■消防庁水陸両用車の全国配備
レッドサラマンダー、否定的な話題が多いものの必ずしも的を射ているものばかりではなく、当事者としては憂鬱でしょう。全五回の予定でしたが追記的に議論します。
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M-1A2戦車が一両だけ陸上自衛隊の本州のとある普通科連隊に全国を代表する虎の子装備として配備されてしまった、レッドサラマンダー位置づけはこれに近いでしょう。M-1A2では普通科連隊に配備されている重レッカー車では回収できませんし、強力ですが少しはしるだけで重整備が必要ですが、本部管理中隊では整備しきれない、というようなもの。
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レッドサラマンダー。総務省が保有する全地形対応車両の愛称です。このレッドサラマンダー、一般に理解されている点では大型であり身動きが難しいため、あまり活躍できていない、という印象的なものがあるようです。一概に間違いとも言い切れないのですが、総務省から岡崎市消防局に貸与されているという特殊性を加味せねば実態が分らず装備として憂鬱でしょう。
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警視庁特別車両機動隊のようにレッドサラマンダーも総務省消防庁特別車両支援隊として、せめて10両程度を集中配備し、そのうえで車両整備小隊を配置していたならば、もう少し評価は変わったようにも思います。特にレッドサラマンダーは輸送車での移動が基本、しかし50km/hで路上を走れるのですから自走範囲内で活動できる配備密度が必要でした。
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岡崎市消防局は職員数約370名、消防署3カ所と分署及び出張所を7カ所配置していまして、消防車15台とはしご車など特殊消防車8台、救急車14台を保有しています、そして緊急消防援助隊に参加しており、ここに総務省からレッドサラマンダーを貸与されている、要するに消防車のような岡崎市だけの装備品ではなく総務省が運用する車両なのですね。
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ブロンコ全地形車両、この日本仕様がレッドサラマンダーなのですが、日本国内での運用にあわせて国内法に依拠した改修が行われています、そして、総務省消防庁の説明では60cmまでの段差と1.5mまでの水深の被災地域を踏破する、としています。全地形車両ですが日本の国内法では水陸両用車として運用することに問題があることを意味しています。
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しかし、緊急消防援助隊派遣を総務省が決定した際には現地へ進出するため、2017年九州北部豪雨災害、2018年西日本豪雨災害、現地へ緊急消防援助隊の一員として派遣されています。問題は現地での運用で、レッドサラマンダーと支援車Ⅰ型及び輸送車が配備されているだけで、この支援車は整備車両ではなく生活支援車、キャンピングカーだけです。
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レッドサラマンダーの運用支援、自衛隊でいう野整備用の装備が総務省から派遣されておらず、そして一両だけですので浸水地域での走行不能からの離脱というものを考えていないのですね、もちろん消防には装軌車回収車もありません、一両しか無く整備車両も配備されず回収車さえない、レッドサラマンダーの運用を大きく阻害しているのではないか。
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ハイドラトレック。しかし全地形車両全般が消防から三行半を突きつけられているわけではなく、中型水陸両用車としてアメリカのハイドラトレック社製全地形車両が全国に薄く広く配備が開始されています、これは2019年の千葉県北部豪雨に際して、この時点ではまだ全国に2両のみ、千葉県山武市の孤立幼稚園救助に派遣され、もう実績があるのですね。
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千葉県北部豪雨では64名の孤立者があり、ちょうどこの全国に2両のみが配備される車両の一両が山武郡市広域消防組合に配備されていたことで派遣要請があり、あまり大人数を輸送できるものではないのですが8往復で全員を救助しています。ハイドラトレックは装軌式車両ですがスクキュープロペラを搭載しており、文字通りこれは水陸両用車でもある。
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徳島県と千葉県に配備されているのみであったハイドラトレック中型水陸両用車ですが、東三河新聞2020年3月29日に豊橋中消防署への配備、河北新報2020年5月30日付消防では6月に宮城県大崎郡鳴子消防署へハイドラトレック配備が報じられており、更に小型水陸両用車としてスパキャットの導入も、ゆっくりとしてですが開始されています現状が。
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自衛隊では少数配備されている全地形車両は活躍しています、輪島分屯基地や佐渡分屯基地、積雪地域のレーダーサイトに配備されています。この車両は冬季には必須の装備といわれていまして、監視小隊が標高の高いレーダーアンテナ付近まで交代する際、食料や生活必需品とともに危険な積雪下の山道を登攀するにはBV-206は必須といわれ、重要です。
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装軌式車両への整備性能力。自衛隊にBvS.10が必要だ、という視点に戻りますと、78式雪上車や10式雪上車を700両保有する自衛隊は全地形車両のような装軌式車両の整備能力がもともと高いのです。前述のM-1A2の視点でいえば、餅は餅屋、戦車部隊、特に機甲教導連隊に配備していれば特に問題はなかったでしょう。いわば適材適所の視点なのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
レッドサラマンダー、否定的な話題が多いものの必ずしも的を射ているものばかりではなく、当事者としては憂鬱でしょう。全五回の予定でしたが追記的に議論します。
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M-1A2戦車が一両だけ陸上自衛隊の本州のとある普通科連隊に全国を代表する虎の子装備として配備されてしまった、レッドサラマンダー位置づけはこれに近いでしょう。M-1A2では普通科連隊に配備されている重レッカー車では回収できませんし、強力ですが少しはしるだけで重整備が必要ですが、本部管理中隊では整備しきれない、というようなもの。
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レッドサラマンダー。総務省が保有する全地形対応車両の愛称です。このレッドサラマンダー、一般に理解されている点では大型であり身動きが難しいため、あまり活躍できていない、という印象的なものがあるようです。一概に間違いとも言い切れないのですが、総務省から岡崎市消防局に貸与されているという特殊性を加味せねば実態が分らず装備として憂鬱でしょう。
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警視庁特別車両機動隊のようにレッドサラマンダーも総務省消防庁特別車両支援隊として、せめて10両程度を集中配備し、そのうえで車両整備小隊を配置していたならば、もう少し評価は変わったようにも思います。特にレッドサラマンダーは輸送車での移動が基本、しかし50km/hで路上を走れるのですから自走範囲内で活動できる配備密度が必要でした。
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岡崎市消防局は職員数約370名、消防署3カ所と分署及び出張所を7カ所配置していまして、消防車15台とはしご車など特殊消防車8台、救急車14台を保有しています、そして緊急消防援助隊に参加しており、ここに総務省からレッドサラマンダーを貸与されている、要するに消防車のような岡崎市だけの装備品ではなく総務省が運用する車両なのですね。
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ブロンコ全地形車両、この日本仕様がレッドサラマンダーなのですが、日本国内での運用にあわせて国内法に依拠した改修が行われています、そして、総務省消防庁の説明では60cmまでの段差と1.5mまでの水深の被災地域を踏破する、としています。全地形車両ですが日本の国内法では水陸両用車として運用することに問題があることを意味しています。
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しかし、緊急消防援助隊派遣を総務省が決定した際には現地へ進出するため、2017年九州北部豪雨災害、2018年西日本豪雨災害、現地へ緊急消防援助隊の一員として派遣されています。問題は現地での運用で、レッドサラマンダーと支援車Ⅰ型及び輸送車が配備されているだけで、この支援車は整備車両ではなく生活支援車、キャンピングカーだけです。
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レッドサラマンダーの運用支援、自衛隊でいう野整備用の装備が総務省から派遣されておらず、そして一両だけですので浸水地域での走行不能からの離脱というものを考えていないのですね、もちろん消防には装軌車回収車もありません、一両しか無く整備車両も配備されず回収車さえない、レッドサラマンダーの運用を大きく阻害しているのではないか。
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ハイドラトレック。しかし全地形車両全般が消防から三行半を突きつけられているわけではなく、中型水陸両用車としてアメリカのハイドラトレック社製全地形車両が全国に薄く広く配備が開始されています、これは2019年の千葉県北部豪雨に際して、この時点ではまだ全国に2両のみ、千葉県山武市の孤立幼稚園救助に派遣され、もう実績があるのですね。
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千葉県北部豪雨では64名の孤立者があり、ちょうどこの全国に2両のみが配備される車両の一両が山武郡市広域消防組合に配備されていたことで派遣要請があり、あまり大人数を輸送できるものではないのですが8往復で全員を救助しています。ハイドラトレックは装軌式車両ですがスクキュープロペラを搭載しており、文字通りこれは水陸両用車でもある。
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徳島県と千葉県に配備されているのみであったハイドラトレック中型水陸両用車ですが、東三河新聞2020年3月29日に豊橋中消防署への配備、河北新報2020年5月30日付消防では6月に宮城県大崎郡鳴子消防署へハイドラトレック配備が報じられており、更に小型水陸両用車としてスパキャットの導入も、ゆっくりとしてですが開始されています現状が。
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自衛隊では少数配備されている全地形車両は活躍しています、輪島分屯基地や佐渡分屯基地、積雪地域のレーダーサイトに配備されています。この車両は冬季には必須の装備といわれていまして、監視小隊が標高の高いレーダーアンテナ付近まで交代する際、食料や生活必需品とともに危険な積雪下の山道を登攀するにはBV-206は必須といわれ、重要です。
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装軌式車両への整備性能力。自衛隊にBvS.10が必要だ、という視点に戻りますと、78式雪上車や10式雪上車を700両保有する自衛隊は全地形車両のような装軌式車両の整備能力がもともと高いのです。前述のM-1A2の視点でいえば、餅は餅屋、戦車部隊、特に機甲教導連隊に配備していれば特に問題はなかったでしょう。いわば適材適所の視点なのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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