◆導入検討を大綱盛り込み、曖昧な表現
尖閣諸島防衛に関する連載に続く新特集として考えている防衛大綱に関する特集ですが、泥縄式に始まっています。
政府は年度末に画定する新しい防衛計画の大綱へ、高高度滞空型無人機の導入検討を盛り込む方針で検討している、読売新聞が報じました。この高高度滞空型無人機の導入案は、数年前より出ては消え、出ては音沙汰なしが続いていたものなのですが、今回は明確に防衛計画の大綱へ導入検討を正式に盛り込む模様です。
盛り込む模様、という表現がやはり曖昧模糊としていますが、数十時間を滞空し、旅客機の巡航高度よりも高高度から監視する無人航空機の必要性は、特に南西諸島の警戒に際し、P-3C哨戒機やE-2C早期警戒機を常時警戒に充てるには能力的な限界があるため、その必要性は前々より説かれていました。
高高度滞空型無人機については、技術研究本部が日本独自のものに関する基礎研究を進めており、一方で米国製RQ-4グローバルホークの導入も併せて検討されているとされますが、高高度滞空型無人機は技術研究の段階であり、実用的な航空機は見渡せる範囲内の期間では完成の目処が立っていません。
対して、RQ-4については、機体単価についてもさることながら地上の情報伝送設備などの整備費用が機体よりも桁違いに高い費用を要し、実際問題、その費用を何処が負担するのかにより、例えば早期警戒機などの整備費用や哨戒機などの整備費用を大きく食い込まれる可能性がありますので、一筋縄ではいかないでしょう。
特に米軍においても緊縮財政下では高高度無人機よりは従来型の有人偵察機の低い運用費用に注視する動きもあり、ただでさえ防衛費が不足している我が国では、むしろRQ-1のような機体、アフガニスタンでは悪天候などの理由で相当数が墜落しているようですが、取得費用を抑えた装備品の方が現実的かもしれません。
併せて無人機は現在転換期にあり、高高度滞空型無人機は平時の経空脅威に対して十分に対応できるものの有事の経空脅威状況下では非常に運用が制約されるため、近年、米軍のX-47Bをはじめとしてステルス性を有し、一定の脅威状況下でも運用可能な航空機が開発中、時代は転換期を迎えました。
予算が削減され、厳しい状況下ではありますが、昨日の海兵隊創設や本日の高高度無人機など、新装備目白押しではある一方で、装備を導入しても均衡が崩れれば防衛力は破綻してしまうため、それを担保する防衛予算をいかに確保するかも、防衛大綱に盛り込まれなければ実現できません。
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