◆護衛艦2隻・哨戒機2機が常駐
政府は本日の安全保障会議において海上自衛隊による海賊対処任務の一年延長を決定し、併せてこの方針が閣議決定されました。
ソマリア沖海賊対処任務は2009年より継続されており、海上自衛隊は常時二隻の護衛艦を派遣、続いて哨戒機の派遣も開始し最盛期は三機、現在も二機が常時海賊多発海域に近いジブチ共和国の海上自衛隊ジブチ航空拠点を基点とし、哨戒任務を継続しています。
海上自衛隊のほか、米海軍やEU諸国の海軍、インド海軍をはじめ中国海軍や韓国海軍も部隊を派遣した事例があり、特に恒常的な哨戒任務を継続することにより海賊容疑船を適宜検挙、これにより海賊被害は一時期と比べればかなり沈静化しました。
我が国では海上自衛隊の海賊対処行動任務として護衛要請船舶を集め、船団の前後を護衛艦で護衛する護送船団方式を採り、現在のところ護衛対象船舶への被害が皆無という記録が続いていますが、併せて海賊被害の縮小により護衛要請なども順次減り始めているところ。
これを受け、海上自衛隊は護衛艦二隻のうち、一隻を従来通り護衛任務に就けると共に、もう一隻の護衛艦を多国籍任務部隊へ参加させ、哨戒任務へ当たる方針を発表しました。哨戒任務は、海上自衛隊方式の護送船団が最も確実な方法ではあるのですが、海域ごとに哨戒任務艦を配置し、海賊被害の生じるアデン湾全域を哨戒網で覆えば、海賊を根絶できることを意味します。
ただ、この方式を採る場合、多国籍任務部隊司令部の試算では水上戦闘艦や哨戒艦艇60隻が必要となるため、とてもではありませんがこれだけの艦艇を各国が集めることは出来ず、そのため可能な限り哨戒し、海賊を発見し次第対応してきたのですが、これでも被害は縮小しており、高価は大きいといえるでしょう。
他方、他国籍任務部隊へ上位艦艇を常駐できる海軍機構は少なく、この為海上自衛隊の護衛艦を参加させるよう、各国から強い要望があり、今回、これを実現することとしました。なお、哨戒任務に当たる、という方策ですので、海賊との遭遇事案は多くなるでしょう。
我が国の海賊対処への貢献は海上自衛隊のほか、会長保安庁と外務省が協力し、沿岸国の海洋法執行機関要請への協力があります。海賊は陸上を拠点としているため、どうしても海軍では限界があり、アフリカ諸国版海上保安庁の創設へ我が国が協力していることも、被害縮小に寄与していることは間違いありません。
常時二隻を展開させるという事は訓練とたいきを併せ四隻程度が従事していることとなり、南西諸島警備をはじめ実任務が増大する海上自衛隊には非常に厳しい負担ではありますが、海洋の自由を国際公序とする主張と行動の一貫性のためにも、国際社会と日本が求めている負担、ということができるでしょう。
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