goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省、新艦載機F-35Bを検討 22DDH・ひゅうが型護衛艦の軽空母運用任務も視野

2013-07-14 23:54:55 | 防衛・安全保障

◆垂直離着陸機導入は2020年代半ば以降目処

 垂直離着陸が可能なF-35B戦闘機について、FNNニュースによれば、防衛省は2020年代半ば以降に艦載機としての導入を検討している、とのこと。

Avimg_4020 記事によればF-35Bは垂直離着陸が可能であるため、短い滑走路や全通飛行甲板型護衛艦からの運用が可能、と説明されていますが、艦載機として導入する、とありますので、海上自衛隊の航空集団への配備を示しているのでしょう。F-35Bは軽空母運用国を中心に艦載機運用も行われる方向で調整されているもの。

Avimg_4038 FNNはフジサンケイグループであり、産経新聞はF-35への否定的記事や短距離弾道弾導入検討などの飛ばし報道で知られるため、今回も一概に検討がどの程度の検討であるかは未知数ではありますが、全通飛行甲板を採用した、ひゅうが型護衛艦の建造以来、F-35BやAV-8Bなどの固定翼航空機導入の可能性は考えられてきました。

Img_2632 航空自衛隊は次期戦闘機としてF-35A戦闘機の採用を決定し、三沢基地への配備に向け導入準備を進めていますが、F-35Aが従来の戦闘機と同じ滑走路を用いて発着する航空機であるのに対し、F-35Bは強襲揚陸艦などでの垂直離着陸や短距離離着艦を想定しているため、海上自衛隊の護衛艦でも運用は可能です。

Iimg_2562 F-35Bは米海兵隊が2017年には岩国航空基地へ配備する方針が示されており、在沖米軍の支援に当たる佐世保基地の強襲揚陸艦ボノムリシャール艦載機となるほか、横須賀基地を母港とする空母ジョージワシントン艦載機へも空母完済型のF-35Cが配備されることとなっています。

Gimg_86371 海上自衛隊へF-35Bが導入された場合、現在運用中の全通飛行甲板型護衛案ひゅうが、いせ、そして従来型ヘリコプター搭載護衛艦しらね、くらま、の後継として建造される19500t型護衛艦二隻により置き換えられ、結果的に2017年までに揃う四隻の全通飛行甲板型護衛艦へ搭載されることでしょう。

Avimg_8040 ただ、前述の通りニュースソースが不明確で、これを以てF-35Bが海上自衛隊へ配備されるという確証には至りませんが、その反面、海上自衛隊ではかなり長い期間に渡り航空母艦の導入計画を検討し、艦載機の導入についても模索を行ってきました、即ち驚くには値しないわけです。

Avimg_0953 海上自衛隊は過去に、F-86戦闘機の洋上偵察用導入案、F-8戦闘機と中古米国空母取得検討、航空自衛隊のF-4EJ戦闘機の高速洋上哨戒機案、RF-4偵察機導入案、様々な検討が為されてきました。特に高速洋上哨戒機案は、赤外線感知装置と磁気探知装置を搭載し浮上航行中の原潜を超音速でロケット弾攻撃により撃破するという、本当は何に使いたいのか、という検討が為されてきているものです。

Gimg_2725 母艦も、海上自衛隊創設以前の護衛空母導入計画、第一次防衛力整備計画時の原子力ヘリコプター指揮巡洋艦構想、ヘリコプター空母建造案、第二次防衛力整備計画のS-2固定翼哨戒機搭載対潜空母案、第三次防衛力整備計画の5000t型全通飛行甲板型護衛艦案、が検討されましたが、これは、はるな型護衛艦として実現したもの。

Eimg_9284 第四次防衛力整備計画の8300t型ヘリコプター巡洋艦・8000t型ミサイル巡洋艦による巡洋艦隊案と続きます巡洋艦隊案は、8700t型全通飛行甲板型護衛艦案へ転換され、特に8700t型全通飛行甲板型護衛艦はハリアー搭載巡洋艦を意図していたとされるのですが、更に検討の末、しらね型護衛艦として実現しています。

Avimg_9956 その後、海上自衛隊では、固定翼哨戒機や標的曳航機としてAV-8ハリアーの導入が幾度か検討され、中期業務見積時代には15000t型全通飛行甲板式大型艦へハリアーと早期警戒ヘリコプターの導入を検討していたとの報道も過去になされました。また、自民党国防部会では護衛艦隊の七個護衛隊群拡大案と共にシャルルドゴール級に範を採った空母の検討を行う可否も討議はされたといわれます。

Avimg_8038 ただ、ハリアー一個飛行隊分の費用と同程度であるイージスシステムの導入が優先され、ハリアーの自衛隊導入は実現していません。あつみ型輸送艦代替案に15000t型輸送艦という案もあったようですが流石に実現せず8900t型の輸送艦おおすみ型として落ち着いています。

Gimg_4494 13500t型護衛艦として、ひゅうが型護衛艦二隻が実現したのは、これまでの大きな流れがあったためであり、洋上防空や航空打撃力等の面でこれら全通飛行甲板型護衛艦へ、航空機を搭載しよう、という流れは遅かれ早かれ、というものではあるけれども、ある意味当然の帰結だったのかもしれません。

Kimg_7687 洋上防空には陸上基地からの航空優勢確保やイージス艦による十分な防空能力、という反論はありますが、訓練一つとっても航空自衛隊は航空優勢確保用以上に艦隊防空用の航空団を保有しているわけではないので不安は残り、自前の能力を、とくに航空基地から離れた海域での運用を念頭に必要とする視点には理解できるでしょう。

Img_3528 艦隊防空におけるイージス艦の有用性も、100km以内の防空をイージス艦に専念させ、対艦打撃力や索敵を含めた戦域情報優位獲得へ数が限られたF-35Bを充当する、という方式にはある程度有用性があり、少なくとも航空団規模での搭載が艦の規模から実現しない状況下ではイージス艦との連携こそ有用、といえるのかもしれません。

Avimg_9983 しかし、2020年代半ば、十年以上の地に導入という示唆が為されている一方、F-35Bは取得費用でSH-60Kの1.2倍程度、P-1哨戒機の0.9倍程度と、費用面で予算が限られた海上自衛隊には厳しいものがあり、2020年代半ばまでにP-1哨戒機を所要数60機充足させる、というような見込みでもなければ予算面から難しいものがある。

Avimg_7592 そして導入一つとっても、海上自衛隊の固定翼練習機はT-5練習機等から始まるP-3C哨戒機などの要員の訓練を想定したもので、航空自衛隊が運用するような超音速戦闘機要員を養成するT-4練習機のような航空機も海上自衛隊には無く、教育訓練体系すらも応用できるものが限られています、これが厳しい。

Img_7171 海上自衛隊は予算規模に対して必要な装備品が多く、此処に新たにF-35Bを導入するという報道が、陸上自衛隊に短距離弾道弾導入計画があるというフジサンケイグループより報じられたことで、少々首を傾げないものでもないかもしれませんが、しかし、過去に類似の構想や検討を伝え聞くものは多く、時期を別として将来的には考えられるかもしれません。なにより、60年以上に渡り検討された事項なのですから、ね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (31)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする