陸運業や警備業に造園業等選択肢とは別に新しい選択肢を供する事が出来るでしょう。

 サイバー戦部隊に限らずとも、プログラミング人材の不足はあらゆる業種で今後顕著化しますが、残念ながら大学教育では情報処理専攻を除けば基礎教育で教え得るない様には限界があり、高等教育でも大学入試を主眼としたカリキュラムを組むのであればプログラミング実技は残念ながら大学入試共通一次試験には科目採用への検討さえ為されていません。

 世界とのハイテク戦争に勝ち抜くにはプログラミング人材の大量養成が必要です。世界とのハイテク戦争とは、自衛隊が各国の軍隊と戦闘を繰り広げるのものではなく、具体的には日本企業が世界各国の企業と商戦を繰り広げる為に、という視点です。現状、プログラミング人材は不足していますし、プログラミング人材養成基盤も不充分という状況がある。

 OJT方式で各企業が養成すれば良いだけの話ではあるのですが、教育重視の企業でも営利企業である以上は利益を出さねば実現せず、相当に余裕が無ければOJT方式にも限界があります。業界要請で急遽政府はプログラミングを“21世紀の算盤”と位置づけ義務教育課程での義務化を方針としていますが、そもそも教える人材を養成できていない現状がある。

 自衛隊でなければ、総務省がプログラミング人材を大量養成する必要はあっても監督官庁であり実員は技官以外求めていない。文部科学省も警察庁や経済産業省も実員供給よりは監督官庁としての地位が基本です。技官以外、厚生労働省は職員に医師免許を採らせる努力はしていませんし、文部科学省も職員に教員免許取得は求めていません、監督官庁ゆえ。

 防衛省は監督官庁という一面を有しては居ますが、自衛隊という実動部隊を直接監督しています、そして普通科にしても特科にしても通信科にしても技官として実技を有する人材を採用するのではなく、必要な人材は自前で養成しています、同じ普通科であっても高校の普通科を卒業して高校では軽火器区隊を頑張りました、という学校はないのですからね。

 陸上自衛隊がプログラミングを基本教育とする場合は久里浜の通信学校にて教官の増強を行い、ここから各学校と方面隊単位でプログラム業務隊を養成する準備隊とした上で普通科部隊や特科部隊へのプログラム教育を普及させる、という手法が理想でしょう。海上自衛隊であれば厚木のプログラム業務隊、航空自衛隊ならば小牧基地の第五術科学校が当る。

 理想としては将来に陸上自衛隊を再編する際に、サイバー戦部隊を師団単位で保有する、イギリス方式の改編を行う事でしょう。ここから分遣隊を全国の部隊へ派遣し、無人機の管制プログラムから通信ネットワークの野外構築にデジタル部隊間情報網の保守、画像情報の情報処理と兵站プログラムの構築等を行う、勿論第一線師団旅団への教育支援も行う。

 将官始め、幸い自衛隊には指揮官は数多く養成しています、これは太平洋戦争にて絞り過ぎた陸軍将校が大量の損耗により補填できず、結局中尉の指揮する大隊等、指揮官不足が露呈した為です。そして東日本大震災では自治体首長や省庁調整会議に首長や部課長級に対応する上級指揮官が必要となり、実際多すぎるといわれる幹部自衛官でも、不足でした。

 師団規模の部隊、先ずは教官の増強と久里浜の通信学校を強化し、航空学校の様に全国に通信学校分校を置き教育環境を充実させる事から着手する必要がありますが、将官ポスト等では、将官が不足する状況だけは回避できるでしょう。また指揮官は管理要員であり、指揮者である為、サイバー戦術さえ知っていればプログラミング実能力は問われません。

 電子情報処理をMOSとして資格化し、任期制自衛官御場合は退職時の就職援護にIT企業就職を最大限斡旋すると共に即応予備自衛官任官を要請、その上で即応予備自衛官訓練召集期間にはプログラム先端情報の集中教育を行い、その知識と技能が自衛隊でも社会でも陳腐化しないよう、即応予備自衛官を採用する企業へも相益性を確保する施策も望ましい。

 募集難にあえぐ自衛隊ならではの、自衛隊での教育を社会で活かす方法としてのプログラミング。先端知識が必要な人材を大量養成するのですが、例えばサイバー戦部隊を即応予備自衛官として重点採用する方針を採るならば、年間30日間の訓練期間は受け入れる企業にとっても、人材に最先端の情報教育を受けさせるための貴重な機会ともなりえます。永くなりましたが本特集はこう結論付けたいと思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (3)
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