■海軍記念日
明日は海軍記念日です。自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、という本来は独立した防衛備忘録などで哨戒する話題を観艦式の写真解説に代えて掲載する第二回です。
日本の海上防衛戦略について。いま振り返ると海上自衛隊創設60周年という2012年は確かに前年に東日本大震災とこれに連動した福島第一原発事故は発生していましたが、それでも総じて考えるならば平和であったなあ、と実感するのです。
台湾海峡の緊張と南シナ海の緊張、そしてなにより2022年より継続しているロシアウクライナ戦争のような、軍事力による現状変更はその端緒となるクリミア併合さえ2014年の出来事でしたので、景気不景気の波はあっても総じて平和は続くのだろうと。
ロシアウクライナ戦争を端緒とした国際情勢の緊迫は、逆に欧州をみていいますと戦争準備といいますか、日本以上にもう何も起きないだろうという楽観論が、なにしろ2014年のクリミア併合を経てさえも、もう漠然と共有知として受け止められていた。
欧州の突発的な緊張の認識にくらべますと、一応2011年の尖閣諸島国有化や、2007年の北朝鮮核実験、いや繰り返すミサイル実験か、緊張というものはある程度となりにありましたのが日本ですから、全く備えはない、とはならなかったことは僥倖ですが。
観艦式ひとつとって、これだけの艦艇を動かせる状況にあるのですから相応に脅威が増大しても対応できているという背景なのですが、それにしても、ここまで米中の緊張と台湾海峡問題の切迫度というものはこの日護衛艦ゆうだち艦上では、現実味がない。
自衛隊観艦式はこのつぎの2015年観艦式を最後に巨大台風や記録的悪天候と新型コロナウィルス感染症などをうけ2014年、じゃあない2024年までいまなお実施できていません。ただ、悪天候では仕方ない、という言葉だけでは説明できないものもありまして。
予備日を十分とれない、一発本番というわけではないのですけれども、この観艦式は前の一週間の土曜日日曜日の予行と本番前一週間の予行と数日間行われていましたが、2018年観艦式は土日で本番と前日予行の二回のみしか設定されていませんでした。
2021年観艦式は、CO0VID-19新型コロナウィルス感染症、の影響というよりも2021年に東京五輪をおこなう関係上、中央観閲式を行えない関係から年度単位で陸海空自衛隊行事を動かす必要が生じていて2022年の開催となりましたが、これも悪天候が響く。
予備日を十分かくほしないというのは別に準備の手配をわすれていたウッカリさんというわけでもなく単に実任務の増大、警戒監視とミサイル防衛に海賊対処任務、艦艇を二週間近く延々と観艦式支援に当てられない、という状況の裏返しにほかなりません。
地方隊展示訓練も艦艇の実任務が多く、いや2016年熊本地震によりすべての展示訓練が中止されて以降、2022年に舞鶴展示訓練が一回行われたのみでほかはすべて中止となっています。2023年に佐世保が護衛艦いせ一隻のみの展示訓練を計画していましたが。
こうしたなかで日本の防衛戦略を根本的に見直しが迫られているのではないかという視座です。とまあこう書きますと、今まさに見直しているさなかではないか、と反論といいますか指摘といいますか注釈といいますが、一言あるのかもしれません、しかし。
反撃能力整備というようないまの防衛戦略の転換にとどまらない、何か根本的な戦略の見直しが必要になっているのではないかということです。憲法改正とか核武装とか原潜保有とか徴兵制とか残業代導入とかそういうことも些細なようにしかおもえない。
日米同盟、しかしアメリカの増援まで日本が耐え抜くという前提での防衛戦略というものが今後中国の軍事力さらなる強化をまえに成り立つのかということです。いいかえれば、アメリカの増援というものを念頭に日本の防衛戦略が練られてきた土台そのもの。
安保ハンタイ、と口角泡とばして叫ぶものではありません、いやむしろ視点とはその真逆で日米の対等な防衛協力がなければ、アメリカだけの戦力では今後日本を守るというよりも国際公序を維持できないようになるのではないかという危惧という。
独自防衛という甘い考えでもなく、です。独自防衛というものは不可能でないにしても効率が悪く、具体的にはその必要なリソースの確保に日本経済が耐えられないことと、独自防衛は国際協調から一歩引くことも意味し、その説明の努力も必要だ。
防衛へのリソースというものは、基本平和が続きますと防衛への関心が薄れてしまうもので、そのために、それはテレビで何かやっていれば自衛隊モノをみるというような水準を超えるものではなかなかありません、何か動くことを期待できないのですね。
防衛戦略の視点に戻しますと、やはり課題となるのは隣国の接近拒否領域阻止の戦略です、これこそ専守防衛の在り方か、とおもわれる名前ですが、実体は日本列島を含めたマリアナ諸島までをミサイルと爆撃機や潜水艦により聖域化するという様式で。
絶対国防圏としてアメリカ軍をマリアナ諸島より遠くで防ぐという帝国陸海軍の太平洋戦争における戦略と似たものなのかもしれませんが、マリアナ沖海戦で瓦解した絶対国防圏とことなり、中国の戦略はミサイルや爆撃機と潜水艦でかなり現実性がある。
接近拒否領域阻止の概念と日米同盟の問題で難しいのは、これを中国が本気で整備している現状、まずこの具現化のための中国本土のミサイル網を日本本土から破壊しなければ第七艦隊の空母部隊は日本本土へ到達が難しい、という日米同盟の根幹の揺らぎ。
マルチドメインタスクフォースという、アメリカの対抗策では大陸に対して同盟国へ射程の長いミサイルを持ち込んで、これはフィリピンと日本本土、あとは韓国を含めるのだろうかという点に加えてアメリカ領グアムとサイパン、ここから撃ち合うもの。
中国本土との撃ち合いの場合は、なにしろ中国本土には核ミサイル部隊が展開していますから場合によっては戦術核が使われかねない点を、アメリカはどのように段階的アプローチを試みるのかは未知数ですが、核兵器国同士のミサイル戦は過去に例がない。
ロシアウクライナ戦争では度々プーチン大統領が核兵器に言及していますが、これもウクライナが核兵器を持っていないためにロシアとのミサイル戦をおこなっても核戦争に発展しないわけで、NATOが仮に地対地ミサイルを整備した場合はその限りなのか、と。
接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの衝突は、もう少し核戦争の懸念というものに想像力を膨らませてみるべきではないかという懸念をもつとともに、しかしするとシーパワーというものの土台さえ揺らぐような戦略の転換だと認識が必要でしょう。
海上防衛、日本の場合はシーレーン防衛と着上陸阻止に2010年代からミサイル防衛が任務に加わりましたが、この部分の変容をどのように受け止めかつ変革を行うのかという厳しい判断がそろそろ考えなければならないようにもおもうのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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明日は海軍記念日です。自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、という本来は独立した防衛備忘録などで哨戒する話題を観艦式の写真解説に代えて掲載する第二回です。
日本の海上防衛戦略について。いま振り返ると海上自衛隊創設60周年という2012年は確かに前年に東日本大震災とこれに連動した福島第一原発事故は発生していましたが、それでも総じて考えるならば平和であったなあ、と実感するのです。
台湾海峡の緊張と南シナ海の緊張、そしてなにより2022年より継続しているロシアウクライナ戦争のような、軍事力による現状変更はその端緒となるクリミア併合さえ2014年の出来事でしたので、景気不景気の波はあっても総じて平和は続くのだろうと。
ロシアウクライナ戦争を端緒とした国際情勢の緊迫は、逆に欧州をみていいますと戦争準備といいますか、日本以上にもう何も起きないだろうという楽観論が、なにしろ2014年のクリミア併合を経てさえも、もう漠然と共有知として受け止められていた。
欧州の突発的な緊張の認識にくらべますと、一応2011年の尖閣諸島国有化や、2007年の北朝鮮核実験、いや繰り返すミサイル実験か、緊張というものはある程度となりにありましたのが日本ですから、全く備えはない、とはならなかったことは僥倖ですが。
観艦式ひとつとって、これだけの艦艇を動かせる状況にあるのですから相応に脅威が増大しても対応できているという背景なのですが、それにしても、ここまで米中の緊張と台湾海峡問題の切迫度というものはこの日護衛艦ゆうだち艦上では、現実味がない。
自衛隊観艦式はこのつぎの2015年観艦式を最後に巨大台風や記録的悪天候と新型コロナウィルス感染症などをうけ2014年、じゃあない2024年までいまなお実施できていません。ただ、悪天候では仕方ない、という言葉だけでは説明できないものもありまして。
予備日を十分とれない、一発本番というわけではないのですけれども、この観艦式は前の一週間の土曜日日曜日の予行と本番前一週間の予行と数日間行われていましたが、2018年観艦式は土日で本番と前日予行の二回のみしか設定されていませんでした。
2021年観艦式は、CO0VID-19新型コロナウィルス感染症、の影響というよりも2021年に東京五輪をおこなう関係上、中央観閲式を行えない関係から年度単位で陸海空自衛隊行事を動かす必要が生じていて2022年の開催となりましたが、これも悪天候が響く。
予備日を十分かくほしないというのは別に準備の手配をわすれていたウッカリさんというわけでもなく単に実任務の増大、警戒監視とミサイル防衛に海賊対処任務、艦艇を二週間近く延々と観艦式支援に当てられない、という状況の裏返しにほかなりません。
地方隊展示訓練も艦艇の実任務が多く、いや2016年熊本地震によりすべての展示訓練が中止されて以降、2022年に舞鶴展示訓練が一回行われたのみでほかはすべて中止となっています。2023年に佐世保が護衛艦いせ一隻のみの展示訓練を計画していましたが。
こうしたなかで日本の防衛戦略を根本的に見直しが迫られているのではないかという視座です。とまあこう書きますと、今まさに見直しているさなかではないか、と反論といいますか指摘といいますか注釈といいますが、一言あるのかもしれません、しかし。
反撃能力整備というようないまの防衛戦略の転換にとどまらない、何か根本的な戦略の見直しが必要になっているのではないかということです。憲法改正とか核武装とか原潜保有とか徴兵制とか残業代導入とかそういうことも些細なようにしかおもえない。
日米同盟、しかしアメリカの増援まで日本が耐え抜くという前提での防衛戦略というものが今後中国の軍事力さらなる強化をまえに成り立つのかということです。いいかえれば、アメリカの増援というものを念頭に日本の防衛戦略が練られてきた土台そのもの。
安保ハンタイ、と口角泡とばして叫ぶものではありません、いやむしろ視点とはその真逆で日米の対等な防衛協力がなければ、アメリカだけの戦力では今後日本を守るというよりも国際公序を維持できないようになるのではないかという危惧という。
独自防衛という甘い考えでもなく、です。独自防衛というものは不可能でないにしても効率が悪く、具体的にはその必要なリソースの確保に日本経済が耐えられないことと、独自防衛は国際協調から一歩引くことも意味し、その説明の努力も必要だ。
防衛へのリソースというものは、基本平和が続きますと防衛への関心が薄れてしまうもので、そのために、それはテレビで何かやっていれば自衛隊モノをみるというような水準を超えるものではなかなかありません、何か動くことを期待できないのですね。
防衛戦略の視点に戻しますと、やはり課題となるのは隣国の接近拒否領域阻止の戦略です、これこそ専守防衛の在り方か、とおもわれる名前ですが、実体は日本列島を含めたマリアナ諸島までをミサイルと爆撃機や潜水艦により聖域化するという様式で。
絶対国防圏としてアメリカ軍をマリアナ諸島より遠くで防ぐという帝国陸海軍の太平洋戦争における戦略と似たものなのかもしれませんが、マリアナ沖海戦で瓦解した絶対国防圏とことなり、中国の戦略はミサイルや爆撃機と潜水艦でかなり現実性がある。
接近拒否領域阻止の概念と日米同盟の問題で難しいのは、これを中国が本気で整備している現状、まずこの具現化のための中国本土のミサイル網を日本本土から破壊しなければ第七艦隊の空母部隊は日本本土へ到達が難しい、という日米同盟の根幹の揺らぎ。
マルチドメインタスクフォースという、アメリカの対抗策では大陸に対して同盟国へ射程の長いミサイルを持ち込んで、これはフィリピンと日本本土、あとは韓国を含めるのだろうかという点に加えてアメリカ領グアムとサイパン、ここから撃ち合うもの。
中国本土との撃ち合いの場合は、なにしろ中国本土には核ミサイル部隊が展開していますから場合によっては戦術核が使われかねない点を、アメリカはどのように段階的アプローチを試みるのかは未知数ですが、核兵器国同士のミサイル戦は過去に例がない。
ロシアウクライナ戦争では度々プーチン大統領が核兵器に言及していますが、これもウクライナが核兵器を持っていないためにロシアとのミサイル戦をおこなっても核戦争に発展しないわけで、NATOが仮に地対地ミサイルを整備した場合はその限りなのか、と。
接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの衝突は、もう少し核戦争の懸念というものに想像力を膨らませてみるべきではないかという懸念をもつとともに、しかしするとシーパワーというものの土台さえ揺らぐような戦略の転換だと認識が必要でしょう。
海上防衛、日本の場合はシーレーン防衛と着上陸阻止に2010年代からミサイル防衛が任務に加わりましたが、この部分の変容をどのように受け止めかつ変革を行うのかという厳しい判断がそろそろ考えなければならないようにもおもうのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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