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【京都幕間旅情】等持院,夏の禅寺に感じ入る七月のお盆の季節と盂蘭盆語源はウルヴァンの遠きに思い馳せる

2022-07-20 20:21:38 | 写真
■お盆ですねと呟く
 季節を示す祭事や単語というものは数多あれど宗派により若干時期が異なるところもある。

 京都市北区等持院北町、ここは日本一の栄華を極めた室町時代の北山文化、その基点となる寺院があります。そして金閣寺こと鹿苑寺を筆頭に華やかさで知られる北山文化は多くの観光客を今も惹きつけますが、住宅街と大学に囲まれ静かで、ここは等持院という。

 静けさと共に寺院というものを感じ入るには、この等持院は一つの穴場ではないかな、そう思う時が在ります。勿論静かな場所は数多あるのでしょうけれども、室町将軍が眠る歴史的な寺院であるうえに、賑やかすぎない静けさを愉しむ、いやこれは窘める、のですね。

 等持院、室町幕府を開府した足利尊氏が開基となり開山に夢窓疎石を招き暦応2年こと西暦1341年に創建となりました臨済宗の禅寺です、此処はその後に足利将軍家の菩提寺となり一時は広大な寺域を有した往時は、静けさという現代の贅沢を湛え今日に伝えています。

 お盆ですね、こうつぶやきますともう少し先ではないかという反応が戻ってきそうですが、禅宗の早盆は七月なのです、どうも京都のお盆といいますと五山送り火という印象が強い様で、しかし禅寺多い京都なのですからお盆というものをもう少し広く見て欲しいと思う。

 盂蘭盆という言葉、あらゆる御霊を供養するという意味なのですが、盂蘭盆という言葉も遡ればやはりといいますか仏教用語ですのでサンスクリット語に至るのですが、ウランバナというサンスクリット語にたどり着くのです。しかしその意味を見ますと案外にと驚く。

 ウランバナとはサンスクリット語では逆さづりの苦しみという意味です、これは要するに戻る御霊を意味するのかと思い詳しい方に聞いてみますと、そういう訳でもなく、逆さづりになって亡くなった亡者を供養する、という意味であるようです。中々に意味合い凄い。

 ウルヴァン、ただ盂蘭盆という単語は飛鳥時代に日本に伝来した概念だといい、ウランバナはその後の語源研究の際にサンスクリット語ではないかとの視点から導きだされた言葉とも言いまして、盂蘭盆の語源はもう一つ、古代ペルシャのウルヴァンが語源では、とも。

 ペルシャと日本ではシルクロードの終着点が奈良ともいわれているので、語源は重なるのでしょうが、この古代ペルシャ語のウルヴァンは霊魂という意味を持つという。仏教とは若干基点を何時にしまして不思議に思いますが、盂蘭盆の意味としてはしっくり来ますね。

 ゾロアスター教など火を拝むペルシャの古い信仰は、カグツチはじめ日本の火への信仰にも重なるものなのですが、日本の場合は天孫降臨の地が巨大火山の麓という事もあり、仄かな日よりは水爆をも凌駕するカルデラ火山、意味は違えど神秘主義とも言い換えられる。

 斉明天皇3年こと西暦657年、日本で盂蘭盆の行事が行われたのは千年を遥かに遡る飛鳥時代、宮中行事として執り行われたのが最初の祭事といいまして、その後の毎年の行事となっています。そしてその後の百年間ほどで、先祖を供養する行事として広まりました。

 祖霊信仰と仏教が融合した祭事とも呼ばれるのですが、大陸の方を見ますと同郷の文化が色濃く残りまして、この季節は別の見方が為されています。旧暦の七月は鬼月、旧暦の七月朔日に地獄の蓋が開くという。そして7月15日の中元節には地獄の蓋が閉じるという。

 大陸と我が国では価値観が若干異なるようですが、日本御伝統的信仰と仏教と、そして遥か西方の文化とが不思議な調和を果たしたものが、この季節という。お盆、いまや八月という印象ですが、七月のお盆、禅宗のお盆という季節を感じるには、禅寺の風情は、よい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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