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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【20】この十一年で激変した日本と世界の安保情勢(2012-10-08)

2023-12-17 20:00:28 | 海上自衛隊 催事
■現在のイエメン沖緊張
 2012年の観艦式当時にはイエメン沖で護衛艦に向けて弾道ミサイルが発射されタンカーがミサイル攻撃を受けるという状況は中々考えられなかったものですが、今現在その状況が持続中です。

 汎用護衛艦は最終的にDDGへ収斂してゆくのではないか、ミサイル防衛専用艦を機転に次のDDG,こんごう型ミサイル護衛艦後継艦は満載排水量で15000tを超えるという、かなり大型の艦艇となるようです。これはSPY-7レーダー電源の発電量という関係もある。

 こんごう型護衛艦は建造当時満載排水量9500tであり、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦と比較したばあいでも、はるな満載排水量が6800tですので二間割り大きな護衛艦となりましたが、あさひ型護衛艦の満載排水量が7000tに達していて、時代を感じさせます。

 15000t、満載排水量でありいままで自衛隊の艦艇の大きさで慣れした心が大きさや、ひゅうが型護衛艦と比較しましたならば、それほど意外な規模ではないことは確かなのかもしれませんが、いよいよDDGのDD,つまり艦隊駆逐艦という表現を超えてゆく印象だ。

 むらさめ型後継艦、DD,この区分がDDGへ収斂してゆくのではないか、という視点ですけれども、これには任務の多様化とともに脅威度合いの増大が挙げられます。先日、イエメン沖において任務に当たる海賊対処部隊が弾道ミサイルにねらわれたことは記憶に新しい。

 弾道ミサイルは艦船にねらって撃っても、当たるわけがない、と反論があるのでしょうが、対艦弾道弾という装備体系、特にクラスター弾頭をそなえて一発あたりの制圧範囲が広いミサイルに対しては、この論調は通用しないよう危惧するのですね。そして。

 対艦弾道弾の問題は目標評定能力に左右され、目標の位置がわかるのであればそもそも弾道弾が必要はないという反論が成り立ちましたが、これは従来型の大規模戦争を念頭とした概念であり、海賊対処任務の場合は異なり、相手はAIS船舶位置情報を使う。

 AIS船舶位置情報は海賊やテロなどから船舶を守るという用途の物なのですが、なにしろテロ組織が弾道ミサイルを使い1000km単位で攻撃を行うことは想定していませんでした、せいぜいハイジャック機で体当たり攻撃を行うという想定のものでしたから。

 ミサイル攻撃に護衛艦むらさめ型では対応できず、という平時の任務にも支障がおこるということ。もっとも、世界中探して弾道ミサイルに対応できる水上戦闘艦のほうが、なにしろデアリング級やアキテーヌ級といった防空駆逐艦でも難しいのですけれど。

 中国の水上戦闘艦が基本的に長距離艦対空ミサイルを搭載した広域防空艦となった、これも次の護衛艦を考える上で無視できません、ESSMミサイルの射程が50kmあり、僚艦防空能力という概念が定着しつつあるものの、それでさえ射程がみじかい。

 スタンダードSM-2水準のミサイル搭載が、最低限必要となるのではないか。ただ、こうは表現するもののスタンダードミサイルと運用するにはターターシステムなどの搭載が必要となります、しかしながら、国産艦対空ミサイルの長射程化が進んでいる。

 国産艦対空ミサイル長射程型、A-SAMとして過去開発されていた物を延伸させているようで、いちおう伝え聞くところではESSMよりも射程を伸ばしているようですが、重ねてある程度の弾道弾対処能力を付与した発展型をここから開発する選択肢も。

 DDではなくDDGへ収斂する、対艦弾道弾という脅威も、既に地対艦のみならず艦載型開発が進められているため、その脅威度は現実の段階まで迫っています、むらさめ型護衛艦の後継艦は必然的にかなり大きくならざるをえないのかもしれませんね。

 しかし岸田政権、この話題を執筆しているのは十二月中旬なのですが、方向性が鈍っていまして、現在のイエメン沖の状況をみますと、虎の子のイージス艦を派遣しなければ、イエメンのフーシ派からの商船やタンカーへの弾道ミサイル攻撃を阻止できない状況という。

 海賊対処法、現行法ではイラン沖日本タンカー襲撃事件を受けて中東情勢の情報収集任務が新たに加えられていますので、従来のソマリア沖よりもやや北方において警戒任務に当っていたところ、あけぼのミサイル事案という概況になりました。状況は深刻です。

 イージス艦を派遣すれば良いのか、と問われますと、先ずイージス艦は海上自衛隊には8隻のみであり、これは本土ミサイル防衛と周辺情勢緊迫化を受けてそう簡単に本土から派遣できるものではありません、ローテーションを考えれば常時1隻遊弋は大変なのだ。

 安倍政権時代、この自衛隊観艦式の様子は正に安倍政権時代でして、考えるとヘリコプター搭載護衛艦くらま、というのは長期政権であった安倍政権時代にほぼ観艦式の観閲艦を務めていた、佐世保の護衛艦ですのでこれはちょっと意外な事なのですよね。

 くらま話題はさて置き、ここでも繰り返すのですが2012年の観艦式での背景となった国際情勢と今の2023年の国際情勢は余りにも差があり、なにしろ今年はイスラエルとスーダンで邦人救出への邦人輸送任務を一年間で二度も実施しました、これは過去に例がない。

 安保関連法として、安倍政権時代に整備された自衛隊の活動範囲に関する新しい法整備では、一例として“ホルムズ海峡が機雷封鎖”され“タンカーが航行できない”事態を一例として想定していました、1980年のタンカー戦争のような事態を想定していたわけだ。

 ホルムズ海峡機雷封鎖を例に出した事でイラン政府から間接的な講義が在った事は報じられましたが、タンカー戦争、イランイラク戦争では実際にイラン軍がタンカーへの無差別攻撃を行い、当時の橋本龍太郎運輸大臣が自ら先頭に巡視船派遣を主張したほどでしたが。

 バベルマンデブ海峡のタンカーにフーシ派ミサイル命中、この数日間の情勢変化を受けても、これこそ安保法適用の事態が近づいているのですが、政府は情報収集強化さえ命じていません、それこそ哨戒機の増強やミサイル警戒へ早期警戒機派遣も検討が必要な段階だ。

 政治とカネ、いま岸田政権はこの問題で官房長官を事実上更迭するという、これは末期状態だぞ、こう解釈しても仕方がない状況となっています。しかし、その為にイエメン沖の現状をほぼ現場任せで政治主導を発揮しないのは国全体を蔑にしている状況ではないか。

 内閣総理大臣は単に観艦式で観閲艦に陣取る仕事ではない、自民党よりも日本国家を優先しなければなりません。それが、なんというか岸田総理は、安倍政権時代の岸田外務大臣気質が抜けていないように思えるのですよね。だから自分を外交重視と勘違いもしている。

 COP28や中東歴訪、その最中に現在のパーティー券問題が表面化し、初動で対応しなければならないところを外遊、これは恰も外務大臣時代にこうした危機が生じても安倍総理が十全対応していた故に外務大臣に徹している事が出来た、そんな名残で行動していないか。

 ボクは原発に詳しいんだ、とかつて危機管理の第一線をかき回した総理がいました、いや政治への情熱は凄かった、と知る方は仰るのですけれどもどこか現状の岸田総理はその雰囲気を継いでしまっているようみえる。その最中でも中東では事態が進行中なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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