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サハリン2プロジェクト日本資本接収大統領令とウクライナ東部二州最後の要衝リシチャンスクへの攻撃を強化

2022-07-04 07:00:40 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 台風により一時的に和らいだもののこの猛暑もロシアには日本へ揺さぶりを掛けるウクライナ情勢の一要素なのでしょうか。

 サハリン2の日本出資施設を接収する大統領令をプーチン大統領が署名しました、三井物産や三菱商事が全体事業の32.5%を出資していますが、無償譲渡を命じるものです。これに対して日本政府が説明を求めましたが、ロシア大統領府は接収が可能となっただけで接収を行う訳ではないという説明を行い、参戦国でも武器供与国でも無い日本への圧力です。

 サハリン2は液化天然ガスを日本へ供給しており、今回のロシアからの圧力は記録的猛暑による電力不足、そして資源価格高騰と電力不足による製造能力低下を受け、歴史的円安という混乱に見舞われる日本への、G7先進七か国一員からの切り崩しに、古典的な資源外交を展開している構図です。シーレーンさえ防衛できれば、という前提を崩した状況です。

 ロシア軍はウクライナ東部二州最後の要衝リシチャンスクへの攻撃を強化、ウクライナ大統領府のアレストビッチ報道官はリシチャンスク陥落の可能性を否定しなかった事からさまざまな憶測が広がっています、リシチャンスクとはドネツ川を挟んで対岸のセヴェロドネツクは既に6月に失陥しており、ウクライナ軍は損耗を避け後退を強いられています。

 セヴェロドネツクに続いてリシチャンスクでの苦戦、これまでウクライナ軍はロシア軍に対し苦戦しつつも優位を保っている様に見えましたが何が起こっているのか、その視点を説明する際に用いられるのは両翼包囲です。如何なる新戦術かと思われるかも知れませんが、紀元前216年にかの知将ハンニバルがカンネーでローマ軍に用いた事例の発展です。

 リシチャンスクでもセヴェロドネツクでも、ロシア軍は火砲の数に物を言わせて慎重な戦術を展開しています、通常包囲を受けそうになった側は鉤形陣や側面に逆襲部隊を展開させますが、この機動をロシア軍は砲撃で阻止し、圧迫する様に市街地からウクライナ軍を排除、踏みとどまれば全周包囲され殲滅させられる為、他に選択肢が無いという状況です。

 両翼包囲を回避するには、敵砲兵部隊を砲兵機動運用により一点集中で運用し対砲兵戦を展開するか航空攻撃で逆に殲滅する、若しくは機械化部隊により両翼包囲を逆に迂回機動で側面を突く方策がありますが、砲兵でも航空戦力でも劣勢のウクライナ軍には実行不可能、故にウクライナ政府はHIMARSを48両、具体的数字として供与要請しているのです。

 ウクライナでの現状は、改めて機械化部隊と特科火力の重要性を端的に示したものといえるかもしれません。特科火力については自衛隊は現在大きく削減中であり、見直しの必要性を感じるとともに機械化部隊は元々装甲車が少なく、戦車も本州からは教育部隊以外全廃の方向で削減中です。ウクライナの状況はこうした現実を突き付けているようおもえてなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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