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【京都幕間旅情】平等院鳳凰堂,国宝御堂に関白藤原頼通の願いと宇治巡る平等院一千年の歴史

2020-11-18 20:20:53 | 写真
■鳳凰堂に西方極楽浄土再現
 平等院鳳凰堂、こう一つに示される背景には歴史の流れと共に平等院が至りました道程と奇跡的に現存する鳳凰堂の妙が、あるのかもしれません。

 平等院。平安朝の頃より別荘として数多貴人や天皇に愛された邸宅は藤原道長の子、関白藤原頼通は宇治殿を受け継がれています。しかし、永承7年こと西暦1052年、末法の世が到来したと考えられるようになった世相をうけ、多くの貴族が寺院造営に邁進しました。

 飛鳥時代に伝来しました仏教は、もともと現世での救済を求めるものではあったのですが、平安朝も後期となりますと、日本では末法思想が広く信じられるようになってゆきます。貴人は極楽往生を期し西方極楽浄土に至る阿弥陀如来を報じた寺院を盛んに造営した。

 末法思想とは釈迦入滅より二千年削経ての後は仏教が廃れるという思想でした。しかし、仏教が廃れた頃合いの日本にて天災人災が続き、多くの民衆や貴族は末法とともに世界が終焉を迎えるのではないかとの終末論的思想に転化し、1999年の日本のような状態へ。

 鳳凰堂は天喜元年の西暦1053年に建立された阿弥陀堂、堂内の阿弥陀仏と壁扉画や供養菩薩像、周囲の池内庭園は西方極楽浄土を観想するべく現世に極楽浄土を再現したという。鳳凰堂は中堂、北翼廊、南翼廊、尾廊の 4棟より成り一重裳階付壇上積基壇構造という。

 平等院最盛期には宇治川の近くに本堂の金堂と講堂を有し釣殿が宇治川に突出し、鳳凰堂のさらに東には小御所として天皇や上皇を迎える堂宇を有し多宝塔が藤原頼通の娘である四条宮寛子により康平4年こと1061年に造営されていましたが、全て焼失しています。

 明尊。開山明尊は小野道風の孫として幼少時からに園城寺三井寺に入り、当時の高僧余慶より顕教密教2教を学び、慶祚からその奥義を伝授されまして、円満院に住して園城寺法務を兼ね僧正まで至っています。その最中に関白藤原頼通とこう不思議な縁を結びました。

 明尊が園城寺法務と天台座主の頃、長暦年間西暦1039年、関白藤原頼通に強訴したことで朝廷との関係が悪化し三井寺を出る事となります。しかし藤原頼通との関係が生まれた事で平等院の開山に招かれ、その翌年の天喜元年1053年には牛車を許されることとなります。

 藤原頼通との所縁もあり明尊が平等院検校に任じられたのはその翌1054年、そして頼通は康平3年の西暦1060年に明尊90歳の奉祝行事も行っています。今から1000年近く昔の話ではありますが。なお、末法思想の頃、故合って洛中洛外は急造寺院で溢れていました。

 藤原道長は寛無量寿院法成寺、白河天皇勅願の六勝寺として法勝寺と尊勝寺に最勝寺と円勝寺と成勝寺そして延勝寺、左京区岡崎あたりに続々と造営され、末法の後の安寧を願ったのですが、思いは何処かへ、平等院以外のこの時期の寺院は全て廃寺となり今に至る。

 平等院も上記の園城寺の末寺であり藤原氏所縁の寺院として栄華を誇りましたが、南北朝時代の建武3年の1336年に足利尊氏と楠木正成の合戦に巻き込まれ、鳳凰堂以外全ての伽藍を焼失、室町時代園城寺の院家である円満院院主が平等院の住職を兼ねる古寺となった。

 園城寺三井寺との関係も江戸時代の頃には絶たれてしまい、いまは単立寺院となっています。寺域には鳳凰堂とともに観音堂と浄土院、養林庵書院に最勝院不動堂そして最勝院庫裏と並んでいまして、琵琶湖から続く宇治川の流れがふと冷たい歴史を慰めるようです。

 鳳翔館として、しかし貴重な仏教美術の仏像は確実な環境とともに今も多くの拝観者に深い世界観の神髄を伝えていまして、先ごろから戻り始めました修学旅行生の雑踏と数多かつての修学旅行生たちの落ち着いた歩みとともに、静かに平等院は明日も此処に在ります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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