北大路機関

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くまの(FFM-2)三井E&S造船で命名式,3900t型護衛艦30FFM二番艦は重巡洋艦熊野を継承

2020-11-19 20:07:18 | 先端軍事テクノロジー
■FFM多機能護衛艦は河川名
 ごきげんよう!神戸の隣の岡山生まれのお洒落な多機能護衛艦の名は”くまの”ですわ。さて、いいかな。現地へはいけませんでしたので三菱長崎の写真等と共に。

 30FFMとして建造されていました平成30年度護衛艦二番艦が本日命名式と進水式を挙行、艦名は護衛艦くまの、となりました。3900t型護衛艦の2番艦で三井E&S造船にて建造されていた護衛艦です。DD,DE,海上自衛隊の護衛艦は艦隊駆逐艦のDDと護衛駆逐艦を示すDEと建造されてきましたが、今回のFFMは多機能フリゲイトを示す新艦種となりました。写真は大昔撮影の、あきづき建造中の様子だ。

 FFM。FFとはフリゲイトを示す区分ですが、Mは多機能を示すものであるとともに機雷戦を示すものでもあり、高度なステルス性を有する船体には護衛艦として対水上や対潜と対空の各種任務や領域警備とともに無人機雷戦装備による機雷戦への対処能力が盛り込まれており、護衛艦を置き換えるとともに一部の掃海艇をも置き換える野心的な護衛艦です。

 くまの。海上自衛隊が護衛艦くまの、を命名するのは今回が初めてではなく、過去には護衛艦ちくご型10番艦として1975年に進水式を迎えています。就役は1975年で2001年まで現役、FFMくまの命名は実に19年ぶりに護衛艦くまの、海上自衛隊へ戻ってきたこととなります。先代は基準排水量1500t、今回3900t、いやはや護衛艦も大きくなったものだ。

 熊野。護衛艦くまの、三重県の熊野川が由来の命名ですが、日本が艦艇に熊野を冠するのは今回のFFMくまの、が三代目となります。最初の熊野は重巡洋艦熊野、1936年に命名され1937年竣工、基準排水量12000tの最新鋭巡洋艦として太平洋戦争に臨み緒戦のマレー作戦やミッドウェー海戦、レイテ沖海戦に参加、1944年11月25日に撃沈されています。

 くまの型、ではなく本日進水式を迎えたのは二番艦、一番艦は未だ命名式を迎えていません。実はこれには理由がありまして、一番艦は三菱重工長崎工場にて建造されていますが、機関部搭載に際し付記事項があった関係から建造が遅延し、先に二番艦が進水式を迎えました事情があります。一番艦の命名も今後数週間以内には長崎で行われることでしょう。

 ちくご型護衛艦くまの、の名を継ぐFFMくまの。実は多少、無関係ではないのかもしれません。ちくご型護衛艦は第三次防衛力整備計画を中心に大量建造され、実に11隻が竣工しています。当初は更に多数を建造する計画でしたが6番艦ちとせ、が竣工した1973年に第四次中東戦争勃発、石油危機による戦後初の大不況に陥り、建造計画が縮小された過去が。

 艦隊には数が必要だ、ということで3900t型護衛艦は大量建造されます。毎年2隻を建造する、という念頭で抑えられる部分を徹底してコスト管理した設計といい、この成果があって建造費は500億円以下の470億円程度、前型といえる護衛艦しらぬい建造費の729億円よりもかなり建造費を抑えられています。ちくご型のように大量建造する計画で、旧型の護衛艦などを置き換えるべく20隻以上建造される。

 むらさめ型、こんごう型からの脱却、FFMくまの、は海上自衛隊護衛艦建造における大きな転換点ともなる護衛艦です。こういいますのも、現在、護衛艦隊に配備されている護衛艦は全通飛行甲板型護衛艦というべきヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型、いずも型を除けば、汎用護衛艦はすべて護衛艦むらさめ型、そしてミサイル護衛艦こんごう型派生です。

 たかなみ型、あきづき型、あさひ型、と汎用護衛艦はこの、むらさめ型の他に多種多様な名前が並ぶのですが、基本構造として機関配置や丈夫構造物レイアウトは、むらさめ型拡大改良型であり、例えば護衛艦あきづき型などは当初19DDと呼ばれていた頃には思い切ったステルス設計が構想されていたものの設計費の節約から現状のものとなっています。

 こんごう型につきましても、あたご型、まや型、まや呉初入港ということで話題になっていますが、この3型はすべてミサイル護衛艦こんごう型の改良型となっています。あたご型は当初思い切って6000t規模にコンパクト化し建造費用を抑える試みがありましたが、再設計した場合はかえって建造費が高くなるため、こんごう型派生型となった背景が。

 FFMとして建造される護衛艦は上記の通りFFMという新しい用途に用いる護衛艦であるため、完全に一から設計されています。この為に卓越したステルス性への配慮が可能となり、これまでの護衛艦から外見を一新することとなっています。これに併せて、でしょうか、艦番号は2、これまで戦闘艦の三桁の艦番号、支援艦の四桁、とは一新しているという。

 すずや。一番艦あたりにロシアに強い姿勢を示すべく樺太の河川名鈴谷を用いた初代熊野姉妹艦の継承したようにみせて、いや能登半島の鈴屋川ですよ、という艦名を期待したいところですが、なにしろ3番艦と4番艦も長崎で建造が進められています。くまの、は掃海隊群を拡大改編した艦隊に配備、2022年に就役する予定となっています。楽しみですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3 コメント

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Unknown (成層圏)
2020-11-19 23:13:02
FFM2くまの、配備が楽しみですね。
四年で8隻増えるのは頼もしい限りです。
できれば5,6番艦は船尾を20m程延長し、ヘリ3機搭載タイプになって欲しいです。(はるな型みたいに)
なぜなら、いずも型は今年と25年度、かがは24年度改修、その間はひゅうが型中心ですが、やはり数が少ない。
次期掃海母艦は強襲揚陸艦らしいですが、これもどんなに早くても27年度。
その上、海自は背取り監視や海外派遣、南西諸島の警備、海外との共同演習と船が足りません。
護衛無しのヘリコプター搭載型護衛艦は必須です。3機積めれば、離島奪還用の攻撃ヘリや輸送ヘリも搭載できます。
これなら、工期も三年と早く、予算も+100億円位で済むでしょう。願望ですが、。
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その手があったか (mori)
2020-11-20 19:40:28
「くまの」と命名されたなら、当然もう1隻は「すずや」だな! と進水式のニュースを聞いたときに反射的に思いましたが、良く考えたら日本領土じゃなくなった場所の名前は付けられないか、と思い直しましたが、「鈴屋川」という手がありましたか。
これをきっかけに、現在の海上自衛隊にはない最上型の名前が復活するといいですね。
将来的に軽空母にするのはさすがに無理でしょうけど。
返信する
Unknown (ねこまんま)
2020-11-21 20:18:04
FFM2(2)「くまの」はとんがり帽子を被った護衛艦と言ったイメージですね。次は艤装後の姿が楽しみです。
FFMと言いながら、先日に除籍になった護衛艦(あさゆき)と比べても、大きいですね。
一時はDEの後継との話しもあったので、寂しく感じます。

今後、建造?される哨戒艦のように、隻数制限枠外で、陸上を支援する補助艦艇や、商船護衛用の海防艦艇などが、登場して欲しいです。
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