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【防衛情報】アメリカ海兵隊フォースデザイン2030アップデート発表-LAW軽揚陸艦遅延とMLR海兵沿岸連隊改編

2022-07-04 20:10:28 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 本日はアメリカ独立記念日と云う事ですし真夏の到来ですので海といいますかアメリカ海兵隊の話題です。

 アメリカ海兵隊は2022年5月9日にフォースデザイン2030アップデートを公開、進められているフォースデザイン2030海兵隊改革に関する途中経過及び軌道修正等が記されています、この中で一つ問題視されているのが情報優位の維持に関するもので、海兵隊は島嶼部戦を勝利する為には島嶼部周辺における敵対勢力の情報収集手段不足を痛感している。

 フォースデザイン2030海兵隊改革では海兵隊は伝統的な重装備であるM-1A1戦車の全廃やAAV-7両用強襲車と後継装備の縮小、M-777榴弾砲の縮小を掲げつつ、これまでよりも遥かに射程が長いNSM海軍打撃ミサイル等を装備しますが、索敵用に無人機の増強等は掲げているものの、NSMは射程でM-777の十倍以上あり、索敵範囲の次元が違うのです。

 RXR偵察及び対偵察能力が、フォースデザイン2030アップデートにおいて指摘されている点で、例えば防衛する島嶼部周辺に敵潜水艦などが接近した場合、海兵隊はソナーを装備しない為に発見する手段が無いと指摘しています。またこのほか、海兵隊では徘徊式弾薬や歩兵と砲兵の通信能力強化なども重要な課題として挙げられ、具体策を模索中です。
■MEUからMLRへ
 MEU海兵遠征群からMLR海兵沿岸連隊への転換は既に始まっているのです。

 アメリカ海兵隊は第3海兵連隊による3月にフィリピンバリカタン演習においてMLR海兵沿岸連隊の評価試験演習を実施しました。第3海兵沿岸連隊へ改編された事を受け連隊長のティムブレイディ大佐は、MLRについて、従来の歩兵連隊とはかなり異なる戦闘が可能となり、広範囲にわたり敵に対して極めて高い効果を発揮出来る編成だ、としています。

 MLR海兵沿岸連隊は従来のMEU海兵遠征群のような水陸両用作戦主体の編成からの脱却を図ったもので、MEUは機能別中隊より成る海兵大隊を中心に海兵軽装甲偵察中隊や戦車小隊と砲兵中隊、この編成の部隊へ海兵航空部隊を加えMV-22可動翼機やF-35戦闘機とAH-1Z戦闘ヘリコプターにより海軍揚陸艦を通じ迅速に緊急展開するという編成でした。

 地対艦ミサイルと地対空ミサイルに警備の歩兵部隊を加える、これがMLRの骨子であり、いわばMEUが島嶼部を奪還する目的の編成であるのに対し、MLRは島嶼部を執られないようにするもの。この演習ではルソン島北部のルソン海峡に面した地域が用いられ、台湾南方海域からの太平洋への脅威展開に対する実地訓練の性質も有する演習といえましょう。
■LAW計画遅延
 LAWというと新しいもののように聞こえますが要するに第二次大戦中のLST-1型の焼き直しにもみえるのです。

 アメリカ海兵隊はLAW軽揚陸艦計画の具体化が大きく遅れており暫定案を検討中とのこと。LAW軽揚陸艦計画とは上陸任務ではなく敵対勢力の存在しない海岸への輸送を想定した揚陸用のもので、従来アメリカ海軍が遠征打撃群として整備したドック型揚陸艦や輸送揚陸艦よりもかなり小型となっており、ある種陸軍車両輸送艦近いものとなっています。

 フォースデザイン2030海兵隊改革として、従来の敵前上陸よりも敵に先んじ部隊を揚陸させる海兵沿岸連隊の輸送用として想定され、全長は67mから130m、満載排水量は最大4000t、速力は14ノットから15ノットで航続距離は3500浬、乗員は40名程度で車両の他に海兵隊員75名程度を輸送するというもの、構想段階では船型等は未定となっている。

 LAW軽揚陸艦計画は当初案では2023会計年度にも一番艦が要求される計画でしたが、肝心の船型がLST戦車揚陸艦型か近海フェリー型かが未定のままであり、このままでは建造も出来無いとし、先ず当面は2025年とし、当面は暫定案として機動揚陸プラットフォームミゲルギースを活用する試案があり、これは既に2021年の米比合同演習で試験されました。
■MQ-9-STOL
 MV-22も凄い航空機でしたが可能性としてMQ-9が護衛する時代も到来するのでしょうか。

 アメリカのGA-ASI社は空母からも発着可能なMQ-9-STOLの開発を発表しました。航空母艦の他にアメリカ海軍が運用している強襲揚陸艦からの運用も可能とされています。MQ-9は全幅20mの滞空型無人機でハネウェルTPE331-10Tターボプロップエンジンを搭載し最大28時間の滞空能力をもち、1700kgまでの各種センサーや兵装を搭載可能です。

 GA-ASI社によればMQ-9-STOLは既存MQ-9へ24時間で追加可能なSTOLキットとして開発され、現在標準のMQ-9Bを運用しているならば、そのまま艦載機へ転用可能で、発進にはカタパルトを用いず短距離滑走します、その追加キットは主翼部分と尾翼部分から構成されるとのこと。同社によればアメリカ海軍とアメリカ海兵隊が注目しているとのこと。

 MQ-9は極めて高いISR偵察監視情報収集能力を持つと共にJDAM精密誘導爆弾やAIM-9X空対空ミサイルも搭載可能で、高い対地攻撃能力や自衛空対空戦闘能力を持つと共に2020年からはソノブイとデータリンク装置を用いた対潜哨戒能力の試験も開始、ただ航続距離は5900kmで運用は飛行場が必要でした。STOL型の航続距離への影響は不明です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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