◆競技会と総合訓練、昇進と特務幹部候補
学生を対象とした特務即応予備自衛官ですが、年間訓練期間を学生の長期休暇を利用した場合で50日と非常に大きな日程を組むことが出来ます。
従ってこれまでは予備部隊では想定外であった練度の向上が望めるかもしれません。そこで、具体的にどうすれば練度向上を引き出せるか。遣り甲斐と達成感、重要な部分は此処にあると考えます。そこで、競技会と訓練検閲を重視した運用を行う事は出来ないか、と考えるところです。
想定している特務即応予備自衛官は全国の普通科連隊を本部管理中隊と普通科大隊に予備大隊と重迫撃砲中隊を基幹とする編成とし、予備大隊は有事の際に地域警備に予備自衛官を招集し残し、本部管理中隊と普通科大隊に重迫撃砲中隊はそのまま機動運用する、という想定です。
そこで、予備自衛官大隊は即応予備自衛官基幹の一個中隊と予備自衛官主体の一個中隊に自衛官候補生主体の共通教育中隊を一個置き三個中隊を以て運用するというものです。従って、即応予備自衛官部隊には有事の際に一定の練度が求められるわけですが50日間という期間をどのように駆使するかにより、この一個中隊が有事の際の能力を左右することとなるでしょう。
競技会、特務即応予備自衛官は大学生を基幹としていますので、ある程度であれば長期休暇の時期が重なります。その期間を利用し訓練を行う、という想定なのですが、全国の大学の休暇期間が重なるのであれば、即応予備自衛官のみを参加とする射撃競技会や、全国最優秀即応予備自衛官小隊を、射撃や防御に陣地構築と攻撃前進、等の区分ごとで選定する競技会を行うことが出来るでしょう。
訓練期間が限られている反面、現役部隊のような小隊待機時間を最大限縮小し、体力練成と戦闘訓練を重視する訓練計画を作成することにより、同じ50日間であっても、現役部隊と同等は無理としても準じる程度の能力は整備することが出来るかもしれません。
特務即応予備自衛官は軽火器区隊を基本とし、迫撃砲などの重装備は保有しない前提ですが、携帯対戦車火器と重機関銃を装備し、ある程度練度によっては能力が大きくできます。競技会に加えて総合戦闘訓練を行い、競技会の内容を機能別訓練とし、総合訓練に繋げる方策を模索すれば、部隊の訓練水準を上げることが出来ます。
特務即応予備自衛官着任の時点で即応予備二等陸士に任官するわけですが、二回生に進むと同時期に必要な検定に合格したという前提で即応予備一等陸士に昇進し、最後の一年となる三回生で即応予備陸士長へ昇進、せいどとしてはこのように運用されると考えることが出来ます。
それと共に、個人技術に加え即応予備陸士長に昇進する時点では小銃班の機関銃組か対戦車火器組を指揮する立場となるのですし、同じような訓練内容であっても小隊のなかで対応する責務は変化し、もちろん求められる能力も変化してくる。
ただ、此処で重要な鍵となるのは、大学秋季入学制度を採用した大学は、就職活動の本格化をどの時期に持ってくるのか、という部分に左右されます。春期就職を想定する場合、どうしても春季入学よりも半年入学時期が遅い関係上、就職時期が一年遅れるわけなので、この部分へどう影響する制度となるのでしょうか。
前回の提案で博士前期課程に進む要員を陸曹教育課程に充て、昇進させるという選択肢を提示していますが、俺が実現すれば、現在の大学教育では一割程度が大学院に進むということから、一個班より一名が昇進することを意味します。修士課程に進む学生の語学力を、有事の際に第一線で活かす、という方式も考えられるかもしれませんが。
博士前期課程は二年間ですので特務即応予備自衛官の任期は三年間、四回生の時に大学院進学を準備しつつ陸曹教育課程を短縮教育で受ける事となります、ただ、陸曹から特務予備自衛官に任官する制度を設けなければ、陸曹が余るという状況は回避できるかもしれません。
一方、無駄に任期だけを空費し、実力と意欲の無い要員が出てしまった場合、その対処法を考える必要が出てくるかもしれませんが。如何に利点と意義を強調しても、学費のための自衛隊稼業、という視点からは離れられません。制度設計により練度を高め、建前と本音の使い分けができるようになってほしいところ。
この場合、博士後期課程は三年間ですので、特務即応予備自衛官を博士号授与まで最短で二任期務めることになります。任官から実に三任期、博士号授与と共に常勤講師枠を得られるという進路は現実的ではありませんので、こうした人材を活用する方策を考えなければならないところ。
そこで幹部候補生学校にて短期教育を受け特務即応予備自衛官部隊限定の三尉に任官すれば、小隊長から陸士まで即応予備自衛官で揃えられると共に、勤続を続ければそれだけ評価され、訓練も充実、競技会にて発揮できる、遣り甲斐が能力を高めることに繋がるのではないでしょうか。
更に現状の制度では即応予備自衛官は最高階級が即応予備2等陸尉まで、となっていますが、最長で学部生一期、博士前期課程・後期課程二期、ポスドク一期もしくは二期、合計12年間から15年間奉職することになりますので、その際、任期満了間近の際には即応予備1等陸尉へ昇進させる、という制度はあっていいのかもしれません。
さて、順調に脱線し予定は未定のこの榛名防衛備忘録ですが、次回は意外と大きな問題、先に提示した留学制度と秋季入学制度に特務即応予備自衛官制度の三角関係というべき課題について、意外に重要な問題であることから考えてみたいと思います。
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