◆大学秋季入学制度に合わせた新制度案
いよいよ脱線が本格化してきている今日この頃、本日の話題は普通科連隊の現役一個大隊を動的運用前提の防衛力に、予備役一個大隊を基盤的防衛力とする二個大隊編制案の延長で一つ。
現役大隊と予備大隊の隊員で普通科連隊を編成する案を提示しましたが、これは即応予備自衛官を確保出来なけれあ始まりません。そこで、今回提案するものは、国際基準に合わせた大学の秋季入学制度が今後本格化する場合、現在の即応予備自衛官制度を改良した大学生を前提とした特務即応予備自衛官制度を創設し、予備役不足の現状に一石を投じることが出来ないか、というもの。
現状では予備自衛官補制度がありますが、第一線での運用はもちろん、将来的に小銃の更新や車両の近代化が行われる際、現状の予備自衛官制度では年間五日間しか訓練召集の制度が無いため対応できません。年間五日間の訓練では第一線で対応できないからこそ、予備自衛官有事の際、弾薬輸送や駐屯地警備等に充当されている、という点も無視できません。
そこで考えてみたいのは、一定以上の訓練期間と主に大きな能力が期待されつつ、制度上訓練期間を非常勤公務員と一般社会人との両立が難しいと指摘されている即応予備自衛官を、拡充する事は出来ないか、という部分に、新しい秋季入学制度と併せて考えてみよう、というところ。
秋季入学制度の定着を目指す動きに合わせ、防衛省は高等学校卒業の三月から大学入学の九月までの期間に前期教育と後期教育を済ませ、大学在学中の三年間を即応予備自衛官として登録、大学院進学と就職活動が本格化する四回生期には退官か曹候補士への選択を行える制度を提示し、少ないとされる予備役を充足させる一方式とする方策は、無理でしょうか。
この視点背景には即応予備自衛官の不足と制度上の問題と共に、奨学金返済への苦慮という報道や学費負担の大きさをどうにか解消することはできないものか、という視点があります。学生には秋季入学で時間があるが学費と奨学金返済の不安がある、自衛隊には即応予備自衛官制度に合致する人員がたりない。
そこでまず、春期の高校卒業から秋季の大学入学まで、自衛隊へ入る、という仮定です。二等陸士には月額15万7500円の俸給が出されますので、半年間の勤務と最初の賞与金で入学金と入学時の準備に必要な積立を行うこともできるわけですし、選択肢の一つとはなるでしょう。
即応予備自衛官手当は毎月16000円、雇用企業給付金が42700円、訓練召集手当が10400円から、ですので、この制度を応用する場合は雇用企業給付金を大学に納入します。従って、雇用企業給付金を大学に充て授業料一部に充当させることが出来れば旧国立大学と公立大学程度の学費であれば八割前後相当に当たります。
ここに即応予備自衛官手当を含めれば医学部などの一部例外や私学以外ならば、なんとか学費に相当し、いわゆる奨学金と呼ばれる教育ローンへの依存度を低め、将来設計とすることができます。一部の人からは、教え子や子供たちを戦場に送るな、と反発するかもしれませんが、学費や奨学金返済の負担を反発する人が代替してくれるわけではありません。
年間訓練期間は即応予備自衛官で30日、一般企業ではこの期間を派遣することが非常に難しく、訓練出頭が出来ない場合に手当や任務報奨金を停止されるため、自衛隊協力企業であっても応召を完全に行うことは決して楽ではありません。即ち、我が国の雇用環境と労働環境では非常に成り立ちにくい制度ではあるのです。
しかし、この点について大学生ならば、もっとも当方は優秀では無かったことで学部生の頃週末と夏季休暇が研究と自主ゼミで潰れていたことを思い出すのですが、一般論として自衛隊側が訓練日程を休暇期間に集中する配慮を行えば、対応することは充分現実的となります。
訓練期間について。春期休暇と夏季休暇、旧国公立大学では春期休暇と冬季休暇に分かれ、入学試験時期の影響が顕著ではありますが、文科省は二期十五講義を念頭に講義体系を組むよう求めているため、40日間程度、最大限年間50日程度の訓練召集を行う事も不可能ではありません。
もっとも、部隊側が休暇外期間に訓練召集を行うという事を大規模災害時への待機期間などの例外を除き最大限避け、学生が夏季集中講義などへの登録を行わなければ訓練に参加できるよう、配慮することが求められます。
もちろん、即応予備自衛官は日当が出ますが駐屯地営内居住を求められますので一時間あたりに割れば非常に少なく、併せて即応予備自衛官は現役自衛官以上に教育時間が課外に設定されているので、安易に学費を稼ぐ目的で任官する事を薦めるのは出来ませんが、一つの選択肢として提示する事は出来るかもしれません。
それでは、具体的にどういった制度方式を採用するのか、その制度上の問題点は如何なる部分が想定されるのか、即応予備自衛官制度の根幹への疑問も含め、今週は、“四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官①”を考えてみましょう。
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