北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】トルコ国産空母計画と原子力空母エイブラハムリンカーン艦上シミュレータ,イラン空母シャヒードバフマンバゲリ

2024-10-08 20:22:25 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は航空母艦関連の話題を日米英伊の航空母艦と全通飛行甲板型護衛艦と記念艦の写真と共に紹介しましょう。

 トルコ海軍が構想する国産空母計画に進展です。トルコ海軍は国産戦闘機カーンを搭載可能という航空母艦を計画しています、これは6万5000tから8万000tというアメリカ海軍のニミッツ級航空母艦に迫る巨大な艦となる構想で、その背景にはカーン戦闘機がF-22戦闘機よりも大型化したため、運用するには巨大な船体が必要となっているため。

 進展とは、第1に船体形状が決定し船体形状に起因する水抵抗と必要な推進力に関する解析が完了したということ。第2に三次元設計図が具体的に動き始めたことで、バルバスバウを新型とすることで航続距離の延伸を図る目処がついたということ。第3にこうした予備設計の目処がついたことで細部設計に移行するまでの道筋がみえてきたということ。

 トルコ海軍によれば船体構成の要素の80%はトルコ国産によりまかないたいということで、海外製部品20%のうち、機関部は輸入に依存、海上自衛隊護衛艦いずも型、ひゅうが型のようなガスタービン推進法式を採用する方針とのことで、具体的にはLM-2500ガスタービンエンジン4基を搭載する。起工や就役時期については今後の検討とされています。■

 アメリカ海軍は原子力空母エイブラハムリンカーンに艦上シミュレータを設置しました。これはもともと、様々な気象条件などから艦上訓練を行えない状況や寄港中などの状況でも空母艦載機操縦士の訓練を行うことが目的のもので、パタクセントリバー海軍航空基地に置かれたNAWCAD研究所において開発が進められていた装備品となっています。

 原子力空母カールビンソンに2023年、最初のシミュレータが搭載され、F-35C戦闘機の操縦士を想定、人工衛星コンステレーションにイージス艦や地上戦闘部隊などと連携するCEC共同交戦能力のような、平時における訓練では難しい状況を再現することが目的とされ、カールビンソンでの運用結果が良好であったことから配備を拡大したかたち。

 エイブラハムリンカーンに搭載されたシミュレータは大型モニターと操縦装置という、可搬性の高い、言い換えれば高級な家庭用テレビゲームのような装備となっているようですが、既存の応接室、ニミッツ級航空母艦はこの種の施設が充実している、その調度品を応用したもので、必要ならばほかの空母への設置も迅速に行えることをしめしています。■

 中国でミンスク航空博物館が火災により炎上しました。ソ連海軍のキエフ級航空母艦ミンスク、冷戦時代はソ連太平洋艦隊力の象徴となっていましたがソ連崩壊後にロシア海軍はミンスクを維持することができず1992年に韓国のスクラップ業者へ売却、これを中国海軍系列の民間企業が1998年に購入し、カジノ船として、結果的に遊園地となりました。

 ミンスクは当初、購入した企業が中国海軍関係の企業、習近平政権時代前まで人民解放軍において広く黙認されていた軍人の給与不足を補うための副業、こうした不透明な企業が購入していたため、1990年代から航空母艦導入を模索していた中国海軍が再整備し中国外群空母として就役させるのでは、と危惧されていましたが遊園地となっています。

 キエフ級空母のみならずソ連設計の艦艇は防火対策の不備が指摘されるものが多いのですが、今回の火災では上部構造物がほぼ完全に焼失したほか、アングルドデッキ部分にも延焼が確認されており、内部の様子は公開されていませんが船体内部へも延焼している可能性が高いもよう。空母遊園地としての再開は不可能となっている可能性がたかい。■

 イラン海軍が建造する航空母艦シャヒードバフマンバゲリについて動きがあった模様です。イランは貨物船を改造したヘリコプター空母マカランを導入していますが、さらに大きな貨物船を改造しているのはシャヒードバフマンバゲリです。衛星写真によれば全通飛行甲板ではないものの舷側にせり出した部分をアングルドデッキとしているもよう。

 シャヒードバフマンバゲリはアングルドデッキとスキージャンプ台を配置していて、9月までにその甲板部分にラインが塗粧している様子が確認されたことで、本格的な全通飛行甲板を採用していることが確認されました。さらに船体中央部、航空機駐機部分には開口部が衛星写真で確認されており、艦内に格納庫をゆうしている可能性が出てきた。

 イラン軍には空母艦載機であるアメリカグラマン社製F-14戦闘機がありますが、この間再運用は想定されず、イラン軍は多数の無人航空機を運用しており、自爆用無人機シャヘド136はロシアに大量供与されウクライナ無差別攻撃へ数千機が撃ち込まれていることで有名ですが、イランではこうした無人航空機を運用する航空母艦を模索してきました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ウフレダール撤退決定と無人機年産400万機体制,黒海航行中穀物輸送船ミサイル攻撃

2024-10-08 07:00:23 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 撤退は残念ですが機械化装備をかいているロシアはこれに乗じる事が出来ず見方によっては攻撃衝力をとっくの昔に使い果たしているのではないかと。

 ウクライナ軍最高司令部はウフレダールからの撤退を決定しました、これはISWアメリカ戦争研究所10月2日付ウクライナ戦況報告に示されていたもので、10月2日にホルティア戦区司令部広報官が発表したもの。戦闘の焦点の一つであり、この背景にはロシア軍圧力により人的損耗及び装備の損失を重ねているという厳しい状況があるとのこと

 ウフレダールからの撤退はロシア軍に東部戦線での複数の要塞化された都市部へ前進する可能性を許す事となります。ただ、ロシア軍には装備の制約により大きく前進する能力は無く、ウフレダール北西地域においてパヴリフカ方面へ向かう高速道路上を若干前進したのみ、ウクライナ軍による遅滞行動が有る程度効果を残した構図といえるでしょう。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊の無人機は数百単位で揃える事が仰々しく言われているのですが桁は幾つも違うのが実情でそれこそ無人機一億機”一億火の玉”を目指さねば勝てない。

 ウクライナとロシアの無人機生産状況について。ISWアメリカ戦争研究所の10月2日ウクライナ戦況報告によればロシアのプーチン大統領は2023年にロシアは来年には無人機を十倍の生産に拡大し年産140万機の量産体制をこうちくするとしました。これに対してウクライナ企業は年産400万機体制を目指しており、膨大な無人機が消費されている。

 ウクライナは2024年に既に無人機を150万機製造している、この数字は1日にウクライナのゼレンスキー大統領が述べた数字であり、いまのところ年産は200万機が量産されている事となります。そしてこの数字はロシアの無人機製造能力が目標達成の場合でも、ウクライナの無人機製造能力を明らかに下回っている、という事が重要なのかもしれません。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 昔はバックファイアからのミサイル攻撃というのは恐怖の代名詞のように言われていたものなのですが実際はこんな感じ。

 黒海を航行中の穀物輸送船アヤ号がロシア軍爆撃機の攻撃を受けた、イギリス国防省の10月3日付ウクライナ戦況報告によれば、9月11日、商船へのミサイル攻撃事案が発生していたとのこと。攻撃したのはTu-22M3バックファイア爆撃機でKh-22/AS-4キッチン対艦ミサイルが使用されたもよう、ただ、幸い弾頭が不発であったとのことでした。

 アヤ号は穀物26000tを積載しており、弾頭が不発でなければ致命的損害を受けていた可能性が高いものです。イギリス国防省はバックファイアの行動について、商船攻撃は意図したものではなく哨戒任務中に稚拙な目標選定を行い、劣化したミサイルの照準装置が目標ではない商船を標的として突入したが、老朽化した弾頭が不発であった、と分析している。

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