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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

武器輸出三原則、F-35国際共同生産多国間国際分業に合わせ見直しへ

2013-07-23 23:40:01 | 国際・政治

◆安倍総理、野田民主党政権下の方針継続へ 

 政府は22日、現在の武器輸出三原則を見直し、新しい指針の下で防衛産業との取り組みへ臨む方針を示しました。

Nimg_7836 航空自衛隊が1971年より運用するF-4EJ戦闘機を代替する新戦闘機として、国際共同開発のF-35A戦闘機を導入決定した際、このF-35戦闘機は多国間国際共同開発の航空機であるが故に開発参加国が生産を協同で行う多国間国際分業により進められていたため、我が国では部品の一部を生産すると共に、最終組み立てなどを担当することとなっています。

Img_2013 しかし、このF-35国際共同生産への参加に際し、F-35はイスラエルなど紛争当事国への輸出が行われるため、我が国が制定した武器輸出三原則、共産圏及び国連武器禁輸国に加え紛争当事国への武器輸出を自制するという国是に反するのではないか、という視点からの議論が為されてきています。

Aimg_0434 加えて、近年、防衛装備品については国防費が情報共有などへの協同交戦能力獲得への大きな比重を移す中で、増額を行えない現状下では、これまでのように全てを自国の技術開発を経て導入することはできないという観点から、共同開発を行い防衛費を節約する観点からも武器輸出三原則の緩和は検討を続けてきました。

Iimg_9119 こうしたなかで、民主党政権でも野田内閣時代には武器輸出三原則の緩和が示唆され、具体的にはF-35導入に関する合意や、イギリスなどとの防衛装備品共同開発において合意に至り、この部分で進展を見てきたのですが、武器輸出三原則については将来的に見直すという範疇で推移してきたもの。

Jimg_2274 これを22日の政府決定では来月より本格化させる防衛計画の大綱改訂への討議等を含め、今日までの武器輸出三原則を実質的に撤廃してゆく方向で調整し、F-35の生産に対応すると共に国内防衛産業を国際競争力の有する水準へ押し上げてゆく狙いがある、と考えられています。

Bimg_2350 ただ、防衛産業については、安易に国際競争力に曝すことは、長期的に安定した防衛装備品、特に自衛隊が必要とする専守防衛の島国で山岳国という稀有な国土に合致した装備を、容易に調達し維持できるのか、という難題については今のところ確たる保証がありません。

Img_8717 また、武器輸出三原則ですが、一応はアメリカへ一旦納入しアメリカが有償軍事供与を行うという方針を採っているため、例えば最終的にアメリカが紛争当事国と解される地域へ輸出する場合でも、日本が輸出しているのはアメリカであり、直接紛争当事国に輸出するわけではない、という視点で物事を考えることは可能でしょう。

Nimg_7880 それならば、武器輸出を行うべきではないのか、という問いがあるかもしれませんが、武器輸出三原則は共産圏と国連武器輸出禁止国に加え紛争当事国への武器輸出を禁じたものなのですから、例えば現時点でもアメリカやNATO諸国など世界の大半への輸出が可能であるものを拡大解釈拡大運用し武器輸出の道を封じているという実情を無視してはなりません。

Img_5975 例えば、永世中立国であるスウェーデンなどは、冷戦時代においてもヴェトナム戦争へ本格介入するまではアメリカは紛争当事国ではない、という視点の下で同等と銃火器を含めた武器輸出を行ってきており、仮に我が国が武器輸出三原則を厳格運用したとしても、これが装備品共同開発や国際搖動生産はもちろん、仮に武器を直接する場合においても阻害する要因とはなりにくい、ということ。

Iimg_2948 こうしたなかで、共産圏や国連決議に基づく武器禁輸国と紛争当事国への武器輸出を禁じた武器輸出三原則を撤廃するという試みは、海外での報じ方によっては北朝鮮へ日本がミサイルを輸出することや、中国へミサイル誘導装置などを輸出する、シリアへ航空機を輸出することを可能とする、と字面では受け取られかねないリスクをはらんでいることを忘れるべきではないでしょう。

Img_0024 それだけではなく、核拡散防止条約を筆頭に武器輸出は分野によっては厳しく国際管理されているものがあり、我が国の友好国でも全てが我が国のこれ間での過剰ともいえる武器輸出自己規制を理解しているとは限らないため、誤った印象を与える可能性があります。国連決議での武器輸出禁止国や、中立国が二の足を踏むような武力紛争当事国、中国と北朝鮮を筆頭とした共産圏へ武器輸出を行う試みがある場合は別ですが、それ以外であれば、武器輸出三原則を厳格適用し、防衛装備品を扱う、とする姿勢の方が、短期的長期的に我が国の国益へ合致しているように考えます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)


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