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20式5.56mm小銃報道公開:豊和工業製,島嶼部防衛等を主眼に現行の89式小銃の後継装備

2020-05-18 20:19:12 | 先端軍事テクノロジー
■89式小銃後継担う新小銃
 新小銃20式5.56mm小銃を報道公開、HOWA-5.56として開発され今年度予算に計上されていました新時代を担う最新型小銃の登場です。

 防衛省は89式小銃に代わる新小銃20式5.56mm小銃を報道公開しました。今回のコロナウィルスCOVID-19感染拡大さえ無ければ、四月下旬水陸機動団記念行事相浦駐屯地祭、もしくは7月初旬に実施されていたでしょう富士学校祭で公開されていたことでしょう。感染拡大が奇跡的に冬の第二波がなければ来年の空挺団降下訓練始めに期待しましょう。

 島嶼部防衛などを主眼に海水などでの防錆性能を考慮したとのことで、小銃全体の印象としては全面的に折畳式銃床を採用しコンパクトとしている一方、昨今の世界で潮流となっていますレイルシステム、照準器や照準補助装置とフラッシュライトなどを装着する構造を採用しています。ただ、重厚形状や機関部と握把の全体印象は89式小銃に似たおもむき。

 19式5.56mm小銃。さて、今年度予算概算要求にはこう命名されていましたので疑問に思われる方も多いでしょう、これは19式小銃が既に存在した、というお役所的な理由がありました。QBZ-19、中国人民解放軍の新小銃で先行して開発されたQBZ-17を短縮し2019年の中国建国70周年閲兵式にて公開、日中で同じ名称の小銃では紛らわしい、ということ。

 89式5.56mm小銃は2000年代のイラク派遣に際してクウェート国内で派遣隊員全員が砂漠の射撃場で1000発の射撃を万一戦闘に巻き込まれる懸念から実施、小銃に最も過酷という砂塵の中で作動不良を起こさなかった事から信頼性の高さを確たるものとしました。一方でこのイラク派遣を契機に自衛隊では戦闘射撃というものの認識が大きく転換しました。

 M-4A1カービン。同盟国アメリカ陸軍では長大なM-16A2小銃の後継として短いが取り回しやすいM-4A1が採用されるところとなりました。そして自衛隊では射撃場において400m以遠の標的を射撃する基本から自由射撃という近距離での遭遇戦に対応する戦闘射撃の重要性、市街地戦の視点から留意されるようになったのが2000年代の転換点のひとつ。

 M-27ISR。アメリカ海兵隊ではM-4A1への転換よりは遠距離戦闘を留意したM-16A2の維持が決断されています。自衛隊が89式小銃に望む400m以遠との戦闘をアメリカでは海兵隊が留意していたのですね。そしてM-4カービンを源流としたドイツ製H&K-HK416強化銃身型を分隊支援火器として採用し、M-249MINIMI機銃と二類型を構成していたのです。

 陸上自衛隊とアメリカ海兵隊、変な共通点ですがライフルマン重視のアメリカ海兵隊と軽装備の普通科連隊が編成の中心という陸上自衛隊は独自の火力として小銃に依存する比重が大きいという不思議な共通点があります。したがって400m以遠の目標との戦闘能力を維持しつつ、しかし、近接戦闘の取り回し、という矛盾する能力が要求されることとなる。

 レイルシステム。文字通り小銃のレールが載っているようなものですが、長射程と取り回し、二つの矛盾する目的を達する手段として、光学照準機やバーティカルグリップという取り外し式の握把というものがあります。光学照準機は89式小銃にも搭載可能ではありましたが、1980年代に複数の照準機を搭載する想定はなく、時代遅れ、となってしまいます。

 20式5.56mm小銃、ベルギー製FN-SCAR小銃とにているとの話題がありましたが、なにか89式小銃が採用されるさいにFN-FNC小銃が採用されるとの憶測記事が流れたことを思い出します。アメリカ製ブッシュマスターACR小銃ともにている印象はやはり89式小銃開発当時にアーマライト社製AR-18ライセンス生産の憶測が飛んだ話などを思い出す。

 西部方面普通科連隊、現在の水陸機動団などは取り回しを良くするために規格外のバーティカルグリップを特注し89式小銃の被筒、即ちハンドガード放熱孔にに装着することで効果を上げましたが、結果、被筒はそうした運用を想定しておらず、放熱孔にボルドで直付したグリップで光学照準機を乗せて重くなった小銃を振り回すことで被筒が欠損の事故も。

 89式小銃にレイルシステムを装備する新小銃も、技術研究本部、現在の防衛装備庁では一応検討されたようですが問題がありました、被筒などを再設計したとしても、この部分に圧力が加われば銃身の基部に負担が掛かり、正確な照準ができなくなるという。これはM-4A1でもM-16A2でも認識されているもの。そこでフローティングバレル構造が必要に。

 新小銃は国産です、被筒などに照準補助装置や握把やフラッシュライトなどを追加した場合でも重さは銃本体に掛かり銃身にぶら下がらない構造を採用することとなりました。もっとも、弾薬は5.56mm弾、6.8mm弾など幾つか研究は行われたという、しかし89式小銃と同じ弾薬を採用する事が決定されたため、内部構造は89式小銃に準じている、とも。

 豊和工業において国産開発された19式小銃。残念ながら機関部など内部はまだ公開されていませんが、89式小銃と機関部などが同設計であるならば、分解清掃などの教育面で相互互換性があります。小銃構造はPCのキーボードのように目を瞑っていても正確に操作できなければなりません、この点から国産を採用することにはある程度の意味があるのですね。

 64式小銃、陸上自衛隊では教育訓練部隊や後方職種は勿論、予備自衛官部隊でも完全に代替され、海上自衛隊や航空自衛隊へも順次89式小銃が入り始めています。20式小銃は全面的に89式小銃を置き換える方針とのことです。ただ、御世話になっている現職の方曰く、漸く64式小銃から89式小銃に慣れたばかりなのに、という時代の流れの速さも聞きました。

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2 コメント

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Unknown (ドナルド)
2020-05-18 23:07:19
個人的には、国産小銃が良いのか微妙です。
・「年間3000丁」では全く足りない。年産1〜1.5万丁は最低限必要でしょう。古い小銃の併用は兵站・訓練が複雑になり、このままでは「国産の悪い例」に成り下がる。
・欧米は5.56mmを卒業する方向になりつつあるので、生産は15年ほどとすべき。次の銃に生産移行する前提で進むべきとおもいます。

まず迅速に64式を駆逐すべきです。62式が23万丁、89式が14.5万丁しか調達されていません。人員が減ったとは言え、89式だって減耗もあるので、年産1.5万丁で7万丁を5年程度で生産し、64式を完全に置き換えるべきです。

次に89式が旧式だから20式を買うわけですから、前線の隊員の銃を迅速に更新すべきです。年産1万丁でさらに10年続けて10万丁(この時点で17万丁)。その後に、年産3000丁程度の継続生産に移行する。

この頃には、6.8mmなどの新時代の小銃が現れるので、すぐに次世代小銃の話になると思います。訓練での射撃も現在より10倍以上増やすべきで、結果として消耗も激しくなるでしょうから、問題ないと思います。小銃はそれほど高価なわけではないので、必要なコストは、形ばかりの師団を旅団にし、数千人の人員を削減するだけでも十分捻出できます。

#ボロボロの兵器を使い続け、弾薬にも事欠き、射撃訓練もまともにできない14万人と、しっかり訓練し弾薬兵站が充実した13.5万人なら、間違いなく後者の方が強力です。

輸入でも国産でもどちらでも良いのですが、特に国産にこだわるのなら、きちんとやるべきです。きちんとできないのなら、国産なんてやめるべきだと思います。

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Unknown (パラベラム9)
2020-06-11 20:16:48
私もドナルドさんに同意。
何年までにどれぐらい配備するかといった明確な調達計画が必要。
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