■リニアシステムへの優位性
新幹線という高速大量輸送システムを考える場合は最終的に潜在的鉄道上の大きなアメリカ市場へのアクセスを目指さねばなりません。
新幹線の衝突回避原則、これを国際安全基準とできるかが輸出を大きく左右させることとなるでしょう。Crash AvoidanceとしてJR西日本とJR東海とJR九州、川崎重工と日立製作所は新幹線の衝突事故に耐える車両を開発するのではなく衝突回避のシステムを原則とする基準の国際化を目指す一般社団法人国際高速鉄道協会を2014年に設立しました。
新幹線輸出を目指すのはアメリカで進む高速鉄道計画です。当時のオバマ政権が温室効果ガス排出削減への切り札として雇用増勢にも繋がる高速鉄道計画を発表しており、本命はフロリダ高速鉄道計画やカリフォルニア高速鉄道計画、テキサス高速鉄道計画です。この中でもカリフォルニア高速鉄道計画は全米有数大都市間を結ぶ重要な高速鉄道計画でした。
カリフォルニア高速鉄道計画はロサンゼルスとサンフランシスコというカリフォルニア州の二大都市を隔てる840kmを3時間以内で結ぶ計画という高速鉄道計画で、2029年までの完成を目指しています。840kmといえば東京と広島間が894km、新幹線のぞみ号が四時間前後で結んでいます。東京と三原駅間の東海道山陽新幹線が822km、この距離感です。
2030年時点で年間利用者の当局見積りは6500万名から9600万名を想定しており、現在の鉄道による両都市間の移動には12時間を要するために鉄道よりも旅客機での移動が一般的ですが、最高速度350km/hの高速車両を線形の良い直線線路を最高速度で走行させることで最短二時間半での移動を目指す野心的計画でした。もっとも表定速度の視点から難しい。
カリフォルニア州高速鉄道局 CHSRAはサンフランシスコ、サンフランシスコ国際空港、レッドウッドシティ、サンノゼディリドン、ギルロイ、フレズノ、ベーカーズフィールド、パームデール、サンフェルナンド、ダウンタウンバーバンク、ロサンゼルス、結び、最終的にサンフランシスコから州都サクラメント、ロスからサンディエゴまで延伸するという。
カリフォルニア高速鉄道計画、2015年に着工しましたが先日JR東海がこの計画から離脱する方針を示しました。それは国際高速鉄道協会が目指した衝突回避原則をアメリカ側は理解しつつ、しかし万一の事故もあり得るので衝突事故時の乗客安全を図る車両構造の採用を要求したためです。分散動力方式を採用する日本は機関車を緩衝材と出来ない構造だ。
300km/hという高速運行を行う高速列車は、仮に列車同士が衝突事故を引き起こしたならば、相対速度は600km/hというジェット旅客機並みの衝撃が乗客に加わります。その半分以下の速度で飛行するヘリコプタでさえ、安全性に墜落時の乗員防護を保証するものはなく、一部の戦闘ヘリコプターが戦闘時の墜落に機体構造部品を緩衝材としている程度です。
国際高速鉄道協会の試みは日本の新幹線が実現している衝突回避原則を国際標準とし、高速鉄道は車両と線路だけで完成するものではなく、安全性を確保する制御システムこそが要諦であるとの認識を一般化させ、線路と制御システムだけでは成り立たず、車両と制御システムだけでも成り立たないように三要素を体系化したものを高速鉄道とする試みです。
新幹線にて京都から東京へ向かう際、やはり気になるのはもう少し運賃が安ければ頻繁に東京へ行けるのに、というものです。しかし、新幹線の緻密な保線計画と運行管理体制を考えれば、このあたりが妥当な費用なのだろう、と考え直すものです。しかし、これは日本の安全性が常識となっている故で、この常識を普遍化しなければ輸出は難しいでしょう。
新幹線輸出に際して重要な課題は新幹線が大量輸送システムであり、単なる高速鉄道ではないということです、つまり高頻度運転を行える東京新大阪間に匹敵する巨大な旅客輸送需要がない区間には向きません。ただ、単純な高速輸送システムを構築するのであれば、単線新幹線として工費を抑える選択肢がありますし、大量輸送ならば新幹線が最適です。
しかし、単純な車両システムとしてみた場合、新幹線は加速性能が優れており、開業当初は0系新幹線の加速力が有楽町付近で山手線103系電車の加速力に劣ったことがありましたが、N-700系の加速力で遂に山手線E-231系を抜き、短距離高速連絡鉄道としても、例えばリニア新幹線などと比較した場合でも相応の競争力があることを忘れてはなりません。
上海トランスラピッド、上海龍陽路駅と浦東国際機場間の30.5kmを最高速度431km/hにより、8分で結ぶ高速鉄道です。世界最速を誇っていますが、一時間当たりの表定速度は228.75km、早い、と思うのですが東海道新幹線は京都新大阪間の39kmを13分で結んでおり、新幹線の表定速度は京都新大阪間に限った場合で実に180kmにも達しているのです。
ドイツが開発したトランスラピッドはリニアシステムとしては極め得て高い加速性能を有しており、300km/hまでの加速に五分しか要せず、機関車方式を採用するドイツ高速鉄道ICEが同じ速度に達するまで30分を要する点と比較し画期的、としていましたが、この性能からわかる通り、上海線では最高速度に達した時点で終点まで残り3分しかありません。
N700系の起動加速度は2.6km/h/sというもので、この数値は115秒で300km/hに達することを意味し、同じ速度まで300秒、つまり5分を要するトランスラピッドリニアシステムよりも三分の一近くまで加速時間を短縮しているのです。減速度は常用2.70km/h/s、非常用3.64km/h/s、つまり最高速度から緊急停止完了まで実にわずか82秒しか要しません。
新幹線は都市中心部から40km程度の郊外にある空港施設まで14分程度で結ぶことが可能、これは単線運行で一編成に乗降時間を含めても20分間隔での運行が可能です。終点駅に2ホームを配置したならば、単線運行で一区間一列車運行を行うとして15分間隔毎時4列車を運行することが可能です。空港と中心部を結ぶ路線としては理想的といえましょう。
トランスラピッドオーストラリア計画、中止となりましたがドイツ側が提示した建設見積もり費用でビクトリア州複線建設費が1kmあたり3400万豪ドルといい、単純比較はできませんが北陸新幹線工費概算は平野部1km25億円、山間部1km40億円とされています。豪ドルは2008年に最高値104円最安値56円で乱高下していますが建設費はこの程度です。
車両1両当たりの費用は2000万豪ドル、対して2007年に運行開始となったN-700系新幹線は16両の編成価格で46億円とされ、トランスラピット三両編成よりも安価に取得することが可能です。トランスラピットの高速輸送力は、40km路線で新幹線よりも五分速くなるのですが、それを補って余りある車両単価の低さがあります。近郊輸送の強みは大きい。
新幹線は長距離輸送用の大量輸送機関である事は繰り返し示してきましたが、この為の高性能車両は高い加速性能と高速運転能力を有しており、例えば高速輸送の代名詞であるものの都市中心部に建設が難しい国際空港と、旅客機到着後都心移動時間短縮を主眼に、都市中心部を結ぶ近郊高速鉄道として輸出実績を積むという選択肢も、あるかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新幹線という高速大量輸送システムを考える場合は最終的に潜在的鉄道上の大きなアメリカ市場へのアクセスを目指さねばなりません。
新幹線の衝突回避原則、これを国際安全基準とできるかが輸出を大きく左右させることとなるでしょう。Crash AvoidanceとしてJR西日本とJR東海とJR九州、川崎重工と日立製作所は新幹線の衝突事故に耐える車両を開発するのではなく衝突回避のシステムを原則とする基準の国際化を目指す一般社団法人国際高速鉄道協会を2014年に設立しました。
新幹線輸出を目指すのはアメリカで進む高速鉄道計画です。当時のオバマ政権が温室効果ガス排出削減への切り札として雇用増勢にも繋がる高速鉄道計画を発表しており、本命はフロリダ高速鉄道計画やカリフォルニア高速鉄道計画、テキサス高速鉄道計画です。この中でもカリフォルニア高速鉄道計画は全米有数大都市間を結ぶ重要な高速鉄道計画でした。
カリフォルニア高速鉄道計画はロサンゼルスとサンフランシスコというカリフォルニア州の二大都市を隔てる840kmを3時間以内で結ぶ計画という高速鉄道計画で、2029年までの完成を目指しています。840kmといえば東京と広島間が894km、新幹線のぞみ号が四時間前後で結んでいます。東京と三原駅間の東海道山陽新幹線が822km、この距離感です。
2030年時点で年間利用者の当局見積りは6500万名から9600万名を想定しており、現在の鉄道による両都市間の移動には12時間を要するために鉄道よりも旅客機での移動が一般的ですが、最高速度350km/hの高速車両を線形の良い直線線路を最高速度で走行させることで最短二時間半での移動を目指す野心的計画でした。もっとも表定速度の視点から難しい。
カリフォルニア州高速鉄道局 CHSRAはサンフランシスコ、サンフランシスコ国際空港、レッドウッドシティ、サンノゼディリドン、ギルロイ、フレズノ、ベーカーズフィールド、パームデール、サンフェルナンド、ダウンタウンバーバンク、ロサンゼルス、結び、最終的にサンフランシスコから州都サクラメント、ロスからサンディエゴまで延伸するという。
カリフォルニア高速鉄道計画、2015年に着工しましたが先日JR東海がこの計画から離脱する方針を示しました。それは国際高速鉄道協会が目指した衝突回避原則をアメリカ側は理解しつつ、しかし万一の事故もあり得るので衝突事故時の乗客安全を図る車両構造の採用を要求したためです。分散動力方式を採用する日本は機関車を緩衝材と出来ない構造だ。
300km/hという高速運行を行う高速列車は、仮に列車同士が衝突事故を引き起こしたならば、相対速度は600km/hというジェット旅客機並みの衝撃が乗客に加わります。その半分以下の速度で飛行するヘリコプタでさえ、安全性に墜落時の乗員防護を保証するものはなく、一部の戦闘ヘリコプターが戦闘時の墜落に機体構造部品を緩衝材としている程度です。
国際高速鉄道協会の試みは日本の新幹線が実現している衝突回避原則を国際標準とし、高速鉄道は車両と線路だけで完成するものではなく、安全性を確保する制御システムこそが要諦であるとの認識を一般化させ、線路と制御システムだけでは成り立たず、車両と制御システムだけでも成り立たないように三要素を体系化したものを高速鉄道とする試みです。
新幹線にて京都から東京へ向かう際、やはり気になるのはもう少し運賃が安ければ頻繁に東京へ行けるのに、というものです。しかし、新幹線の緻密な保線計画と運行管理体制を考えれば、このあたりが妥当な費用なのだろう、と考え直すものです。しかし、これは日本の安全性が常識となっている故で、この常識を普遍化しなければ輸出は難しいでしょう。
新幹線輸出に際して重要な課題は新幹線が大量輸送システムであり、単なる高速鉄道ではないということです、つまり高頻度運転を行える東京新大阪間に匹敵する巨大な旅客輸送需要がない区間には向きません。ただ、単純な高速輸送システムを構築するのであれば、単線新幹線として工費を抑える選択肢がありますし、大量輸送ならば新幹線が最適です。
しかし、単純な車両システムとしてみた場合、新幹線は加速性能が優れており、開業当初は0系新幹線の加速力が有楽町付近で山手線103系電車の加速力に劣ったことがありましたが、N-700系の加速力で遂に山手線E-231系を抜き、短距離高速連絡鉄道としても、例えばリニア新幹線などと比較した場合でも相応の競争力があることを忘れてはなりません。
上海トランスラピッド、上海龍陽路駅と浦東国際機場間の30.5kmを最高速度431km/hにより、8分で結ぶ高速鉄道です。世界最速を誇っていますが、一時間当たりの表定速度は228.75km、早い、と思うのですが東海道新幹線は京都新大阪間の39kmを13分で結んでおり、新幹線の表定速度は京都新大阪間に限った場合で実に180kmにも達しているのです。
ドイツが開発したトランスラピッドはリニアシステムとしては極め得て高い加速性能を有しており、300km/hまでの加速に五分しか要せず、機関車方式を採用するドイツ高速鉄道ICEが同じ速度に達するまで30分を要する点と比較し画期的、としていましたが、この性能からわかる通り、上海線では最高速度に達した時点で終点まで残り3分しかありません。
N700系の起動加速度は2.6km/h/sというもので、この数値は115秒で300km/hに達することを意味し、同じ速度まで300秒、つまり5分を要するトランスラピッドリニアシステムよりも三分の一近くまで加速時間を短縮しているのです。減速度は常用2.70km/h/s、非常用3.64km/h/s、つまり最高速度から緊急停止完了まで実にわずか82秒しか要しません。
新幹線は都市中心部から40km程度の郊外にある空港施設まで14分程度で結ぶことが可能、これは単線運行で一編成に乗降時間を含めても20分間隔での運行が可能です。終点駅に2ホームを配置したならば、単線運行で一区間一列車運行を行うとして15分間隔毎時4列車を運行することが可能です。空港と中心部を結ぶ路線としては理想的といえましょう。
トランスラピッドオーストラリア計画、中止となりましたがドイツ側が提示した建設見積もり費用でビクトリア州複線建設費が1kmあたり3400万豪ドルといい、単純比較はできませんが北陸新幹線工費概算は平野部1km25億円、山間部1km40億円とされています。豪ドルは2008年に最高値104円最安値56円で乱高下していますが建設費はこの程度です。
車両1両当たりの費用は2000万豪ドル、対して2007年に運行開始となったN-700系新幹線は16両の編成価格で46億円とされ、トランスラピット三両編成よりも安価に取得することが可能です。トランスラピットの高速輸送力は、40km路線で新幹線よりも五分速くなるのですが、それを補って余りある車両単価の低さがあります。近郊輸送の強みは大きい。
新幹線は長距離輸送用の大量輸送機関である事は繰り返し示してきましたが、この為の高性能車両は高い加速性能と高速運転能力を有しており、例えば高速輸送の代名詞であるものの都市中心部に建設が難しい国際空港と、旅客機到着後都心移動時間短縮を主眼に、都市中心部を結ぶ近郊高速鉄道として輸出実績を積むという選択肢も、あるかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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