■さざなみ台湾海峡航行
緊張度を増す北東アジア情勢について日本はステイクホルダーとしての覚悟を示した構図でしょうか。
海上自衛隊は25日、護衛艦さざなみ、が中国大陸と台湾本島とのあいだにある台湾海峡を航行させたと発表しました。これは南シナ海において行われる多国間訓練に参加する際、台湾海峡を航行したとしています。オーストラリア艦やニュージーランド艦も航行したという。台湾海峡は公海で今回の航行では中国や台湾の接続水域や領海は航行していません。
台湾海峡航行は現場独断のものではなく、政府の方針を受けての実施とされています。この航行について林官房長官は本日午後に行われた記者会見で、一般論として自衛隊の活動は国内法と国際法に則って行われていると述べました。護衛艦さざなみ、たかなみ型護衛艦の4番艦で第4護衛隊群第4護衛隊に所属、呉基地が母港となっています。
さざなみ。艦名と先々代をみますと、もちろん艦名というのは識別のためのものであり特別な意味はないものなのですが、駆逐艦漣の活躍というのを思い出すのですね。駆逐艦漣といいますと、最近ではゲームなどの影響で綾波型駆逐艦の漣を思い出すかたが多いのかもしれませんが、わたしの場合は駆逐艦漣、雷型駆逐艦の漣を思い出すのですね。
雷型駆逐艦漣は1905年の日本海海戦において駆逐艦陽炎とともにバルチック艦隊司令官のロジェストヴェンスキー中将、損傷した旗艦である戦艦クニャージスオロフをおり、駆逐艦によりウラジオストックへ向かうところを捕捉、警戒部隊として追尾し停船を呼びかけるも逃走を図ったため威嚇射撃により停船させ捕虜としたことで知られます。
航行の自由作戦、日本ではこうした名称は使いませんが、アメリカ海軍では1979年より公海上において沿岸国が不当な閉塞や航行制限を行っている海域に対して艦艇を航行させ航行自由を確認する実任務を実施しています。公海上を他国船舶が航行出来ない状況とする事例はありますが、国際法上根拠が無くとも軍事力により閉塞する事例はあります。
シドラ湾事件として航行の自由作戦は摩擦となる事例もあり、1981年にリビアの独裁者カダフィ大佐が地中海南部のシドラ湾全域を自国領海とし、他国船舶が侵入した場合は撃沈する"死の海"と宣言しましたが、アメリカのレーガン大統領は空母ニミッツとフォレスタルを派遣、リビア空軍がSu-22攻撃機で攻撃を試みF-14戦闘機と空戦となりました。
黒海衝突事件として、航行の自由作戦は冷戦時代にも実施されソ連黒海艦隊が航行を事実上制限していた黒海にミサイル巡洋艦ヨークタウンが展開、これを阻止しようとするソ連海軍のフリゲイトが故意に激突し、ヨークタウンの航行を阻止しようとしました。もっともクリヴァク級フリゲイトであり激突するも航行は阻止できていません。
台湾海峡も、国際海峡であることから艦艇であっても航行は自由であり、アメリカ海軍は定期的に航行の自由作戦を実施しています。中国政府は抗議していますが、公開である以上その抗議に正当性も正統性も無く、ただ抗議を繰り返すことで中国艦艇以外の台湾海峡通航を認めない既成事実化を企図する懸念があり、対立構造が形成されています。
中国政府は南西諸島の与那国島と西表島の日本了解接続水域などを国際海峡であるとして、空母遼寧と随伴艦などを通航させたのは9月18日のことでした。この少し前に中国海軍機領空侵犯事件が発生しており、過去中国本土から太平洋に展開する際には日本の接続水域を避け、沖縄本島と宮古島の中間部分を航行していたため、接続水域航行は初めて。
今回の護衛艦台湾海峡航行については、空母遼寧による接続水域航行を中国国防省が公海上であり国際法上問題は無いとしていることから、今回護衛艦は国際海峡を接続水域さえ入ること無く通常航行しただけであることから、明確に中国側による台湾海峡閉塞の既成事実化に対して拒否の一石を投じたといえるのかもしれません。
台湾海峡、重要なのはこの海域に過度な中国側への配慮を続けることは、台湾海峡有事という選択肢を中国政府が検討する際にその障壁が低くなる懸念があるということです。また中国への配慮が必要という反論があり得るのかもしれませんが、中国建国以来配慮を続けたことにより、地域安定化に繋がったという事実は残念ながらありません。
台湾海峡有事の懸念とともに近年中国は南シナ海においても海洋閉塞化を進めており、これを放置することは東南アジア諸国と北東アジア地域を結ぶ海洋がすべて航行できなくなる懸念さえあります。摩擦を引き起こす懸念はあっても、放置することで事態が悪化するよりは、海洋自由原則という国際公序が維持へ、動かねばならないということでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
緊張度を増す北東アジア情勢について日本はステイクホルダーとしての覚悟を示した構図でしょうか。
海上自衛隊は25日、護衛艦さざなみ、が中国大陸と台湾本島とのあいだにある台湾海峡を航行させたと発表しました。これは南シナ海において行われる多国間訓練に参加する際、台湾海峡を航行したとしています。オーストラリア艦やニュージーランド艦も航行したという。台湾海峡は公海で今回の航行では中国や台湾の接続水域や領海は航行していません。
台湾海峡航行は現場独断のものではなく、政府の方針を受けての実施とされています。この航行について林官房長官は本日午後に行われた記者会見で、一般論として自衛隊の活動は国内法と国際法に則って行われていると述べました。護衛艦さざなみ、たかなみ型護衛艦の4番艦で第4護衛隊群第4護衛隊に所属、呉基地が母港となっています。
さざなみ。艦名と先々代をみますと、もちろん艦名というのは識別のためのものであり特別な意味はないものなのですが、駆逐艦漣の活躍というのを思い出すのですね。駆逐艦漣といいますと、最近ではゲームなどの影響で綾波型駆逐艦の漣を思い出すかたが多いのかもしれませんが、わたしの場合は駆逐艦漣、雷型駆逐艦の漣を思い出すのですね。
雷型駆逐艦漣は1905年の日本海海戦において駆逐艦陽炎とともにバルチック艦隊司令官のロジェストヴェンスキー中将、損傷した旗艦である戦艦クニャージスオロフをおり、駆逐艦によりウラジオストックへ向かうところを捕捉、警戒部隊として追尾し停船を呼びかけるも逃走を図ったため威嚇射撃により停船させ捕虜としたことで知られます。
航行の自由作戦、日本ではこうした名称は使いませんが、アメリカ海軍では1979年より公海上において沿岸国が不当な閉塞や航行制限を行っている海域に対して艦艇を航行させ航行自由を確認する実任務を実施しています。公海上を他国船舶が航行出来ない状況とする事例はありますが、国際法上根拠が無くとも軍事力により閉塞する事例はあります。
シドラ湾事件として航行の自由作戦は摩擦となる事例もあり、1981年にリビアの独裁者カダフィ大佐が地中海南部のシドラ湾全域を自国領海とし、他国船舶が侵入した場合は撃沈する"死の海"と宣言しましたが、アメリカのレーガン大統領は空母ニミッツとフォレスタルを派遣、リビア空軍がSu-22攻撃機で攻撃を試みF-14戦闘機と空戦となりました。
黒海衝突事件として、航行の自由作戦は冷戦時代にも実施されソ連黒海艦隊が航行を事実上制限していた黒海にミサイル巡洋艦ヨークタウンが展開、これを阻止しようとするソ連海軍のフリゲイトが故意に激突し、ヨークタウンの航行を阻止しようとしました。もっともクリヴァク級フリゲイトであり激突するも航行は阻止できていません。
台湾海峡も、国際海峡であることから艦艇であっても航行は自由であり、アメリカ海軍は定期的に航行の自由作戦を実施しています。中国政府は抗議していますが、公開である以上その抗議に正当性も正統性も無く、ただ抗議を繰り返すことで中国艦艇以外の台湾海峡通航を認めない既成事実化を企図する懸念があり、対立構造が形成されています。
中国政府は南西諸島の与那国島と西表島の日本了解接続水域などを国際海峡であるとして、空母遼寧と随伴艦などを通航させたのは9月18日のことでした。この少し前に中国海軍機領空侵犯事件が発生しており、過去中国本土から太平洋に展開する際には日本の接続水域を避け、沖縄本島と宮古島の中間部分を航行していたため、接続水域航行は初めて。
今回の護衛艦台湾海峡航行については、空母遼寧による接続水域航行を中国国防省が公海上であり国際法上問題は無いとしていることから、今回護衛艦は国際海峡を接続水域さえ入ること無く通常航行しただけであることから、明確に中国側による台湾海峡閉塞の既成事実化に対して拒否の一石を投じたといえるのかもしれません。
台湾海峡、重要なのはこの海域に過度な中国側への配慮を続けることは、台湾海峡有事という選択肢を中国政府が検討する際にその障壁が低くなる懸念があるということです。また中国への配慮が必要という反論があり得るのかもしれませんが、中国建国以来配慮を続けたことにより、地域安定化に繋がったという事実は残念ながらありません。
台湾海峡有事の懸念とともに近年中国は南シナ海においても海洋閉塞化を進めており、これを放置することは東南アジア諸国と北東アジア地域を結ぶ海洋がすべて航行できなくなる懸念さえあります。摩擦を引き起こす懸念はあっても、放置することで事態が悪化するよりは、海洋自由原則という国際公序が維持へ、動かねばならないということでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)