■大水害の頻発時代と装甲車
九州北部豪雨に西日本豪雨と鬼怒川水害や台風信濃川水害、近年高い頻度で発生する巨大水害を前に自衛隊装備というものを改めて考える時代を迎えているよう思います。

LAV-25軽装甲車とBvS10全地形車両、陸上自衛隊に必要な装甲車両というものはこの二車種なのかな、こう考えることが多いのです、装甲車として優秀ですが特に水害の場合において。LAV-25軽装甲車はアメリカ海兵隊が海兵軽装甲偵察部隊に大量配備している装甲車で、BvS.10全地形車両はイギリス海兵隊が大量配備している装軌式の装甲車両です。

水害を考えますと、孤立地域からの人命救助、ここが自衛隊へ最初に災害派遣において要請される項目です。考えてみますと、浸水地域、そもそも消防車両などの特殊車両でもスノーケルや強制排気弁をそなえた車両は少数であり、渡渉できる程度の水深であっても、ひとたび市街地が水没してしまいますと人も車も、急に身動きがとれなくなる現実がある。

自衛隊の任務は主任務が防衛であり、災害派遣は副次的な任務だ、との批判はあるのかもしれませんが、災害が発生しない年度は残念ながら自衛隊創設以来ありません、したがって、副次的任務であっても頻度としては防衛出動より遙かに頻度が高いのです。そして水陸両用性能、極端な性能でない限り、この二装備は防衛出動においても寄与するでしょう。

AAV-7両用強襲車。極端な水陸両用性能というものはこちらです、水陸両用性能はもの凄い、東日本大震災や伊勢湾台風規模の港湾施設や沿岸部が壊滅する被害において大きな威力を発揮します、そして水陸機動団を筆頭に上陸作戦では必須です、しかし、河川氾濫規模、毎年発生する程度の水害ですとAAV-7は任務に対し少々大きすぎるのかもしれません。

AAV-7は自走して九州を縦断する性能はありますが車体が大きく貨物列車にも搭載できませんしC-130H輸送機にも搭載できません、ですから被災地に運び込むにも労力が大きくなるのです、なにより道路運送車両法の車両限界を大きく超えています、一週間十日間の単位で全く水が引かないような長期浸水であれば別ですがAAV-7は運ぶ労力が大きすぎる。

AAV-7はもうひとつ、広く配備するには専門的過ぎる装備で、実際、水陸機動団創設前、西部方面普通科連隊では自前での運用は不可能であるとしてAAV-7は第4戦車大隊へ配備していたほどです。しかし、LAV-25やBvS.10であれば高機動車ほどではありませんが、96式装輪装甲車や10式雪上車の延長として普通科連隊でなんとか整備しうるものです。

AAV-7の前型であるLTVP-5はフィリピン海兵隊がマニラ近郊の大規模水害に投入しています、しかし水没車両の中に心配停止の要救助者が残っている懸念もありますので、AAV-7を水害被災地へ展開させるには、そのための輸送リソースと整備リソースの捻出へ留意が必要、ですからAAV-7を全国の普通科連隊などに広く薄く配備しろ、とは主張しません。

軽装甲機動車や96式装輪装甲車、優れた装甲車ではあると思います、もっとも優れている点は安価である点でしょうか、陸上自衛隊の予算体系は地対空ミサイルとヘリコプターが優先され、結果的に装甲車両の予算は後回しとなります、89式装甲戦闘車という優秀な装甲車両がありましたが、予算優先度が低く年間数両しか調達することができませんでした。

96式装輪装甲車は操行装置の複雑さや、それほど高くない防御力などが疑問視されているのですが、一両あたり9000万円まで費用を抑えたからこそ、年間数十両を辛うじて調達できたわけでして、優秀な装甲車であっても取得費用が高く数がそろわないのであれば意味がありません。もっと予算を、といっても優先度が低いならば結果は同じといえるのです。

LAV-25軽装甲車とBvS.10全地形車両を、敢えて必要だ、と勧めるのはこの二車種が浸水地域でも自由に走行できるためなのですね、96式装輪装甲車や軽装甲機動車は水上を進むことはできません。96式装輪装甲車は密閉構造ですので浮くには浮くはずですが、水上航行を想定していないのです。これは60式装甲車と73式装甲車の関係にもにているのかも。

LAV-25、スクリューにより9.6km/hでの浮行が可能です、波切り板が装着されていますので簡単には水没しませんし、沿岸部であれば波浪さえなければ海上からの揚陸にも対応するほど。25mm機関砲を搭載していますので、敵装甲戦闘車と遭遇した際には自衛戦闘が可能ですし、車内には6名の兵員も乗車できる、軽装甲車といいつつも火力は強力です。

BvS.10全地形車両は、間接部を中央に有して急斜面などでも機動力を発揮する車両で、5km/hと非常に限られた速度ではあるのですが水上を進むことができます、履帯で水面を掻いて進みます。BvS.10はBV-206全地形車の装甲型で、小銃弾や砲弾片程度には防御力を有します、勿論、装甲戦闘車のように機関砲弾や対戦車火器には耐えられませんが、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
九州北部豪雨に西日本豪雨と鬼怒川水害や台風信濃川水害、近年高い頻度で発生する巨大水害を前に自衛隊装備というものを改めて考える時代を迎えているよう思います。

LAV-25軽装甲車とBvS10全地形車両、陸上自衛隊に必要な装甲車両というものはこの二車種なのかな、こう考えることが多いのです、装甲車として優秀ですが特に水害の場合において。LAV-25軽装甲車はアメリカ海兵隊が海兵軽装甲偵察部隊に大量配備している装甲車で、BvS.10全地形車両はイギリス海兵隊が大量配備している装軌式の装甲車両です。

水害を考えますと、孤立地域からの人命救助、ここが自衛隊へ最初に災害派遣において要請される項目です。考えてみますと、浸水地域、そもそも消防車両などの特殊車両でもスノーケルや強制排気弁をそなえた車両は少数であり、渡渉できる程度の水深であっても、ひとたび市街地が水没してしまいますと人も車も、急に身動きがとれなくなる現実がある。

自衛隊の任務は主任務が防衛であり、災害派遣は副次的な任務だ、との批判はあるのかもしれませんが、災害が発生しない年度は残念ながら自衛隊創設以来ありません、したがって、副次的任務であっても頻度としては防衛出動より遙かに頻度が高いのです。そして水陸両用性能、極端な性能でない限り、この二装備は防衛出動においても寄与するでしょう。

AAV-7両用強襲車。極端な水陸両用性能というものはこちらです、水陸両用性能はもの凄い、東日本大震災や伊勢湾台風規模の港湾施設や沿岸部が壊滅する被害において大きな威力を発揮します、そして水陸機動団を筆頭に上陸作戦では必須です、しかし、河川氾濫規模、毎年発生する程度の水害ですとAAV-7は任務に対し少々大きすぎるのかもしれません。

AAV-7は自走して九州を縦断する性能はありますが車体が大きく貨物列車にも搭載できませんしC-130H輸送機にも搭載できません、ですから被災地に運び込むにも労力が大きくなるのです、なにより道路運送車両法の車両限界を大きく超えています、一週間十日間の単位で全く水が引かないような長期浸水であれば別ですがAAV-7は運ぶ労力が大きすぎる。

AAV-7はもうひとつ、広く配備するには専門的過ぎる装備で、実際、水陸機動団創設前、西部方面普通科連隊では自前での運用は不可能であるとしてAAV-7は第4戦車大隊へ配備していたほどです。しかし、LAV-25やBvS.10であれば高機動車ほどではありませんが、96式装輪装甲車や10式雪上車の延長として普通科連隊でなんとか整備しうるものです。

AAV-7の前型であるLTVP-5はフィリピン海兵隊がマニラ近郊の大規模水害に投入しています、しかし水没車両の中に心配停止の要救助者が残っている懸念もありますので、AAV-7を水害被災地へ展開させるには、そのための輸送リソースと整備リソースの捻出へ留意が必要、ですからAAV-7を全国の普通科連隊などに広く薄く配備しろ、とは主張しません。

軽装甲機動車や96式装輪装甲車、優れた装甲車ではあると思います、もっとも優れている点は安価である点でしょうか、陸上自衛隊の予算体系は地対空ミサイルとヘリコプターが優先され、結果的に装甲車両の予算は後回しとなります、89式装甲戦闘車という優秀な装甲車両がありましたが、予算優先度が低く年間数両しか調達することができませんでした。

96式装輪装甲車は操行装置の複雑さや、それほど高くない防御力などが疑問視されているのですが、一両あたり9000万円まで費用を抑えたからこそ、年間数十両を辛うじて調達できたわけでして、優秀な装甲車であっても取得費用が高く数がそろわないのであれば意味がありません。もっと予算を、といっても優先度が低いならば結果は同じといえるのです。

LAV-25軽装甲車とBvS.10全地形車両を、敢えて必要だ、と勧めるのはこの二車種が浸水地域でも自由に走行できるためなのですね、96式装輪装甲車や軽装甲機動車は水上を進むことはできません。96式装輪装甲車は密閉構造ですので浮くには浮くはずですが、水上航行を想定していないのです。これは60式装甲車と73式装甲車の関係にもにているのかも。

LAV-25、スクリューにより9.6km/hでの浮行が可能です、波切り板が装着されていますので簡単には水没しませんし、沿岸部であれば波浪さえなければ海上からの揚陸にも対応するほど。25mm機関砲を搭載していますので、敵装甲戦闘車と遭遇した際には自衛戦闘が可能ですし、車内には6名の兵員も乗車できる、軽装甲車といいつつも火力は強力です。

BvS.10全地形車両は、間接部を中央に有して急斜面などでも機動力を発揮する車両で、5km/hと非常に限られた速度ではあるのですが水上を進むことができます、履帯で水面を掻いて進みます。BvS.10はBV-206全地形車の装甲型で、小銃弾や砲弾片程度には防御力を有します、勿論、装甲戦闘車のように機関砲弾や対戦車火器には耐えられませんが、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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