■週報:世界の防衛,最新論点
今週は海軍関連の話題を集めてみましたが各国艦艇の大型化はどんどんと加速している印象です。
デンマーク海軍はミサイルフリゲイトニエルスユーエルへのSM-2ブロックⅢA艦対空ミサイルの搭載を開始しました。これは1億5200万ドルを投じて導入した46発のSM-2ブロックⅢA艦対空ミサイルが配備開始された事を意味します。ニエルスユーエルはアイヴァーヒュイトフェルト級ミサイルフリゲイトの3番艦であり、2011年に竣工しました。
アイヴァーヒュイトフェルト級ミサイルフリゲイトは防空艦としてデンマークが3隻を建造したもので満載排水量6645tと冷戦時代のデンマーク艦よりも大型化していて、ESSM発展型シースパロー用にMk.56VLSを24セルとSM-2用にMk.41VLSを32セル搭載している、二種類の艦対空ミサイルを二種類のVLSに搭載する不思議な設計となっています。
■トゥーンバ改修完了
アンザック級は艦番号が150番台と護衛艦あさぎり型と重なるのですが外見は大きく進歩しました。
オーストラリア海軍はフリゲイトトゥーンバの近代化改修を完了し4月12日に艦隊へ復帰しました。フリゲイトトゥーンバはアンザック級フリゲイトの7番艦として2005年に就役しています、この近代化改修は18カ月間に渡る長大なもので、塔型で特徴的な外見のCEAFAR多機能レーダーの追加搭載を主体とした非常に大規模な改修となっているもの。
トゥーンバの近代化改修とともに他のアンザック級フリゲイトも順次同様の改修を受けている。アンザック級はオーストラリアとニュージーランドが共同で導入したドイツのMEKO型多目的フリゲイトで満載排水量は3600t、もともとは哨戒用フリゲイトとして導入されましたが近年の情勢緊迫化を受け、特に対空戦闘能力の強化が重視されていました。
オーストラリア海軍はOHペリー級ミサイルフリゲイトのオーストラリア仕様であるアデレード級の減勢とともに艦隊防空能力強化を必要としておりCEAFAR多機能レーダーの追加搭載はその対応策です、2027年から新しいハンター級フリゲイトの導入を開始する計画ですが、アンザック級は後継艦が揃うとされる2035年ごろまで運用を継続する計画です。
■ブラジル将来艦の遅延
ブラジルの場合は経済悪化とともに原子力潜水艦など幾つかの計画が重荷になっている印象です。
ブラジル海軍が導入に向け建造を進めるタマンダーレ級フリゲイトの建造が技術的問題から大幅に遅れており、建造計画全般の見直しが求められる可能性があるという。フリゲイトはアグアスアズイスコンソーシアムにより建造される将来艦で、同社はドイツのティッセンクルップマリンシステムズ社とブラジルのエンブラエル社の特定目的合弁会社です。
タマンダーレ級はニテロイ級フリゲイトの後継艦として計画されている新型艦で、ドイツの輸出用MEKOフリゲイトの船体設計を応用し満載排水量3500tと全長107.2m76mm艦砲に射程25kmのCAMM艦対空ミサイルやブラジル国産のAV-RE40艦対艦ミサイルを搭載し、艦載機としてシーホーク対潜ヘリコプター1機を搭載、4隻が建造予定ということ。
技術的問題とは、当初アグアスアズイスコンソーシアムではCOVID-19感染拡大に伴う設計部門運営の問題としていましたが、MEKO型フリゲイトに対してブラジルが設計したモジュールの適合性の問題や、搭載に際して寸法の問題等が発生している可能性が示唆され、大幅な再設計を行うか復元性や航行可能な海象に制限が加わる懸念が生じているようです。
■北欧の対潜訓練事情
潜水艦が無ければ潜水艦を探す訓練がほぼ出来ないのは当たり前ですね。
フィンランド海軍とスウェーデン海軍は4月25日から共同対潜訓練を実施しました。これにはスウェーデン海軍のゴトランド級潜水艦アップランドとフィンランド海軍のハミナ級ミサイル艇ハミナとトルニオ、また沿岸哨戒艇等が参加しています。ハミナ級ミサイル艇は満載排水量250t、対艦ミサイルに加えて限定的な対潜装備を搭載している小型艦です。
ハミナ級ミサイル艇は近年の近代化改修で小型のVDS可変深度ソナーを換装しており、エルマLLS-920対潜擲弾発射装置を搭載していますが、フィンランド海軍は対潜訓練を行うにも潜水艦を装備していません。ここでスウェーデン海軍の潜水艦が協力した構図ですが、この両国は現在NATO加盟を調整中であり、両国の防衛協力の深化をも示した構図です。
■ブラウンシュヴァイク級
ドイツはミサイル艇の後継として小型でもかなり強力な水上戦闘艦を建造しました。
ドイツ海軍は4月21日、ブラウンシュヴァイク級コルベットバッチ2の一番艦ケルン進水式を挙行しました。ハンブルクのブロームヴォス造船所にて行われた進水式を経て、ケルンは2023年に竣工予定です。全長は89mで満載排水量1840t、速力は26ノットを発揮し航続距離は15ノットで7400km、乗員は65名で飛行甲板と無人機等を搭載しています。
ケルンはブラウンシュバイク級コルベットバッチ2の5隻では最初の一隻となり、バッチ1との最大の変更点はRBS-15Mk4艦対艦ミサイルを搭載、これにより水上打撃力は400km先まで到達すると共に対地攻撃も可能となりました。船体の設計はドイツがイスラエルへ輸出したサール6型コルベットとも共通化されており、その輸出も視野に含まれています。
■アズマット級四番艦
中国とパキスタンの防衛協力は更に深い部分まで。
パキスタン海軍は3月31日、アズマット級ミサイル艇四番艦で最終艦を受領しました。アズマット級ミサイル艇は中国の黄蜂級ミサイル艇をパキスタン海軍仕様としたもので、中国国営造船所の支援を受けパキスタン国内において建造されたもの。パキスタンは独自の水上戦闘艦建造能力を求め、結果2012年に中国との共同開発を行う方針を固めました。
アズマット級ミサイル艇は満載排水量560tで全長63m、最高速力としては30ノットを発揮するとのこと。搭載する対艦ミサイルは中国製C-802対艦ミサイルとなっています。更にロシア製AK-630近接防空装置等も搭載しており、哨戒艦的な運用も想定しているもの。上部構造物はステルス性に配慮していますが、各種兵装の配置は従来型の手堅い設計です。
■ヘリ搭載ミサイル艇
ミサイル艇に積もうと思えば詰めるのだけれども積むというよりた詰め込めた印象でした。
バーレーン海軍はヘリコプター搭載ミサイル艇アルタウィーラのイタリアでの近代化改修を完了しました。アフマドイブンムハンマド級ヘリコプター搭載ミサイル艇の6番艇となっている。改修はイタリアのレオナルド社が実施し新型のCMS戦闘管理システムが追加されました。76mm艦砲に40mm機関砲とミサイルにヘリコプターを搭載しているもの。
ヘリコプター搭載ミサイル艇とはいかにも不可解な名称ですが、アフマドイブンムハンマド級は満載排水量632tの小型艦でありながらドイツ製Bo-105観測ヘリコプターの運用能力を有しているのです。それは飛行甲板の真下が格納施設となりかなり無理をして搭載している一方、エクゾセ対艦ミサイル4発も搭載する、不思議な設計となっているのです。
■強襲揚陸艦アナドル
トルコも全津飛行甲板型艦艇を装備し地中海沿岸諸国ではイタリアやスペインとエジプトに続く保有事例です。
トルコ海軍が建造を進める強襲揚陸艦アナドルが公試を開始しました。アナドルはスペインの強襲揚陸艦ファンカルロス一世設計を応用した准同型艦であり、満載排水量は2万7079t、全長は231mという大型艦で全通飛行甲板を採用すると共に長大な航空機格納庫とウェルデッキを有しており、飛行甲板は5440平方mと格納庫は990平方mに達します。
アナドルは強襲揚陸艦であり、CH-47輸送ヘリコプター8機を搭載可能、また多用途ヘリコプターであれば12機を搭載可能としていて、その速力は21ノットとなっている。両用作戦能力も相応に高く車両甲板区画として1880平方mを確保している他、重車両甲板は1410平方mあり、車両甲板に両用装甲車27両と重車両甲板に戦車29両を収容可能だ。
LCVP上陸用舟艇かLCACエアクッション揚陸艇をいずれか2隻収容するウェルデッキは1165平方mという。乗員は261名、そしてトルコ海軍旗艦としての能力も期待されており、司令部施設にも充分な用量が確保されている。なお、設計はスペインのナバンティア社が提供しているが、搭載される電子機器についてはトルコ製装備を中心に採用されています。
■揚陸艦に無人機を
F-35戦闘機を搭載したかったようなのですが斜め上の選択肢は逆に世界から注目を集めています。
トルコ海軍は強襲揚陸艦アナドルに国産無人機バイラクタルTB-3無人機を搭載する構想です。強襲揚陸艦アナドルは全通飛行甲板を有すると共にスキージャンプ台を配置しており、F-35B戦闘機のような垂直離着陸可能な艦載機を搭載し制海艦として運用することが想定され、実際F-35B戦闘機10機と多用途ヘリコプター6機の搭載が念頭となっている。
しかし、トルコ軍がロシア製S-400地対空ミサイルシステムを導入した事で、データリンクを通じてF-35戦闘機の戦術ネットワークが流出する懸念があり、アメリカがトランプ政権時代に輸出中止を決定、この決定は続くバイデン政権でも強化されトルコをF-35計画から除名しています。この為、戦闘機に代え、バイラクタルTB-3無人機が充てられました。
■新潜水艦ニュージャージー
個人的な発言ですが原潜が航行中の様子をなかなか撮影する機会が無いのですよね、観音崎あたりで日向ぼっこしつつ読書しながら出入港を眺められるコロナ終息と日常が戻ってほしい。
アメリカ海軍が導入する原子力潜水艦ニュージャージーが5月2日に進水式を挙行したとの事です。ニュージャージーはヴァージニア級攻撃型原潜の一隻で2016年に起工式を挙行、ジェネラルダイナミクスエレクトリックボートが全体を建造し船体はハンティントンインガルスインダストリーズのニューポートニューズ造船所が建造を担当していました。
ニュージャージーは進水式の時点で艤装工事の92%が完成しているとのこと。ヴァージニア級攻撃型原潜は老朽化が進むロスアンゼルス級攻撃型原潜の後継艦で、当初はより強力なシーウルフ級攻撃型原潜が効果で建造が進まない中での廉価な代案という位置づけでしたが、システム改良が進み寧ろ強力な新型潜水艦として海軍潜水艦部隊をささえています。
■タマンダーレ級遅延
ギアリング級の次の次としては日本から見てもかなり野心的に思える計画です。
ブラジル海軍が導入に向け建造を進めるタマンダーレ級フリゲイトの建造遅延について、アグアスアズイスコンソーシアムでは当初2023年に行われる海上公試の予定を2025年から2026年内に延期させることで対応する方針とのこと。現在運用しているニテロイ級は大戦中のギアリング級の代替艦でもあり、老朽化は深刻な水準にあるともされています。
4隻が建造されるタマンダーレ級フリゲイトは、問題が無ければ更に2隻を追加する構想や、ブラジル海軍では汎用艦の建造完了後に7000t級の艦隊防空能力を持つミサイル駆逐艦としてドイツの125型フリゲイトを参考とした水上戦闘艦導入をも計画していましたが、タマンダーレ級フリゲイトの進捗次第では、これも展望が見通せない状況となっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今週は海軍関連の話題を集めてみましたが各国艦艇の大型化はどんどんと加速している印象です。
デンマーク海軍はミサイルフリゲイトニエルスユーエルへのSM-2ブロックⅢA艦対空ミサイルの搭載を開始しました。これは1億5200万ドルを投じて導入した46発のSM-2ブロックⅢA艦対空ミサイルが配備開始された事を意味します。ニエルスユーエルはアイヴァーヒュイトフェルト級ミサイルフリゲイトの3番艦であり、2011年に竣工しました。
アイヴァーヒュイトフェルト級ミサイルフリゲイトは防空艦としてデンマークが3隻を建造したもので満載排水量6645tと冷戦時代のデンマーク艦よりも大型化していて、ESSM発展型シースパロー用にMk.56VLSを24セルとSM-2用にMk.41VLSを32セル搭載している、二種類の艦対空ミサイルを二種類のVLSに搭載する不思議な設計となっています。
■トゥーンバ改修完了
アンザック級は艦番号が150番台と護衛艦あさぎり型と重なるのですが外見は大きく進歩しました。
オーストラリア海軍はフリゲイトトゥーンバの近代化改修を完了し4月12日に艦隊へ復帰しました。フリゲイトトゥーンバはアンザック級フリゲイトの7番艦として2005年に就役しています、この近代化改修は18カ月間に渡る長大なもので、塔型で特徴的な外見のCEAFAR多機能レーダーの追加搭載を主体とした非常に大規模な改修となっているもの。
トゥーンバの近代化改修とともに他のアンザック級フリゲイトも順次同様の改修を受けている。アンザック級はオーストラリアとニュージーランドが共同で導入したドイツのMEKO型多目的フリゲイトで満載排水量は3600t、もともとは哨戒用フリゲイトとして導入されましたが近年の情勢緊迫化を受け、特に対空戦闘能力の強化が重視されていました。
オーストラリア海軍はOHペリー級ミサイルフリゲイトのオーストラリア仕様であるアデレード級の減勢とともに艦隊防空能力強化を必要としておりCEAFAR多機能レーダーの追加搭載はその対応策です、2027年から新しいハンター級フリゲイトの導入を開始する計画ですが、アンザック級は後継艦が揃うとされる2035年ごろまで運用を継続する計画です。
■ブラジル将来艦の遅延
ブラジルの場合は経済悪化とともに原子力潜水艦など幾つかの計画が重荷になっている印象です。
ブラジル海軍が導入に向け建造を進めるタマンダーレ級フリゲイトの建造が技術的問題から大幅に遅れており、建造計画全般の見直しが求められる可能性があるという。フリゲイトはアグアスアズイスコンソーシアムにより建造される将来艦で、同社はドイツのティッセンクルップマリンシステムズ社とブラジルのエンブラエル社の特定目的合弁会社です。
タマンダーレ級はニテロイ級フリゲイトの後継艦として計画されている新型艦で、ドイツの輸出用MEKOフリゲイトの船体設計を応用し満載排水量3500tと全長107.2m76mm艦砲に射程25kmのCAMM艦対空ミサイルやブラジル国産のAV-RE40艦対艦ミサイルを搭載し、艦載機としてシーホーク対潜ヘリコプター1機を搭載、4隻が建造予定ということ。
技術的問題とは、当初アグアスアズイスコンソーシアムではCOVID-19感染拡大に伴う設計部門運営の問題としていましたが、MEKO型フリゲイトに対してブラジルが設計したモジュールの適合性の問題や、搭載に際して寸法の問題等が発生している可能性が示唆され、大幅な再設計を行うか復元性や航行可能な海象に制限が加わる懸念が生じているようです。
■北欧の対潜訓練事情
潜水艦が無ければ潜水艦を探す訓練がほぼ出来ないのは当たり前ですね。
フィンランド海軍とスウェーデン海軍は4月25日から共同対潜訓練を実施しました。これにはスウェーデン海軍のゴトランド級潜水艦アップランドとフィンランド海軍のハミナ級ミサイル艇ハミナとトルニオ、また沿岸哨戒艇等が参加しています。ハミナ級ミサイル艇は満載排水量250t、対艦ミサイルに加えて限定的な対潜装備を搭載している小型艦です。
ハミナ級ミサイル艇は近年の近代化改修で小型のVDS可変深度ソナーを換装しており、エルマLLS-920対潜擲弾発射装置を搭載していますが、フィンランド海軍は対潜訓練を行うにも潜水艦を装備していません。ここでスウェーデン海軍の潜水艦が協力した構図ですが、この両国は現在NATO加盟を調整中であり、両国の防衛協力の深化をも示した構図です。
■ブラウンシュヴァイク級
ドイツはミサイル艇の後継として小型でもかなり強力な水上戦闘艦を建造しました。
ドイツ海軍は4月21日、ブラウンシュヴァイク級コルベットバッチ2の一番艦ケルン進水式を挙行しました。ハンブルクのブロームヴォス造船所にて行われた進水式を経て、ケルンは2023年に竣工予定です。全長は89mで満載排水量1840t、速力は26ノットを発揮し航続距離は15ノットで7400km、乗員は65名で飛行甲板と無人機等を搭載しています。
ケルンはブラウンシュバイク級コルベットバッチ2の5隻では最初の一隻となり、バッチ1との最大の変更点はRBS-15Mk4艦対艦ミサイルを搭載、これにより水上打撃力は400km先まで到達すると共に対地攻撃も可能となりました。船体の設計はドイツがイスラエルへ輸出したサール6型コルベットとも共通化されており、その輸出も視野に含まれています。
■アズマット級四番艦
中国とパキスタンの防衛協力は更に深い部分まで。
パキスタン海軍は3月31日、アズマット級ミサイル艇四番艦で最終艦を受領しました。アズマット級ミサイル艇は中国の黄蜂級ミサイル艇をパキスタン海軍仕様としたもので、中国国営造船所の支援を受けパキスタン国内において建造されたもの。パキスタンは独自の水上戦闘艦建造能力を求め、結果2012年に中国との共同開発を行う方針を固めました。
アズマット級ミサイル艇は満載排水量560tで全長63m、最高速力としては30ノットを発揮するとのこと。搭載する対艦ミサイルは中国製C-802対艦ミサイルとなっています。更にロシア製AK-630近接防空装置等も搭載しており、哨戒艦的な運用も想定しているもの。上部構造物はステルス性に配慮していますが、各種兵装の配置は従来型の手堅い設計です。
■ヘリ搭載ミサイル艇
ミサイル艇に積もうと思えば詰めるのだけれども積むというよりた詰め込めた印象でした。
バーレーン海軍はヘリコプター搭載ミサイル艇アルタウィーラのイタリアでの近代化改修を完了しました。アフマドイブンムハンマド級ヘリコプター搭載ミサイル艇の6番艇となっている。改修はイタリアのレオナルド社が実施し新型のCMS戦闘管理システムが追加されました。76mm艦砲に40mm機関砲とミサイルにヘリコプターを搭載しているもの。
ヘリコプター搭載ミサイル艇とはいかにも不可解な名称ですが、アフマドイブンムハンマド級は満載排水量632tの小型艦でありながらドイツ製Bo-105観測ヘリコプターの運用能力を有しているのです。それは飛行甲板の真下が格納施設となりかなり無理をして搭載している一方、エクゾセ対艦ミサイル4発も搭載する、不思議な設計となっているのです。
■強襲揚陸艦アナドル
トルコも全津飛行甲板型艦艇を装備し地中海沿岸諸国ではイタリアやスペインとエジプトに続く保有事例です。
トルコ海軍が建造を進める強襲揚陸艦アナドルが公試を開始しました。アナドルはスペインの強襲揚陸艦ファンカルロス一世設計を応用した准同型艦であり、満載排水量は2万7079t、全長は231mという大型艦で全通飛行甲板を採用すると共に長大な航空機格納庫とウェルデッキを有しており、飛行甲板は5440平方mと格納庫は990平方mに達します。
アナドルは強襲揚陸艦であり、CH-47輸送ヘリコプター8機を搭載可能、また多用途ヘリコプターであれば12機を搭載可能としていて、その速力は21ノットとなっている。両用作戦能力も相応に高く車両甲板区画として1880平方mを確保している他、重車両甲板は1410平方mあり、車両甲板に両用装甲車27両と重車両甲板に戦車29両を収容可能だ。
LCVP上陸用舟艇かLCACエアクッション揚陸艇をいずれか2隻収容するウェルデッキは1165平方mという。乗員は261名、そしてトルコ海軍旗艦としての能力も期待されており、司令部施設にも充分な用量が確保されている。なお、設計はスペインのナバンティア社が提供しているが、搭載される電子機器についてはトルコ製装備を中心に採用されています。
■揚陸艦に無人機を
F-35戦闘機を搭載したかったようなのですが斜め上の選択肢は逆に世界から注目を集めています。
トルコ海軍は強襲揚陸艦アナドルに国産無人機バイラクタルTB-3無人機を搭載する構想です。強襲揚陸艦アナドルは全通飛行甲板を有すると共にスキージャンプ台を配置しており、F-35B戦闘機のような垂直離着陸可能な艦載機を搭載し制海艦として運用することが想定され、実際F-35B戦闘機10機と多用途ヘリコプター6機の搭載が念頭となっている。
しかし、トルコ軍がロシア製S-400地対空ミサイルシステムを導入した事で、データリンクを通じてF-35戦闘機の戦術ネットワークが流出する懸念があり、アメリカがトランプ政権時代に輸出中止を決定、この決定は続くバイデン政権でも強化されトルコをF-35計画から除名しています。この為、戦闘機に代え、バイラクタルTB-3無人機が充てられました。
■新潜水艦ニュージャージー
個人的な発言ですが原潜が航行中の様子をなかなか撮影する機会が無いのですよね、観音崎あたりで日向ぼっこしつつ読書しながら出入港を眺められるコロナ終息と日常が戻ってほしい。
アメリカ海軍が導入する原子力潜水艦ニュージャージーが5月2日に進水式を挙行したとの事です。ニュージャージーはヴァージニア級攻撃型原潜の一隻で2016年に起工式を挙行、ジェネラルダイナミクスエレクトリックボートが全体を建造し船体はハンティントンインガルスインダストリーズのニューポートニューズ造船所が建造を担当していました。
ニュージャージーは進水式の時点で艤装工事の92%が完成しているとのこと。ヴァージニア級攻撃型原潜は老朽化が進むロスアンゼルス級攻撃型原潜の後継艦で、当初はより強力なシーウルフ級攻撃型原潜が効果で建造が進まない中での廉価な代案という位置づけでしたが、システム改良が進み寧ろ強力な新型潜水艦として海軍潜水艦部隊をささえています。
■タマンダーレ級遅延
ギアリング級の次の次としては日本から見てもかなり野心的に思える計画です。
ブラジル海軍が導入に向け建造を進めるタマンダーレ級フリゲイトの建造遅延について、アグアスアズイスコンソーシアムでは当初2023年に行われる海上公試の予定を2025年から2026年内に延期させることで対応する方針とのこと。現在運用しているニテロイ級は大戦中のギアリング級の代替艦でもあり、老朽化は深刻な水準にあるともされています。
4隻が建造されるタマンダーレ級フリゲイトは、問題が無ければ更に2隻を追加する構想や、ブラジル海軍では汎用艦の建造完了後に7000t級の艦隊防空能力を持つミサイル駆逐艦としてドイツの125型フリゲイトを参考とした水上戦闘艦導入をも計画していましたが、タマンダーレ級フリゲイトの進捗次第では、これも展望が見通せない状況となっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)