北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ドイツ空軍ユーロファイター戦闘機20機増強,ブライムストーン3空対地ミサイルを増強

2024-08-19 20:24:41 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 ドイツ軍はユーロコプタータイガーの任務を貧弱なH-145ではなくユーロファイターに置換え昔のヤーボのような台風を吹かせるのでしょうか。

 ドイツ空軍はユーロファイター戦闘機20機を増強します。ドイツのショルツ首相はILAベルリン国際航空宇宙展開会式において、ドイツのNATOへの協力体制強化と、ロシアウクライナ戦争の長期化を受けての国際安全保障への関与強化の一環として、その具体策に現在も生産が継続されているユーロファイターの増強で応えたかたち。

 ユーロファイター戦闘機は初期製造型のトランシェ1から比較的新しいトランシェ3Aへの改修費用の割高さや、トランシェ3AからAESAレーダー方式のトランシェ3Bへの改修費用がかさみ、機体構造部分から当初の運用期間以上に延命する事が難しいなど2000年代初頭ほど優位性を強調できない状況が続いていたところでした。

 ユーロファイター戦闘機について、ドイツ政府は既に38機の増強計画を進めており、此処に追加の20機を加えることになります。現在ドイツ政府は老朽化したトーネード攻撃機の後継機としてF-35A戦闘機の導入を決定していて、一方今回のユーロファイター増強決定は、ユーロファイターの生産ライン維持にも重要な要素となるでしょう。■

 ドイツ空軍はブライムストーン3空対地ミサイルを増強します。これはMBDA社とドイツ政府の間で結ばれた新しい契約にもとづくもので、今回の増強発注は過去に無い規模との事で、ドイツ空軍の空対地攻撃能力が大幅に強化される事を意味します。ドイツ空軍ではユーロファイター戦闘機に搭載しての運用を想定しているもよう。

 ブライムストーンはユーロファイター戦闘機に加え、MQ-9リーパー無人攻撃機やユーロドローン等の無人航空機にも運用が可能で、また陸上発射型やヘリコプターからの投射も可能となっています。ドイツ政府はユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプターの早期退役を発表しており、今後はユーロファイターがその役割の一端を担うかたち。

 ユーロコプタータイガーはドイツ政府のメルケル政権時代の国防費圧縮政策により段階近代化改修を停止していた時代に整備費用も同時に抑えたことで稼働率が極端に低下し、ショルツ政権に移行した後ロシアウクライナ戦争勃発を受け、その運用強化を模索したところ難しく、H-145観測ヘリコプターの武装型に置き換える決定を下しました。■

 ドイツ連邦軍のブライムストーンミサイル増強を受けMBDA社は新工場を建設します。これは現在MBDA社が運営しているシュロベンハウゼン工場に新しくブライムストーン製造棟とサービスセンターを増築するもので、MBDA社エリックベランジェ最高経営責任者は、この転換によりドイツのミサイル備蓄能力は大幅に強化されると話します。

 ブライムストーンミサイルは元々イギリスがユーロファイター戦闘機用に開発したミサイルで、原型となるブライムストーン1はヘリコプターから発射した場合の射程が12kmで、戦闘機から発射した場合でも射程は20kmと決して長いものではありませんでしたが、ミリ波レーダー誘導により同時多目標対処能力の高さが大きな強みとなっていました。

 ドイツ連邦軍が今回調達するものはブライムストーン3で、ブライムストーン2の時点で射程は60kmと大幅に射程が延伸していましたが、改良により射程やシーカー部分の稼働時間が30%増大したといい、射程80㎞前後となった事を示します。またブライムストーン2から陣地目標などへレーザー誘導方式の直接目標照準も可能となっています。■

 ドイツのユーロファイターとブライムストーン3ミサイルについて、PAH-2ユーロコプタータイガーの後継と成り得るのでしょうか。ドイツ連邦軍自身はPAH-2の後継機としてH-145の武装型を想定していますが、防弾構造ではない軽ヘリコプターの武装型であり、野戦防空火器に防衛された機甲部隊への攻撃は非常に危険を伴う決定でした。

 ユーロファイター戦闘機と原型のブライムストーンミサイルはもともと対戦車攻撃を念頭とした装備であり、それはユーロファイター戦闘機用に6発用兵装架が開発されるとともに、ユーロファイターのキャプターレーダーが捕捉した地上目標をそのまま照準可能、兵装架3基を搭載可能であるため、18発を連続して発射することも可能です。

 H-145ヘリコプターの武装型では対戦車攻撃はいかにも困難で、実際、ロシアウクライナ戦争においてウクライナ政府は汎用ヘリコプターの対戦車型を各国に供与要請していません。しかし、射程を80kmまで延伸したブライムストーンミサイル3とトランシェ3B以降のユーロファイターならば、充分な対戦車攻撃が可能なのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-イギリス国防省ウクライナ軍クルスク州逆攻撃概況報告と専守防衛下の逆攻撃選択肢

2024-08-19 07:00:55 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 逆攻撃という状況は日本の専守防衛政策を考えた場合に難しいが現実的な要素を突き付けているのです。

 イギリス国防省はウクライナ戦況報告においてクルスク逆攻撃の景況を発表しました。これは8月16日付ウクライナ戦況報告によるもので、イギリス国防省がクルスク戦線に関する情報をまとめたのは8月6日の逆攻撃開始以来、10日後にして初の情報となりました。この点については極度の情報不足であるのか、別の理由なのかは不明なのです。

 8月6日にウクライナ軍がロシアのクルスク地方に侵攻し、この攻撃の幅は国境地帯40kmにわたるもので、ここから全般にわたって10kmから最大で25㎞まで侵攻に成功したとしています。この地域の防衛状況について、ロシア側も無防備であった訳では無く、国境警備隊を配置していたものの、複数大隊規模の攻撃は想定していなかったもよう。

 クルスクでの逆攻撃に対して、イギリス国防省はロシア軍の対応を、混乱と無秩序、と表現しています。ただ、当初の混乱から持ち直しているという評価も行っており、ウクライナ軍前進を阻止するための陣地構築などを行っている、そしてほかのウクライナ国境地域に防衛線を張っているロシア軍部隊も抽出していると対応状況をまとめています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 これは平和を手段として用いて結果は可能な範囲での最善を尽くした事にする自己満足的な平和主義か、冷徹な国民の安全を第一に考えるかということ。

 逆攻撃という選択肢は専守防衛と両立し得るのか。ウクライナ軍のクルスク逆攻撃は日本の南西防衛など、専守防衛においては完全な受け手とならざるを得ない日本の防衛政策に非常に大きな一石を投じることとなるのかもしれません。ウクライナ軍は、2022年のロシア軍侵攻前にも2014年にクリミア半島を奪われドンバスへ侵攻を受け続けている。

 2022年の開戦以後にもハリコフ州再侵攻を受けるなど受け手を強要され続けており、こうした中でウクライナ軍はモスクワやサンクトペテルブルクへ無人機攻撃を断続的に行うなど、反撃能力を行使し続けていますが、ロシア軍は無人機攻撃をかなりの数受けるものの、ロシア軍のウクライナ本土攻撃は止むことはなく、反撃能力だけでは限界があった。

 自衛隊の反撃能力整備は、指揮中枢への攻撃を選択肢として曖昧に扱うなど、ウクライナがロシアに対し行っているような行動よりも制約が大きい。ただ、例えば輸送艦1隻分の機械化大隊、仮設敵部隊の第1機械化大隊のような部隊と戦闘ヘリコプター部隊を複数、揚陸する能力を確保するならば、本土進攻を受けた際に有用な要素となり得ます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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