北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:中間報告、陸上総隊広域師団(装甲機動旅団・航空機動旅団)案の模索

2014-03-29 23:51:08 | 北大路機関特別企画

◆基幹戦闘部隊6万7600名+支援部隊・教育部隊

 UH-X次期多用途ヘリコプターを考える、ここから少々脱線し、陸上自衛隊の部隊編制についての様々な検討の中間報告的なものを。

Img_3076  陸上自衛隊の基幹戦闘部隊として、6個師団6万7600名程度とし、空中機動による機動展開重視の部隊と装甲機動による機動打撃重視の部隊を基幹とし、全師団を機動運用させ少数の陸上防衛力で我が国が想定するあらゆる任務への対応を目指す部隊編制案、まだ検討段階のものですが、その中間報告としました。

Gimg_8533  陸上総隊隷下、北部戦略予備の第7師団(機甲師団)、第2師団:第2旅団(機動打撃旅団)・第5旅団(航空機動旅団) 。東北第6師団:第9旅団(機動打撃旅団)・第6旅団(航空機動旅団) 。東部第1師団:第1旅団(首都旅団+中即連)・第12旅団(航空機動)・第10旅団(管理替・機動打撃旅団) 。

Gimg_5503  中部第3師団:第3旅団(機動打撃旅団)・第13旅団(航空機動旅団) 。西部第4師団:第4旅団(機動打撃旅団)・第8旅団(航空機動旅団)・第11旅団(管理替・水陸両用旅団) 。6個師団要員6万7000名程度+師団司令部付隊600名(各100名程度) 、冒頭に編成案を提示しますとこうしたもの。

Gimg_2585  基幹部隊は以上の通りですが、戦車300両・火砲300門の範囲内で達成可能な装備です。ただ、戦車に関しては中隊編制上可能ならば350両まで増勢が望ましい。空中機動部隊が多いですが、空中機動部隊は現状の編制を管理替えし、微増の範囲内と現行装備の近代化と現行計画の機数で達成可能です。

Gimg_2663  そんな規模で大丈夫か、と問われるかもしれませんが、抜本的な人員削減の背景は、空中機動部隊の集約とともに四輪駆動軽装甲車と軽装甲機動車と重迫撃砲を航空支援と共に運用する機動能力、戦車部隊に装甲戦闘車中隊を配属することで最小限の戦車の打撃力を最大限発揮可能とした、小型でも強力な編成をとったため。

Gimg_1175  四輪駆動軽装甲車と装甲戦闘車は増強装備ですが、共に国際平和維持活動や平和執行任務での主力装備となります。また、火力指数単位を維持強化するために必要な装備で、必要な装甲戦闘車は重旅団と機甲師団に各150両の計600両。戦車減勢に対し装甲戦闘車での代替は単純に世界の趨勢に乗るようではありますが、方法として一つ。

Img_9377 北大路機関では、方面航空隊を中心として普通科連隊と対舟艇対戦車隊を隷下に起き、空中機動させる方面空中機動混成団という提案を行ってきました。現状でUH-1J/H多用途ヘリコプターが20機とAH-1S対戦車ヘリコプターが16機、ここにOH-6D観測ヘリコプターが10機程度付き、機数では空中機動旅団を編成するに十分な規模を有しています。

Img_2103  他方、空中機動部隊を方面隊隷下に集約するという反面、新防衛大綱で大きく縮小される戦車部隊等の実情に鑑み、北大路機関では第一線で普通科小銃班の輸送に対応する四輪駆動軽装甲車を装備させる提案を行い、逆に戦車部隊は方面隊に装甲戦闘車と併せ集約する提案を行いました。

Img_5285 方面機械化混成団という提案は、過去に提示した滝ヶ原駐屯地の評価支援隊第一機械化大隊に範を採った戦車中隊に2個装甲化普通科中隊を混成運用する運用方式をさらに前進させ、機械化大隊を単体で運用するべく装甲車を戦車の火力支援と近接防護に転用可能な装甲戦闘車としたうえで機械化大隊を置く提案を行っています。

Img_3381 戦車単体で中隊規模の運用を展開すれば各個撃破されてしまうため、装甲戦闘車と共に機動運用を行う、こうした発想で二個機械化大隊を各方面隊に配置する。機動打撃に十分対応しますし、二個戦車中隊30両の戦車、この程度ならば全国の五個方面隊に分散配備できるでしょう。

Img_0383 その中で提示した方面即応集団は方面空中機動混成団と方面機械化混成団を集中運用する、という観点からの提案ですが、即応集団の編制と共に、全国の師団旅団は、師団はそのままとし、現行の旅団あ二個旅団を以て一個師団に再編する提案を行いました。これは管区が隣接する北部第5旅団第11旅団を第5師団へ、中部第13旅団第14旅団を第13師団へ、第12旅団は第1師団より一部管区を編入し第12師団へ、第15旅団は第11旅団装備を一部受け取り第11師団へ、というもの。

Img_12680 陸上自衛隊は少数の大型師団で、とは、2005年に北大路機関のWeb運用を始めて以来の提案ですが、今回、一連の検討の結果として、誕生する13個の小型師団を再編する提案に至りました。元々、この13個の小型師団のうち、戦車師団を除いた12個師団は四輪駆動小型装甲車と軽装甲機動車を基幹装備とした提案を行っています。

Kimg_8563 しかし、それでは方面即応集団と師団の位置づけが不明確となります。そこで、再編した小型師団数が、概ね全国の各方面隊に二個残ることに着眼し、空中機動混成団を一個師団へ、機械化混成団を一個師団へ、二個旅団編制を採る事は出来ないか、と論理的帰結にいたったわけです。

Img_9034  もちろん、この選択肢を執った場合、機械化装備は機械化混成団一個分では一個師団を充足させるには程遠く、空中機動混成団の航空装備も一個師団を空中機動させるには程遠い、となります。一部を装甲化しても、一部を空中機動化しても、全体の運用は混乱し歪な編成となるだけでしょう。

Gimg_0205  旅団化改編とは、高度な装甲化装備か高度な空中機動装備で部隊を充足させるための師団のコンパクト化という苦肉の策として提示したものです。流石に、機械化大隊をいくつも持つ連隊を基幹とした重厚な師団や、空中機動師団をいくつも編成する、等ということは現実的ではないところ。

Fimg_5547  そこで、併せて提示した特務即応予備自衛官構想、一個普通科連隊を現役大隊と即応予備大隊と予備大隊に本部や迫撃砲部隊を区分し連隊管区とする提案の方式が役立ちます。基盤的防衛力はあくまで連隊を基幹とし、旅団と師団は現役部隊を有事運用し、予備役部隊は平時に師団旅団、有事に動かず後詰め部隊とする、連隊の二分化を提案しました。

Img_2260  人員面では、少なくとも年間訓練日数が5日の予備自衛官が40000名いますので、練度は厳しいですが、400名の大隊としただけで100個大隊相当になります。全部予備大隊とせず、即応予備自衛官で編成できる大隊は多くはありませんが、有事の際、後方警備には予備自衛官を招集し、再教育訓練として武装し演習場に展開させるだけで大きな抑止力となるでしょう。

Eimg_1765  基幹となる連隊区は各方面隊に7、装甲機動旅団平時管内に3管区と航空機動旅団平時管内に4管区の合計7管区で五方面隊で35管区、すると、基盤的防衛力は35個普通科連隊に配置されることとなるため、即応予備自衛官大隊も35個大隊、予備自衛官教育混成大隊も35個置くという前提です。

Simg_0563  基盤的防衛力は、そもそも装甲戦闘車とヘリコプターどちらかにより機動力が大幅に強化されますので、部隊の配置間隔は機動力が補える部分が大きくなります。ですから、第一線へ駆けつける時間は何処に奇襲を受けたとしても維持できるわけです。そのための高度装備なのですから。

Gimg_6645  方面広域師団、機動打撃旅団、航空機動旅団。師団は以上の二個旅団を基幹とする。機動打撃旅団、航空機動旅団は共に5000名の人員を以て編成する。機動打撃旅団は、3個普通科連隊を基幹とし、戦車大隊、特科連隊、高射特科隊、偵察隊、施設隊、通信隊、後方支援隊、飛行隊、を基幹とする。

Nimg_0713  各普通科連隊は常備一個大隊と重迫撃砲中隊より成り、戦車大隊は3個戦車中隊を基幹、大隊は二個装甲戦闘車化普通科中隊と戦車中隊を以て機械化大隊を編成する。特科連隊は火砲は直掩3個大隊のみを以て編成し、第5大隊は方面特科部隊を解体しMLRS大隊を充てる。

Fimg_6623  航空機動旅団は、四個普通科連隊と航空連隊に機動砲大隊と特科隊、高射特科中隊、施設隊、通信隊、後方支援隊を以て編成する。普通科連隊は、やはり一個大隊を基幹とし、重迫撃砲中隊を縮小し本部管理中隊へ集約すると共に軽装甲偵察中隊を配置し、普通科大隊は四輪駆動軽装甲車を基幹とします。

Fimg_6290  特科隊は3個中隊15門の榴弾砲を基幹とし、機動砲大隊は2個中隊を四分割し各普通科連隊へ充当する。航空連隊は、師団飛行隊を受け継いで強化し、多用途ヘリコプター24機と戦闘ヘリコプター12機を装備、将来的に可動翼機配備を以て輸送ヘリコプター8機を第1ヘリコプター団を半分解体し配備する。

Fs_img_3785 広域師団はこうして装甲機動旅団・航空機動旅団を以て編成されます。広域師団の人員は約 10000名、陸上自衛隊師団としては、かつての甲師団9000名よりも大型で、12000名の米軍歩兵師団を目指したかつての管区隊編成よりもやや小ぶりですが、打撃力と機動力は世界中どこと比較しても遜色在りません。

Gimg_6037  懸念事項は南海トラフ連動地震や首都直下巨大地震に際し、政府が東日本大震災と同規模の10万名動員を求めた場合です。予備大隊のほか、人員を削り過ぎた編成であることは確かで、海上自衛隊と航空自衛隊にも東日本大震災時以上の人員派遣が求められることとなるでしょう。

Gimg_6470_1  方面隊は地域司令部として維持します。機動運用する広域師団と戦車師団が展開したのち、予備自衛官部隊は基盤的防衛力として残されるかたちですので、これを包括指揮する。また、地域における兵站基盤と平時の通信や駐屯地維持業務など、平時も有事も任務の大きさは変わりません。

Dimg_05540  将来的、というのは現在、8機のCH-47を装備するヘリコプター隊が那覇と相馬原にあり、32機のCH-47を集中運用する第1ヘリコプター団が木更津に置かれています。陸上自衛隊全体で実に55機のCH-47が配備されているのですが、ここに当面、17機のMV-22が配備される計画となっています。

Aimg_7590_2  そこで、第1ヘリコプター団はMV-22配備開始と同意にCH-47を半数の16機抽出し、方面隊装備の機体と、延命を含め数的維持を強化に転換させ、航空機動旅団へ配備させます。第1ヘリコプター団は、MV-22が16機とCH-47J/JAを16機装備し、空中機動力を重輸送と高速輸送の両立を行い維持できるでしょう。

Nimg_8701  ただ、可能であれば、第1ヘリコプター団とともに、陸上自衛隊は米海兵隊を模範とした両用作戦能力整備へ島嶼部防衛能力を整備中ですので、第1ヘリコプター団を回転翼機と可動翼機中心の第1航空団へ改編した上で、支援戦闘機二個飛行隊と連絡偵察機を運用する第2航空団を、岩国か普天間の海兵隊へ司令部として配置し、高遊原や防府に飛行隊を置く、考えられるかもしれません。

Nimg_8645_1  陸上自衛隊航空集団案、として近く提案しようと考えているのですが、航空自衛隊の戦闘機ほど高性能、つまり第五世代戦闘機に拘ることなく、中古F-16やF/A-18CにJAS-39B等を導入できます。航空自衛隊の防空戦闘部隊が不足した際に近接航空支援の負担を航空自衛隊へ掛けずに済み、場合によっては防空戦闘への航空自衛隊統合任務部隊への抽出も想定できるでしょう。

Gimg_9127 地対艦ミサイル連隊や施設団と高射特科群などは方面隊直轄の部隊へ配置します。方面直轄集団として、隷下に方面戦闘支援団と方面教育団に方面補給処を置く、というものです。このあたりまだまだ理論模索の最中ですが、こちらについては改めて中間報告として提示できれば、と思います。

北大路機関:はるな

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コメント (8)
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