北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:UH-X次期多用途ヘリコプターを考える③ 陸海空統合ヘリコプターの提案

2014-03-20 02:03:17 | 先端軍事テクノロジー

◆UH-60J/K導入は最後の機会

 陸上自衛隊UH-X選定について、その停滞の現状と用途について掲載しましたが、今回からは北大路機関案としてのUH-Xの提案を提示してゆくこととしましょう。

Uhimg_1052  陸上自衛隊は、UH-60Jの改良型、航空自衛隊へ導入される新救難ヘリコプターUH-60J改、恐らくUH-60Kと呼ばれるであろう機体をUH-Xとして暫定導入してはどうか、こう考えるところです。陸上自衛隊はUH-1HとUH-1Jと続いた多用途ヘリコプターを一時UH-60JAとして導入開始しています。当方が推すのは、この機体をひとつ。

Uhimg_0997  この導入開始も、取得費用が大きくなりすぎUH-1Jとの並行調達となりました。しかし敢えて、UH-60Kを後継機を整備する方策はどうでしょうか。能力は充分です。航続距離は1300kmに達し、フェリー航続距離ならば2200km、師団用としては過剰ですが、方面隊用ならば、理想的な水準と言えるもの。

Uhimg_1177  この航続距離ならば、例えば南西諸島有事に際して那覇駐屯地へ緊急展開する場合、西部方面隊の高遊原駐屯地からの増援はもちろん、中部方面隊の八尾駐屯地からも1250km程度、フェリー空輸ならば八尾から十分展開可能です。フェリー航続距離を活かす場合は、人員と装備は民航機を含めた航空機で展開すればよい。

Uhimg_4262  また、機体はC-130H輸送機への搭載が可能として、これは米陸軍がUH-60の要求仕様に盛り込んだものですが、設計されていますので、海外派遣などに際し空輸展開も可能です。もちろん、航空自衛隊へはC-2輸送機の配備が開始となり、貨物室も大型化するので、この機種に限らなくともいいわけではあるのですが。

Uhimg_6529  UH-60Kを推す最大の理由は陸海空で運用されているためです。航空自衛隊新救難ヘリコプターとして三菱重工が生産し配備が開始されるためです。実は陸上自衛隊がUH-60JAを導入開始した当時にも航空自衛隊の救難ヘリコプターとしてUH-60Jが配備開始されていました。量産効果が出ないか、と、そういった意味ももちろん含んでいます。

Uhimg_4406  また、海上自衛隊でもUH-60Jが救難ヘリコプターとして導入開始され、航空自衛隊へ32機と海上自衛隊へ16機が導入されました。ここに陸上自衛隊も採用したのですが、陸上自衛隊が調達を本格化させた時期に、救難ヘリコプターとしてのUH-60J生産が終了し、その分量産効果が低下することとなってしまいました。

Uhimg_8536  海上自衛隊のSH-60J哨戒ヘリコプターが生産されていた時期においても、ある程度部品互換性があったため、量産費用に影響した点はあるかもしれません。海上自衛隊の哨戒ヘリコプターは胴体を大型化させ、その他機関部をはじめ多くの部分で飛行能力と生存性向上への設計変更を実施しました。

Uhimg_9809  陸海空が採用したこの機体を更に進め陸海空の統合ヘリコプターとして扱う事は出来ないものでしょうか。少なくとも、この決断は1990年代初頭に下すべきだったと考えています。陸海空ではV-107輸送ヘリコプター等が、救難ヘリコプターと掃海ヘリコプターとして陸海空で運用されたこともありました、そうした環境を今一度、と。

Uhimg_4632  陸上自衛隊はSH-60JとUH-60Jが同時期に生産され、三菱重工が最も量産効果を上げていた時期にUH-60JAを調達開始する決断を下せなかったわけです。当初ではUH-1を全てUH-60で置き換える計画があり、ここに海空自衛隊所要が生産終了し費用高騰、ここに防衛費縮減が追い打ちをかけたかたち。

Uhimg_4292  そして逆に言えば、UH-60を取得できる機会はこれが最後となるやもしれません。航空自衛隊UH-60Kの生産が終了した際には、生産ラインが再度陸上自衛隊所要のみとなります。そうした場合、維持費がもろにかぶさることとなり、一機当たりの取得費用は高騰するでしょう。

Uhimg_7055  その場合、財政面からは取得することが出来なくなります。それならば、海上自衛隊のSH-XとしてSH-60Kの後継機と合わせたほうが、まだ、いい。そしてUH-60JA導入に際して、もう数年速い決断を示せなかった、という状況と同じ轍を踏むことにもなる。

Uhimg_5481  2010年11月5日、防衛省は航空自衛隊次期救難ヘリコプターとして三菱重工が提案したUH-60改を選定、ここで40機の調達が20年間の維持経費を含め1900億円で締結されています。一機当たりを考えると高く感じますが、維持経費を含んでいますので、この分を考えると、どうなのでしょうか、ね。

Uhimg_7657  この航空自衛隊次期救難ヘリコプター選定で競合したのは川崎重工KE101とユーロコプターEC725で、ノックダウン生産か直接輸入が提示されていましたが、決定に際し、取得費用が妥当性を有しており、取得費用と共に維持費用が明確に示されています。

Uhimg_8618  さてさて、それでは次回に財政上導入することはどの程度現実的であるかという点や、本命の機体がある中での競争入札方式との関係を如何に対応するか、という点、師団飛行隊にはこの機体の妥当性は必ずしも高くない場合どう対応するかなど、話題を検証してみましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (3)
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