北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:UH-X次期多用途ヘリコプターを考える④ UH-60の配備増強という選択肢

2014-03-23 23:56:00 | 先端軍事テクノロジー

◆多用途ヘリコプターの軽ヘリコプターとの分化

 前回、自衛隊の多用途ヘリコプターに新型機を開発するのではなく、既存のUH-60を増加装備するという提案を掲載しました。今回は、その続き。

Uimg_99_33  もちろん、陸上自衛隊にとっては非常に大きな取得費用ではありますが、救難機として用いるための前方赤外線監視装置や気象レーダ装置等を簡素化し、暗視ゴーグル対応操縦計器とGPS程度に抑えた簡素型とした場合、取得費用は抑えられる可能性があります。

Uimg_0719  そして、UH-60Kを陸上自衛隊が導入した場合、三菱重工において航空自衛隊向けUH-60Kの生産が続いているところですので、量産効果が一定程度見込めるかもしれないでしょう。なによりも機体が量産されている時期に合わせて調達するというところに、大きな意味がありますから、ね。

Uimg_0744  さて、如何に取得費用を提言させるのか。前方赤外線監視装置と気象レーダ装置等が陸上自衛隊のUH-60JAに搭載された背景として、これらは悪天候時や雲中飛行といった極限状態での運用に威力を発揮するものではあるのですけれども、この装備は特殊作戦仕様の機体か救難ヘリコプター仕様でなければ、米軍でもUH-60には、装備していないものです。

Uimg_1116  この装備が行われた背景には、一説にはヘルファイア対戦車ミサイルや機関砲などを搭載する武装型へ転用する将来構想があったため、とも一説としてありますが、実行されていたならば、多用途ヘリコプターの運用幅を大きく広げる者であったものの、事実は定かではありません。

Uimg_2842  そして多用途ヘリコプターに前方赤外線監視装置と気象レーダ装置等、不可欠化と問われれば、在るに越したことは無いとしても、不可欠とは言い難く、それよりも高性能化を希求しすぎる事で調達数が低下し、機数が少なくなることの方が遙かに甚大な影響を及ぼします。この対応により飛行能力が低下すると危惧する向きもあるかもしれませんが、夜間飛行は暗視ゴーグルにより対応でき、UH-1Jも同様の手段で夜間飛行に対応しています。

Uimg_1215  それでは次に、競争入札、過度な平等気球が結果的に超k的な装備調達計画に影響を及ぼしているのではないか、と指摘している当方ですが、その制度、競争入札について。陸上自衛隊がUH-Xを選定する場合、最重視するのは運用経費で、特に既存機との運用基盤の共通性です。

Uimg_4171  競争入札においての事項は、航空自衛隊救難ヘリコプター等の既存航空機及び将来ヘリコプターとして導入が決定されている航空機との部品互換性や整備互換性を重視する航空機、と提示すれば、最有力はUH-60,対抗する航空機として既に運用している機体が揚がるのは当然と言えましょう。

Uimg_5980  競合機とは。海上自衛隊が既に運用しているMCH-101の派生型としてのKW-101,陸上自衛隊が要人輸送ヘリコプターとして運用している機体の最新型であるEC-725,となり、長期運用費用の面と機体取得費用の面から、この三機種を選定すれば、と考えるところ。

Uimg_7684  1:1でUH-1JをUH-60Kで置き換えることは、少々厳しいかもしれません。それは多分い防衛費の上限という制約に起因しまして、40機の調達が20年間の維持経費を含め1900億円、もう少し機体の簡素化により取得費用を抑えられる可能性は示唆しましたが、方面航空隊へ20機の導入は、厳しい。

Uimg_8580  UH-1Jの兵員輸送能力は11名で貨物搭載量は1800kg、対してUH-60は15名を輸送し機内1170kgと機外4050kgの輸送が可能であるため、UH-1Jの20機分220名の人員をUH-60JAは15機で空輸可能です。飛行隊を考えた場合、UH-60Kは8機の2個飛行隊で各方面ヘリコプター隊へ16機配備、というところでしょうか。

Img_8454  5個方面隊所要80機、既に第1ヘリコプター団と第12ヘリコプター隊に第15ヘリコプター隊等にUH-60JAが装備されていまして、こちらの将来更新を考慮すれば更に40機加えた120機、というところでしょうか。米軍の師団飛行隊や旅団へ配属される分遣隊にUH-60が含まれるのですが、無い袖は自衛隊として振れません。

Pimg_1155  師団飛行隊等に装備する場合、3機程度配備するとして更に30機程度必要となりますが、この場合はUH-Xではなく軽ヘリコプター選定としてOH-6観測ヘリコプターの後継機も見込んだLH-X選定を行う事となるでしょう、考えられる候補はアグスタA-109や海上自衛隊へTH-135として装備されているユーロコプターEC-135,川崎/ユーロコプターBK-117C-2 / EC-145など。

Pimg_6519  UH-Xとしてみた場合、LH-X候補として提示しましたアグスタA-109、ユーロコプターEC-135、川崎/ユーロコプターBK-117C-2 / EC-145は共に性能面で不十分です。UH-Xは最前線への強襲等を展開するため、ある程度の防御力と機動飛行を想定せねばなりません。

Iimg_9780  しかし、LH-Xであれば最前線での運用というよりは、光学監視装置を搭載して遠距離からの特科航空観測と指揮官連絡、ヘリコプター隊や方面航空隊の本部航空機など、そこまでドンパチ賑やかな状況には投入されませんので、これらの機体でも十分対応できるでしょうが、本文の論旨から外れるので、別の機会としましょう。

Gimg_9062  さて。UH-60K,陸上自衛隊次期多用途ヘリコプター候補として考えた場合、川崎重工へ設計開発が見込まれていた、OH-1派生型の機体よりは相当高くなります。しかし、UH-1後継機の選定を長々と続け、設計し試験飛行し部隊運用承認を待っているほどの時間的余裕はありません。それならば、UH-60KをUH-Xとして提案するのですが、如何でしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする