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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】中国空母遼寧戦闘群太平洋へ!揚陸艦海南&駆逐艦大連&戦略原潜長征18号竣工

2021-05-04 20:02:51 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 中国海軍の動向に世界の耳目が集まっていますが、今回は晴海埠頭を親善訪問した052D型駆逐艦太原の写真とともにこの話題について。

 中国海軍の増強は近年著しく、という表現は2000年代はじめから用いられているものですが、そのまま増強の度合いは水上戦闘艦の大型化や航空母艦の建造、潜水艦核戦力の増強と著しく、更にその海軍力を海洋自由原則の国際公序に資するものではなく海洋閉塞化や周辺国領域の併合に用いる事で緊張が増大しています。今回はその状況をまとめました。
■遼寧空母戦闘群の編成
 中国海軍空母機動部隊の編成について興味深い発表が我が国防衛省よりありました。

 防衛省は4月27日、中国海軍の空母遼寧機動部隊が26日に宮古海峡を通峡したと発表しました。機動部隊の編成は空母遼寧、最新の055型駆逐艦1隻、052D型駆逐艦2隻、054A型フリゲイト1隻、901A型補給艦1隻、合計6隻となっています。中国海軍の空母量産は続いており、遼寧の6隻、これは中国海軍機動部隊の一般的編成となるのでしょう。

 遼寧からはZ-18早期警戒ヘリコプターの発艦が確認され、このZ-18はそのまま尖閣諸島北方50kmの空域を飛行しましたが領空侵犯には至っていません、055型駆逐艦は巡洋艦に区分される一万t級のミサイル駆逐艦です。また艦隊はそのまま太平洋を経て東シナ海へ展開したと発表されていますが、日本領海への領海侵犯などは発生しませんでした。
■初の強襲揚陸艦海南竣工
 初の強襲揚陸艦が竣工し艦名が海南であると発表されました。

 中国海軍は初の075型強襲揚陸艦海南を竣工させました。これは4月23日に習近平国家主席臨席のもとで実施され艦名が公表されています。075型強襲揚陸艦は全通飛行甲板を有する強襲揚陸艦でアメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦と並ぶ航空機運用能力を有しています。中国海軍は海軍歩兵を含む水陸両用作戦能力を異様な速度で前進させている最中です。

 075型強襲揚陸艦は全通飛行甲板を有し、ヘリコプター数十機を同時に運用する事が可能で、また将来的にハリアーやYak-38,F-35BやYak-141のような垂直発着可能な航空機を開発する事が出来れば、両用作戦への航空支援強化や、補助空母的に運用する事も可能となりますが、現在のところ中国海軍にはこのようなSTOVL航空機の開発は発表されていません。
■055型駆逐艦大連竣工
 海南と同日に中国海軍は大型駆逐艦を竣工させています。

 中国海軍は055型駆逐艦大連を竣工させました、055型駆逐艦は南昌級駆逐艦ともされ、満載排水量13000tと非常に大型でアメリカ国防総省は巡洋艦に区分、アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦に大きさで並ぶと共に、アメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦や海上自衛隊のミサイル護衛艦まや型よりも大型の水上戦闘艦となっています。

 大連竣工は4月23日に習近平国家主席臨席のもとで実施され艦名が公表されており、この式典は075型強襲揚陸艦海南の式典会場に隣接し実施されています。建造は大連船舶重工集団、一番艦南昌は2020年1月12日に竣工、また二番艦ラサは3月2日に竣工しており、この竣工の間隔は二ヶ月弱となっていますが、中国では大連進水式と同時に行われている。

 055型駆逐艦は現在8番艦までが連続して建造されており、大連進水式は2018年、そして2019年には大連船舶重工集団と江南造船において各1隻が、2020年にも大連船舶重工集団と江南造船において各1隻と進水式を迎えています。中国海軍では055型駆逐艦を航空母艦護衛用の重要な水上打撃力及び艦隊防空戦力と位置づけ、その量産を進めています。
■戦略ミサイル原潜長征18号
 中国海軍は新しい戦略ミサイル原潜を竣工させました、強力な核弾頭を120発搭載します。

 中国海軍最新鋭の094型戦略原子力潜水艦新造艦長征18号の竣工行事が海南島の三亜基地において実施されました。式典は海南、大連の竣工会場に隣接、094型戦略原子力潜水艦は晋級戦略ミサイル原潜としても知られる最新の戦略ミサイル原潜で、水中排水量12000t、長征18号は渤海造船所において建造されていた094型戦略原子力潜水艦の7番艦です。

 094型戦略原子力潜水艦は一番艦が2007年に竣工、2009年と2011年及び2012年に竣工していますが、その後2020年に2隻が相次ぎ竣工、今回7番艦が竣工しました。これらの各艦には、JL-2潜水艦発射弾道弾を12発搭載、これは射程8000kmで弾頭には10発を搭載する多弾頭型核ミサイルであり、中国海軍は核戦力の増強を大車輪で進めている最中だ。

 中国政府は自国が保有する核戦力を核軍縮会議などの席上で200発程度としていますが、094型戦略原子力潜水艦一隻で120発の核弾頭を搭載可能、7隻の094型戦略原子力潜水艦には840発を搭載可能です、この他アメリカを射程とする大陸間弾道弾は100発、日本やロシアを射程とする中距離核戦力は更に多く、中国の核兵器は四次元にあるようです。
■比島沖の022型ミサイル艇集団
 大型水上戦闘艦もさることながら小型艦艇の大量運用も大きな関心事といえるでしょう。

 中国海軍は南シナ海へ022型双胴ミサイル艇の集中配備を開始している、フィリピン国内報道ABSが報じました。これは3月下旬からフィリピン近海に漁労作業を行わず晴天下で台風避泊を行う中国漁船団への報道と共に行われました。022型双胴ミサイル艇は紅稗型ミサイル艇ともいい、2005年より7年間で83隻という大量建造が行われた事で知られる。

 022型双胴ミサイル艇の満載排水量は220tで海上自衛隊のミサイル艇はやぶさ型よりは小型となっていますが、はやぶさ型ミサイル艇が設計要求の時点で双胴船を想定していましたので、興味深い対象といえるでしょう。全長は43 mで建造に当ってはその設計に際し、双胴船の建造実績で知られるオーストラリアのインキャット社が協力したとされています。

 022型双胴ミサイル艇はウォータージェット推進により速力50ノットと高い速力を発揮し、YJ-83対艦ミサイル8発と30mm機関砲AK-630等を搭載し乗員は14名となっています。ミサイル艇は哨戒ヘリコプターや大型水上戦闘艦に対し防空能力の低さから一方的に駆逐される存在ですが、フリゲイトを充分保有できない中小国の海軍にとって大きな脅威です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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