北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

イスラエルガザ戦争開戦一年,ガザ地区大規模反撃とレバノン地上侵攻は第五次中東戦争へ拡大の懸念

2024-10-07 20:08:14 | 国際・政治
■あの日は小松祭
 驚くことに一年以上を経て出口戦略が見えないばかりか戦果は拡大し後世の歴史家に第五次中東戦争といわれるのではないかという状況だ。

 ガザ開戦一年。本日10月7日はちょうど一年前、パレスチナのガザ地区からコマンドー部隊によるイスラエル奇襲攻撃が行われ、非戦闘員が大量に殺害され拉致された衝撃的な事件から一年となります。あの日は日曜日、石川県では小松基地航空祭が行われている最中であり、ガザからの攻撃は散発的にロケット弾攻撃があったという時代です。

 F-15戦闘機が機動飛行や編隊飛行を行っており、地元アイドルによる撮影会が、今までのPV撮影を航空祭の最中に行うようなものではなく、航空祭を盛り上げようという見せる行事、魅せる、というべきなのかな、そうした展示が行われている中で、ガザで何か大きなことが始まりイスラエルに被害が出ている、という情報が断片的に入りまして。

 航空祭の最中、なにしろ小松市の人口に匹敵する来場者が基地の一般公開区画に集まっているものですから電波状況はわるく、航空祭プログラム終了後も帰路に就こうにもシャトルバスは大行列、仕方ないので基地から小松駅に向けて歩き、途中から路線バスを利用するという方式で帰路につきました。これが意外に早く駅に到着したのですが。

 武装勢力ハマスは相当周到に準備したと考えられます、イスラエルが設置した防護壁により従来主流であった戦闘員浸透による自爆攻撃は不可能となっていましたので、一枚の防護壁にイスラエルがかなり依存していたことは否めないのですが、遠隔監視装置やイスラエル本土への接近経路がかなり情報収集と計算の上で行われていたという印象で。

 ガザからの攻撃は、公式情報は沈黙のままで外電は事実確認中の情報不足、恐らく事実なのだろうという情報以上にフェイクニュースや事実誤認の情報が溢れている、過去のイスラエル軍の戦闘機地上移動訓練の様子を、ガザ地区近くの基地から陸路で脱出する戦闘機、というような映像が普通に流れていましたが、日本時間翌日から情報がまとまり。

 パラグライダーを用いた空挺特攻隊の越境や境界線にイスラエルが構築した防護壁の監視装置への無人機攻撃、停車中の戦車への無人機攻撃と乗員が捕虜とされる映像、監視ポストへの襲撃と無差別発砲、音楽フェスタ襲撃、一般住宅への放火と銃撃の景況、農業施設修業中の外国人労働者宿舎襲撃、等の映像が報道されるようになりました。

 同情か過剰反撃か。一年を経た今は、と言えば当時イスラエル軍が予備役を招集した時点、ガザ地区でかなり大規模な掃討作戦を実施するだろうということまでは予測でき、恐らくガザ地区の大半は廃墟になるまで徹底した空爆が行われるのだろう、という予感はありましたが、現実はもう少しひどく、坐臥地区の全域が廃墟になるほど徹底した戦闘が。

 ガザ地区を徹底的に砲撃し、武装勢力拠点に対してアメリカ製超大型ブルドーザを先頭にメルカヴァ戦車とアチザリット重装甲車やナメル重装甲車が突破する、これが過去、防護壁が建設される前のガザ地区における戦闘となっていましたが、実際には道路が砲撃で一直線に建設されるなど、人口密集地では考えられない荒っぽい戦術が採られた。

 人口の2%以上が死亡している、不随被害がどの程度であるのかは不明で、実際にはかなりの人数の戦闘員がガザ地区には潜伏しているとされますが、現実問題としてガザ地区では既に人口の2%以上が死亡している、200万の人口であるガザで既に4万1000名が死亡しているとはそういう意味なのですが、あまりに付随被害が酷いのではないか。

 都市部での戦闘は、都市と森林は兵を呑む、として古来戦闘を極力回避するよう求められていたところであり、瓦礫になった市街地は平時以上に死角が多くなり、強度市街戦、という呼称があるほどなのですが、イスラエル軍は戦闘員と非戦闘員の区別、例えばイラク戦争におけるアメリカ軍のファルージャの戦いほど徹底させていないようみえて。

 ファルージャやナジャフといったイラク戦争での市街戦では街区ごとに包囲する一個大隊に攻勢に当たる一個大隊を当てていて、なるほど市街戦は大変な兵力が必要になるものだ、と自衛隊の普通科連隊の編成と京都や大阪の市街地地図を眺めながら考えさせられたものですけれども、非戦闘員付随被害はあったものの、かなり限定されていたようにも。

 イスラエルは、ネタニヤフ首相はとするべきでしょうか、10月7日の衝撃を背景に一気にガザ地区の問題を根底から片付けずことを期しているよう思えるのですが、そもそもハマスを制圧したとしても、和平が訪れない限りは結局のところ、何らかの形で武装闘争が行われるか、より脆い場所から攻撃が行われる、解決にはならないと思うのですが。

 レバノンへ戦火は拡大、現状は一年を前にガザ地区から相手を武装勢力ヒズボラに切替えて、状況は悪化の見通しです。ハマス指導者がイラン訪問中に無人機攻撃もしくは誘導弾攻撃により暗殺され、続いてイスラエルは昨年のガザ攻撃からハマスに呼号し周辺船舶への無差別攻撃を行っていたイエメンのフーシ派に対しても空爆を敢行しましたが。

 レバノンの武装勢力ヒズボラに対して、指導者抹殺へヒズボラ本部への大量の地中貫通爆弾投入や戦闘員連絡用通信機への爆発物混入による一斉爆破などを行いましたが、これに続いて地上軍を進行させ限定侵攻を実施、これがこのまま全面戦争に拡大するのではないか、という懸念があります。すると最終的にイラン本土への大規模攻撃を行うのか。

 出口戦略をどのように考えているのか。イスラエルは事実上の核保有国ですが、他方で人口の限界からイラン本土へ、その途中にはイラクとシリアがある、地上軍侵攻を行う事は出来ません、イスラエルはほかの中東諸国とはエジプトとの国交正常化を筆頭に過去、四度の中東戦争が繰り返された時代とは異なる関係性を確立する事はできているが。

 地上戦が端緒の段階であれば、国際社会には戦闘の拡大を止める方法はありました、それは危険ではあるもののガザ地区へ重武装のPKO部隊を駐留させ、ガザからの攻撃も、イスラエルからの攻撃も平和執行の形で阻止する事です。ただ、度重なる国連改革により、元々は国連事務総長の所管に在ったPKO任務はいまはのこっていません。

 PKOは2002年以降、国連総会決議での派遣ではなく、拒否権を持つ五大国に、五大国の一致により運営される安全保障理事会の所管となり、これによりPKO任務そのものの任務領域と、平和維持という暫定的な施策ではなく平和執行という国連憲章上の踏み込んだ措置が可能となったものの、派遣の着手が非常に制約されるものとなっている。

 UNEF I第一次国際連合緊急軍を提唱し実現させたカナダのレスターBピアソン首相のような覚悟と行動力を伴える為政者が、2020年代の世界には実現しない事が、中東においての現状、恐らく中東全域に広がるであろう事態に歯止めをかけられない状況だ。アメリカ大統領選では停戦が議題になり、つまり年内終戦は不可能と考えられている程に楽観要素が無いのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ情勢-アドミラルゴルシコフ級フリゲイト3番艦ロシア北方造船所にて進水式

2024-10-07 07:00:45 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ソ連崩壊後のロシアは輸出艦の受注で経験を積んで建造能力を継承している構図でしたが新しい艦艇の量産体制が徐々にではあるが確立し始めている。

 ロシア海軍向けアドミラルゴルシコフ級フリゲイトの3番艦がロシア北方造船所において進水式を迎えたという。艦名はイサコフ、計画では2027年に竣工する予定です。航空母艦アドミラルゴルシコフとは別のもので、満載排水量は5400t、海上自衛隊の護衛艦もがみ型と同程度となっている、冷戦後としてロシアが量産した最大の水上戦闘艦です。

 冷戦時代のソ連海軍はソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦とウダロイ級対潜駆逐艦という、満載排水量8000t規模の大型水上戦闘艦を量産していましたが、ソ連崩壊に伴う経済破綻によりその余力は失われ、1200t程度のコルベットをミサイル艦や防空艦として建造し、経済破綻により退役を余儀なくされた水上戦闘艦の代替にあてていました。

 ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、2000年代にはいりロシア経済が石油輸出などにより一定の回復を見せた際に建造されたのがアドミラルゴシコフ級ですが、当初は満載排水量8000t程度の水上戦闘艦建造を計画するものの、建造ノウハウの流失散逸などから時期尚早とされ、4000tのフリゲイト計画を構築、発展させたのが本級となっています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 やはり機械化部隊は重要だ。

 ウクライナ軍はクピャンスク正面において2024年初期以来最大のロシア軍機械化部隊攻撃を撃退したとのこと。ISWアメリカ戦争研究所9月27日付ウクライナ戦況報告によれば、クピャンスク南方にあるピシュチネにおいてロシア軍の増強大隊規模の攻撃を受けたという。この地域はウクライナ軍一個大隊が防御陣地をおいている場所でした。

 ロシア軍増強大隊は戦車および装甲車50両を参加させたものの、ウクライナ軍は戦車3両と装甲車11両を撃破、またロシア軍は戦車10両と装甲車16両を損傷させられたものの残存部隊は後退したとしています。この戦闘は9月26日全体にわたって展開され、ウクライナ軍は戦闘の様子を映したドローン映像を公開しています。

 クピャンスクを狙うロシア軍は当面の目標としてオスキル川への到達を目指しているとされ、ここまで進出しウクライナ軍への防衛戦を構築しようとしていますが、クピャンスクの重要性はウクライナ軍も理解していて、クピャンスク正面のウクライナ軍はなんとか後方連絡線を維持しており、ロシア軍にクピャンスク奪取の目処を立たせていません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする