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【日曜特集】平成28年第1空挺団降下訓練始【02】真冬の落下傘降下開始(2016-01-10)

2019-08-25 20:08:21 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■習志野に舞い降りる空挺団
 幕之内ではなく松之内の空挺団降下訓練始めは青空の一下にいよいよ落下傘降下の時機となりました。

 CH-47JA輸送ヘリコプターより高高度自由降下を開始する。空挺隊員は厳し空挺教育課程を修了し空挺徽章を手にしますが、空挺作戦は基本的に奇襲であり強襲作戦です。この為に更に空挺隊員より自由降下課程という高高度降下を行う専門要員の教育課程がある。

 自由降下開始、自由降下傘はパラグライダー方式の落下傘ですが、重量20kgと所謂パラグライダーよりも重く、各種装備を携行し降下する事が可能です。その到達距離は高高度自由降下を行った場合、更に30km奥地へ降下する事が可能で隠密且つ迅速な輸送手段です。

 自由降下の目的は隠密裏の内陸展開であり、これは大規模な空挺作戦に先立つ夜間浸透を行い、降下予定地を偵察する主任務で行われます。強襲作戦である空挺作戦は降下予定地を航空偵察するには、降下予定地が暴露する懸念があり、隠密裏に行わねばなりません。

 空挺降下予定地は奇襲の拠点であると共に航空機からの補給を受ける策源地でもある、その場所に敵が僅かでも展開しているならば、降下中という最も脆弱な状況で敵に暴露したまま損耗を被る危険があり、その為に万全の情報収集を行うのが、自由降下を行う部隊だ。

 習志野訓練場を舞台とする降下訓練始めでは、実感が掴みにくいのですが、空挺作戦が行われるのは敵主要補給路や策源地等の戦略目標、若しくは敵の脅威下にありつつ増援の展開まで時間を要する状況下での緊急展開任務です。共通点は味方の増援を受けにくいこと。

 UH-1J多用途ヘリコプターが習志野訓練場へ展開する、UH-1は1961年に運用開始したHU-1B以来自衛隊での運用を経て信頼を掴み、UH-1HにUH-1Jと改良型が導入されると共に現在、富士重工製造で双発型のUH-2を後継機として評価試験が実施されています。

 HU-1Bはアメリカのベル社製機体を富士重工がライセンス生産し、富士重工はその後一貫してUH-1系統の航空機ライセンス生産を行うと共に民間型の生産も担っています。この状況で降下を行う要員は、大規模空挺作戦に先行しての降下誘導小隊の降下開始でしょう。

 降下誘導小隊が展開を開始しました、空挺部隊展開の誘導準備が開始されます。降下誘導小隊の任務は大規模な空挺強襲に先立ち、輸送機へ信号送信を行い降下地点の誘導を行う事に在り、空挺隊員の中でも特に選抜した要員にて構成されています。信号には鏡を使う。

 空挺作戦、航空機という軍事上考え得る最速の手段で展開する一方、一旦降下完了してしまいますと、徒歩機動が主力となってしまいます。近年は輸送機能力向上により車両輸送も難易度は低くなりましたが、留意事項ではあり、その分の発動は万全の準備を要します。

 C-1輸送機の展開、空挺作戦の本番だ。C-1輸送機は川崎重工製高性能輸送機で、1970年に初飛行となりました。沖縄返還前の1970年、開発が具体化した1960年代は専守防衛の教条的遵守要求が強く、航続距離を抑える必要はありましたが、その分高速度を重視した。

 降下開始。空挺団は今も昔も降下前の行くぞを指し示す怒号の様な号令と共に降下を開始します、降下前の大声はアメリカ軍でも、あのロシア軍でも怒号で号令を掛けつつ、最後の安全点検を行うという。安全点検にやりすぎは無く、飛び出した後で戻りは出来ない。

 降下用意!環掛けッ!、C-1輸送機の機内には落下傘開傘紐と直結した環紐を通す導線が張られており、降下用意の号令と共に導線と環を一本化します。装具点検!、空挺隊員は前の空挺隊員装具の安全を四カ所に分け確実に点検します、これ故に空挺は仲間を信頼する。

 C-1機内の導線と落下傘は一体化しています、位置就け、この号令とともに、用意の号令を待ち、降下へ、降下その瞬間に自重で開傘紐は強く引かれる、こうする事で空挺隊員が輸送機を飛び出した瞬間に開傘紐は解き放たれ、空で自動的に丁度四秒後、落下傘は花開く。

 用意用意用意!、降下降下降下!、この号令とともに四秒一名の滞りなく一つの扉から空挺隊員は力いっぱいに大地へと飛び出します、瞬間の躊躇いも気の迷いも許されない、事故に繋がる為で、確実に降下できるように空挺隊員は常に初心を忘れず訓練と点検に向う。

 いち降下ッ!にい降下ッ!さん降下ッ!よん降下ッ!!、飛び出した瞬間に空挺隊員は舌を噛まぬよう、しかし着実にこの号令を習慣づけます、四秒で開く落下傘、この四秒を数える、そして開かなければ、事故、そのまま落下を避けるべく即座に胸の予備傘を用いる。

 習志野訓練場へ次々と降下する空挺隊員、空挺団では前身となる1956年の第101空挺大隊創設以来、不開傘という落下傘が開かない事で墜落する事故は三度しか起きていません。しかし言い換えれば三度起きているのであり、着地の瞬間まで、安全確保へ気は抜けない。

 五転接地着地、両足を踵併せ閉じて接地した瞬間に膝下脚部を撓わせて曲げつつ腰部と太腿から転がり回り背中で仰向けへ大地へ横たわると共に反動を利用し立ち上がる、要するに着地した瞬間に体を曲げて転がり衝撃を吸収する、慣れると三階から落ちても怪我無し。

 C-130輸送機からの空挺降下が開始される。降下用意!環掛けッ!、装具点検!、用意用意用意!、降下降下降下!。この号令は無線中継をそのまま会場のスピーカーを通じて響き渡っています。いち降下ッ!にい降下ッ!さん降下ッ!よん降下ッ!!、この大空に響く。

 C-130輸送機は完全武装の兵員92名を登場させる事が出来ます。しかし空挺隊員は巨大な落下傘と予備傘を身に着ける為、60名しか登場する事が出来ません。C-1輸送機も60名を輸送するのですが、空挺隊員を輸送する際には45名まで抑えて飛行します。装備は重い。

 KC-130空中給油輸送機が展開する、航空自衛隊にまだ2機しか装備されていない装備で、C-130H輸送機を改修し導入されました、KC-130空中給油輸送機の任務は救難用のUH-60J救難ヘリコプター支援で、これにより広い洋上での救難任務の達成率は高まった。

 用意用意用意!、降下降下降下!。会場へ響き渡るのは降下の号令と共にと軍歌“空の神兵”、旧陸軍のパレンバン空挺強襲作戦やメナド空挺作戦、そして絶望的な状況へ立ち向かったレイテ高砂空挺作戦と陸軍空挺部隊の意地を示した沖縄の義烈空挺作戦が戦史に残る。

 みよ落下傘空に舞い!みよ落下傘空を往く!、“空の神兵”に謳われた様子が再現されているのですが、習志野訓練場が狭い関係で同時に降下できる落下傘が限られています、一機一機が一列で進入していますが、出来れば編隊で降下できる広さのある訓練場が望ましい。

 報道席の奥へ降下する空挺部隊、報道席と云いますと素晴らしい撮影環境が用意されているように思えるのですが、其処で撮った方曰く、両線の向こうは政府関係者や空挺団関係者席となっていて、丘陵の陰になってしまい見えない、仮設敵にはこれ反射面陣地だ、と。

 降下する隊員とC-130輸送機、丸い形状の落下傘が変形しているようにみえるのは、拡大すると紐を引いている隊員が見えます、これは丸い形状の落下傘でもある程度操縦出来るよう設計されていまして、これにより訓練場外へ着地しないよう、操作しているのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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