北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成三〇年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.05.12-13)

2018-05-11 20:05:18 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 暑いのか寒いのか、微妙なお天気の中、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 第3師団創設記念千僧駐屯地祭、今週末土曜日と日曜日に挙行されます。第3師団は京阪神紀州を防衛警備管区とする師団で、74式戦車や軽装甲機動車にFH-70榴弾砲と各種装備を有しており、遠くない将来に16式機動戦闘車等の配備が展望されています。千僧駐屯地祭は、日曜日の本番に先立つ土曜日の総合予行も一般公開しており、比較的空いています。

 新発田駐屯地、第12旅団隷下の第30普通科連隊が駐屯しています。新潟県に二つある普通科連隊駐屯地の一つで新発田城址に所在する駐屯地として、辰巳櫓や二の丸隅櫓が駐屯地にあり、城郭の普通科連隊として知られる。今年度行事は土曜日に市街パレードが実施され、軽装甲機動車や中距離多目的誘導弾等が行進、日曜日に駐屯地が一般公開されます。

 えびの駐屯地、宮崎県に所在し西部方面特科連隊第3大隊と西部方面混成団第24普通科連隊が駐屯しています。第24普通科連隊は第7師団隷下の機械化普通科部隊でしたが師団機甲師団改編に伴い西転し第8師団隷下となりました。しかし、今年の第8師団の即応機動師団への改編に伴い、第24普通科連隊と第8特科連隊第3大隊は方面隊隷下となりました。

 さて撮影の話題、自衛隊行事では様々な見識を広める機会となりますが、中にはクマさんのぬいぐるみ分隊と共に装甲車記念撮影、という有名な方や、ねんどろいどフィギュアを観閲行進に並べてローアングルから撮影するという方もいます。そういえば自衛隊以外で、京都の祭事をカメラ前に竿で釣った風鈴とともに風流に仕上げる、という方もいました。

 風流といいますか、一風変わった撮影手法もあるのだなあ、と考えつつ、小型ウェアラブルカメラのKEY MISSION70をスヌーピーに抱かせて配置すれば自然に撮影できないか、とバーボン片手に考えた事もありますが、しかし極力周りの方の撮影を邪魔しないよう配慮を行う事の難しさを考え、此処を極めないと当方には真似ができない、と思う次第です。ただ、それだけではない。

 NHK鉄道紀行-中井精也のてつたび、NHKの人気番組ですが当方も撮影の参考にと楽しみにしています。しかし、氏が鉄道写真撮影に臨む後姿、番組情景見ますと、中井精也氏のような恰幅の好い出で立ちですと、スヌーピーやクマさんに関係なく体格が好いと背後の人の撮影を邪魔してしまうのだなあ、と。やはり様々な状況で周りへの配慮、大切ですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・5月12日・13日:新発田駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/12b/haichi/0407shibata/shibata.htm
・5月12日・13日:第3師団創設記念千僧駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/
・5月13日:えびの駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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陸上自衛隊が海上輸送力整備検討:高速双胴カーフェリーHSV-2スイフト/ナッチャンWorld

2018-05-10 20:16:39 | 防衛・安全保障
■インキャット社製高速フェリー
 名古屋港にて撮影の太平洋フェリーいしかり,にて北海道から機動した善通寺第14旅団車両部隊の写真とともに。

 HSV-2スイフト、インキャット-タスマニア社製高速双胴カーフェリーをアメリカ海軍が長期チャーターし高速輸送船として運用したもの。HSV-X1ジョイントベンチャーとしてアメリカ陸軍が長期チャーターした同様の高速双胴カーフェリーがあり、平時における長距離の兵員や装備移動、グアムと沖縄の往復輸送等に充てており、これが全長98mです。

 カーフェリーと自衛隊、報道等を見れば北海道から九州へ緊急展開を演練する自衛隊協同転地演習や自衛隊統合演習においてカーフェリーを利用している場面が報じられますが、実はこの種の演習以外にも長距離射撃やミサイル射撃等演習場環境の良好な北海道への演習に際し、車両と人員共々、太平洋フェリー等を一般乗客と共に部隊が移動する事も多い。

 インキャット-タスマニア社製高速双胴カーフェリーの特色は低抵抗船体構造として双胴型船体を採用しているもので、その速力は最大40ノットに達します。HSV-2スイフトは最高速力45ノット、巡航速度30ノットの航続距離は6500km、基準排水量955tに全長98mと全幅27mという構造、107席と2670平方m貨物区画に車両を含む605tを搭載可能だ。

 ナッチャンWorldとして陸上自衛隊も同じインキャット-タスマニア社製高速双胴カーフェリーを長期チャーターしています。東日本大震災発災時に臨時チャーターし北部方面隊等の部隊を被災地へ輸送する実任務に投入し評価されたもの、その前にも協同転地演習時に運用されている。東日本フェリーが青函航路用高速フェリーとして運用していた後身です。

 東日本フェリーが青函航路用高速フェリーへ投入していた時代には、速力の一方で燃費の点で原油高に併せ採算性に影響を与えていましたが、普通乗用車195台とトラック33台を同時輸送出来る車両デッキの広さは特筆すべきもので、協同転地演習では東千歳第7師団の90式戦車4両と89式装甲戦闘車10両という重車両を九州大分港へ同時輸送しました。

 HSV-X1ジョイントベンチャーとHSV-2スイフトは那覇軍港、在日米軍施設で陸上自衛隊那覇駐屯地に隣接している兵站施設なのですが、ここに入港している様子が時折見られ、ナッチャンWorldの運用実績と併せ、今回の自衛隊が独自に海上輸送手段の整備を検討との報道、陸上自衛隊が長期チャーターではなく直接運用を行う可能性は充分あるでしょう。

 チャーターでは何故不充分なのでしょうか。考えられるのは陸上自衛隊が平時における訓練移動の他に有事の際の南西諸島への作戦機動を念頭に置くため、チャーターフェリーでは船会社、現在は高速マリン-トランスポート社がナッチャンWorldを運行していますが、民間人である船員が運行しており、第一線輸送に非戦闘員を指揮下に置けない為と考える。

 HSV-2スイフトであれば全長98m、ロイター報道の100m級と合致します。HSV-2スイフトは2003年に米海軍がリースし2013年にリース終了となりました。それならばこのフェリーを取得すればよい、と思われるかもしれません。しかし、HSV-2スイフトは元々民間船、民間船故の現実が続くアラブ首長国連邦UAEがチャーター時に発生してしまいました。

 2016年10月1日、内戦中のイエメン沖においてUAE軍装備を輸送中、武装勢力による中国製C-802対艦ミサイルでの攻撃を受け、大破してしまいます。戦死者2名、沈没は免れましたが、高速フェリーにはミサイル妨害用のECM電波妨害装置やCIWS個艦防空火器を搭載していません。自衛隊がフェリーを導入する場合、留意すべき点の一つといえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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陸上自衛隊が海上輸送力整備検討:30m級/100m級,南西諸島防衛へ水陸機動支援用

2018-05-09 20:02:08 | 防衛・安全保障
■LSV支援艦やL-CAT高速艇か
 水陸機動団が佐世保に創設、冷戦時代の北方脅威から南西脅威を含む脅威の多極化へ統合機動防衛力整備が進んでいますが、此処に一つ驚きの報道が。

 陸上自衛隊が水陸両用艦艇の導入を検討している、複数の防衛省関係者からの話としてロイター通信が“陸自が海上輸送力の整備検討、南西諸島で機動展開=関係者”5月8日付記事にて配信しました。今年度新編された水陸機動団、南西諸島防衛を期して佐世保市相浦駐屯地に団本部を置く精鋭部隊で、沖縄本島や奄美大島へ連隊を駐屯させてゆく方針です。

 海上自衛隊は満載排水量14000tの輸送艦おおすみ型を、おおすみ、しもきた、くにさき、と保有しており、エアクッション揚陸艇LCACと全通飛行甲板から輸送ヘリコプターを運用可能、海上自衛隊の輸送能力は世界的に見ても高い水準にあります。しかし、中国海軍と比較すれば小規模であり、専守防衛国是の我が国では水陸両用艦艇建造に消極的でした。

 水陸機動団が目指すものは輸送艦か上陸用舟艇か、ロイター記事では“陸自は全長30メートル程度から100メートル程度まで、数種類の大きさの船を候補に調達の検討を進めている”としています。30m程度と云いますとフランス海軍のL-CAT/ EDA-R高速水上輸送艇、100m程度と云いますと全長83mのフランク-S-ベッソン級輸送支援艦が思い浮かぶ。

 海上輸送力の整備検討はしかし、何故求められたのか。水陸機動団は第1水陸機動連隊、第2水陸機動連隊、戦闘上陸大隊、水陸機動特科大隊、水陸機動偵察中隊、水陸機動施設中隊、水陸機動通信中隊、水陸機動後方支援大隊、以上基幹とし主力は佐世保に駐屯しています。そして連隊を沖縄本島や奄美大島に置いた場合、団主力からの支援が課題となる。

 水陸機動連隊を奄美大島に置いた場合も隣の徳之島へ行くには海路を越えねばなりませんし、石垣島に連隊を配置しても舟艇が無ければ隣の宮古島や下地島へ展開する事が出来ませんし、そもそも上陸に必要となるAAV-7水陸両用車は佐世保の崎辺分屯地に置かれる戦闘上陸大隊に装備されている、まず最初にAAV-7を九州から持ってこなければなりません。

 L-CAT/ EDA-R高速水上輸送艇は、フランス海軍がミストラル級強襲揚陸艦と共に開発した双胴揚陸艇で基準排水量285t、全長30.1m、最高速力は30ノットで巡航速度15ノットでの航続距離は1800kmと外洋航行も可能で、艇内に全長23m幅6.9mの車両デッキを有し戦車を含む60tまでの装備、10式戦車と96式装輪装甲車の重さに相当、を輸送可能です。

 L-CAT/ EDA-R高速水上輸送艇と自衛隊ですが2015年5月に九州西方日米仏共同訓練に初参加して以来、日英仏共同訓練等に度々参加、自衛隊の関心が伝えられます。その様子は報道の他に“NHK鉄道紀行-中井精也のてつたび-第13回松浦鉄道西九州線”にて佐世保の高台からの俯瞰風景にさり気なく母艦が写っていたいりして、再放送等で視る事も出来る。

 フランク-S-ベッソン級輸送支援艦はアメリカ陸軍が、海軍ではなく陸軍、運用する輸送支援艦です。輸送支援艦LSV,というと貨物船のような響きですが艦首部分に揚陸用扉を有していまして岸壁や浜辺にそのまま車両を揚陸可能です。厨房や洗面入浴設備が無く基本的に港内で車両などを輸送する任務に当りますが満載排水量4100t、M-1A1戦車31両を運ぶ。

 フランク-S-ベッソン級輸送支援艦は一見すれば戦車揚陸艦、実際フィリピン海軍が居住区画等を追加しバコロド-シティ級揚陸艦として運用、上陸不可の揚陸専門、輸送専門艦ながら輸送力は輸送艦おおすみ型よりも大きい。戦闘を想定しない為、乗員は30名で運用可能、電子戦装備や個艦防空装備を持たない分安価でAAV-7装甲車3両分の20億円程度です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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朝鮮半島有事邦人救出検証(6)超法規と想定外の1994年/安保法整備と機動運用の2018年

2018-05-08 20:12:10 | 国際・政治
■在韓邦人全員救出は十分可能
 朝鮮半島有事、万一の際に救出すべき規模が大きすぎる、としても政府も国民も諦めるべきではありません。

 邦人救出任務を想定する際、重要な点は最初の1994年朝鮮半島危機と比較し、自衛隊の戦力投射能力、そして政府の法整備や外務省との連携が非常に強化されている点です。ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦を日本海や黄海に遊弋させ、ヘリコプターにて救出することが出来ますし、おおすみ型輸送艦からエアクッション揚陸艇LCACを運用しても良い。

 ヘリコプター搭載護衛艦や輸送艦に限らずとも、艦船からの救出を行う場合は補給艦の飛行甲板から航空機を運用させるのは勿論、むらさめ型、たかなみ型といった汎用護衛艦も数百名程度の避難民であれば収容できます。当然、邦人保護は政府一体として実施するべき任務であり、自衛隊統合任務部隊以外、海上保安庁巡視船や水産庁支援も含みましょう。

 もちろん、邦人の総数からとても充分とはいえないのですが、それでも、1994年の段階よりはよほど状況は整備されている。輸送手段だけでも当時は徒手空拳というほかなかったもので、法的に自衛隊を投入できるかさえ厳しいものの、救出に自衛隊を投入するとしてもその装備が限られていました。そしてもちろん、1994年当時は訓練もなされていません。

 はるな型ヘリコプター搭載護衛艦の舞鶴配備は1998年ですので、1994年当時は選択肢が本当に限られた。限られた装備でも、例えば、はるな型護衛艦、しらね型護衛艦、は当時大型で広報活動の際には800名を収容できるとのことですから有力な選択肢となったでしょう。しかし、現在の全通飛行甲板型護衛艦と比較したならば、収容能力は限られている。

 ヘリコプターによる九州から韓国南部への救出一つ上げても、1994年時点ではCH-47輸送ヘリコプターとともにまだ少なくない数のV-107輸送ヘリコプターが残っており空輸能力に限界があったほか、海上自衛隊の輸送艦は、おおすみ型輸送艦が計画中、旧式の輸送艦みうら型、あつみ型が主力となっており、輸送能力で砕氷艦しらせ、のほうが有力でした。

 政府専用機が1992年に導入された背景にイランイラク戦争の邦人救出能力欠如、がありましたが、航空自衛隊輸送機はC-2輸送機が運用開始となった現在と比較し、C-130HとC-1輸送機、朝鮮半島はC-1輸送機の行動半径内にあることがせめてもの僥倖でしたが、実際に頼れる空輸能力は当時配備開始間もない政府専用機B-747に依存している状況でした。

 法整備の面で、1994年朝鮮半島危機が朝鮮半島有事へ発展していた場合、超法規措置の決断を迫られる状況が多々発生したでしょう。しかし、超法規措置では多くの場合を現場指揮官に押し付ける事となり、自衛隊だけが任務に当たるのではなく、外務省に警察や海上保安庁等が協同し、邦人救出任務にあたる場合、そもそも責任者は誰が不明確となりえた。

 有事法制に繋がる議論は当時まだ禁忌、しかし理想的には当時から防衛庁内局が提示していた、有事の際に政府が国会へ有事法制を緊急上程し、即日可決即時施行という緊急措置が間に合うこと、しかし、これとて憲法上論議を要する法案を即時可決することは民主主義と立憲主義の観点から劇薬のような影響を及ぼしかねず、楽観要素はなにもありません。

 しかし、劇薬か超法規措置かを迫られる状況だったのが1994年です。その上、1996年には台湾海峡ミサイル危機という、日本周辺地域における邦人救出任務は朝鮮半島の実に限らず、台湾本島からの邦人救出の可能性が示されても法整備は遅々として進みません。しかし、現在は安全保障関連法という法整備がありますので、大きく前進しているのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G7X撮影速報】海兵隊キャンプ富士日米友好フライトラインフェスティバル(2018-05-05)

2018-05-07 20:07:33 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■GWは富士山とオスプレイ
 キャンプ富士、行って参りました。快晴で富士山が良く見えた!、今話題のソロキャンではなくお友達と一緒に、GWを満喫だ!。

 キャンプ富士、海兵隊富士諸職種共同訓練センターが置かれる米軍施設です。ゴールデンウィーク最高潮の五月五日、敢えて空母航空団と海兵航空団に沸く岩国基地ではなく“ゆるキャン”がブームという潮流に乗りまして、静岡県のキャンプ富士へ行って参りました。

 MV-22可動翼機、AAV-7両用強襲車両、LAV-25軽装甲車、M-777超軽量榴弾砲、キャンプ富士では米海兵隊の装備品展示などが行われ、水陸両用部隊の代名詞となった米海兵隊の様々な装備を間近に見る事が出来ます。年度ごとに並ぶ装備品が違うのもまた興味深い。

 AAV-7水陸両用車は陸上自衛隊が今年西部方面普通科連隊を改編した水陸機動団へ配備されていますが、中々間近に見る事が出来ない装備の一つ、しかしキャンプ富士では基本的に車内を自由に見学する事ができます。自衛隊向けMV-22は今秋にも木更津へ配備される。

 海兵隊富士諸職種共同訓練センターは1947年に進駐軍の進駐と共に創設された歴史ある施設で、進駐軍が旧陸軍から継承した富士演習場を東富士演習場として整備維持し、陸上自衛隊へ返還した歴史を有しており、海兵隊は朝鮮戦争最盛期の1953年に駐屯しました。

 第3海兵遠征軍、在沖米軍の主力で西太平洋米軍抑止力の象徴的存在の遠征軍は隷下に、第3海兵師団、第3海兵遠征旅団、第31海兵遠征群、第1海兵航空団、第3海兵兵站群、等を隷下に有していますが、実はこれら部隊は現在、キャンプ富士には常駐していません。

 キャンプ富士は海兵隊富士諸職種共同訓練センターその名の通り、在沖米軍の訓練移転などを主任務とし、訓練部隊がローテーション展開する方式を採り、陸上自衛隊有数の演習場である東富士演習場において、主として海兵砲兵部隊の射撃訓練等を実施しています。

 LAV-25等が毎年違った車輌が展示される理由は正にここに在りまして、要するに沖縄から東富士演習場へ射撃訓練へ展開している海兵隊各部隊の車両や火砲を展示しているという構図です。ちなみに、昨年はM-9装甲ドーザが展示され、当たり年と云われたもよう。

 滝ヶ原駐屯地、優秀部隊の代表に挙げられる富士教導団普通科教導連隊や演習仮設敵として風雲たけし城の異名で畏れられる評価支援隊第1機械化大隊等が駐屯する陸上自衛隊の駐屯地は、キャンプ富士と道路一つ隔てて所在しており、公私とも同盟関係を強めている。

 滝ヶ原駐屯地飛行場地区はここキャンプ富士の域内に滑走路と管制塔を有し、教育支援飛行隊がキャンプ富士に駐屯、MV-22可動翼機がキャンプ富士において一般公開されるのは、ここに飛行場がある為なのですね。今年は当初F-35B戦闘機の飛行展示も予定されていた。

 F-35Bは当初、同日開催の岩国日米友好祭2018と並行し一機がキャンプ富士上空を航過飛行する予定でしたが、富士と岩国の二つの海兵隊行事掛け持ちは厳しく、代わりに厚木を岩国へ移転した第五空母航空団F/A-18E戦闘攻撃機が2機編隊で航過飛行を実施しました。

 海兵隊施設も常駐部隊はいませんが、兵舎、兵士食堂、消防署、医療クリニック、冷蔵施設、ジム、郵便局、図書館、下水道処理施設等が並ぶ。こうした事から、アメリカンなピザにハンバーガーやホットドック等などを愉しむことができ、そういった意味でも有名だ。

 ピザにビール、ステーキとバーボン、レバシロに清酒、実はそんなアメリカンな組み合わせで超人気アニメ“ゆるキャン”のグビ姉こと鳥羽美波先生のキャンプをキャンプ富士で再現しようとおもっていたのですが、ハンバーガーの列だけで昼頃は、ほぼ二時間待ち、混雑しすぎていたのは残念でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】岐阜基地航空祭2014【1】航空自衛隊創設六〇周年記念航空祭(2014-11-23)

2018-05-06 20:15:09 | 航空自衛隊 装備名鑑
■岐阜基地ファントム大集合!
 日曜特集、今回は航空自衛隊創隊60周年記念岐阜基地航空祭です。北大路機関では50周年航空祭も紹介しました。

 岐阜基地航空祭は数少ない本特集を開始しました2005年以来毎年行くことができています自衛隊行事です。毎年撮影に行く、ということは簡単なようで難しいことで、こちらが万全の準備をしていましても航空祭は例えば災害などで中止になってしまうこともあります。

 航空祭に毎年展開しようとしますと、台風や爆弾低気圧等気象条件により中止という事もありますし、ミサイル防衛等の実任務増大により中止となってしまうこともある。2005年から今日まで毎回行くことができているのは岐阜基地航空祭と守山駐屯地祭のふたつのみ。

 岐阜基地、日本最古の飛行場です。陸軍砲兵隊の演習場となっていましたが、ここに滑走路を建設し飛行場としたもの。飛行場として用いられていた場所は日本には所沢や調布はじめ幾つかあります、アンリファルマン機を用い徳川大尉が日本初の飛行を行った、など。

 しかし、そこは演習地を飛行場に転用したのみでして、飛行場、として建設されたわけではない。飛行開発実験団と第2補給処がおかれている岐阜基地は、岐阜県各務原市にあり、基地からは岐阜上を見上げるとともに岐阜市中心である岐阜駅前高層ビルが望見できます。

 そして名古屋市北方30kmの立地にありまして、航空祭は混雑することでも有名です。航空自衛隊の航空祭では首都圏で西武線一本という好立地にある入間基地の来場者30万が飛び抜けていますが、岐阜基地の15万という来場者は、浜松基地と並ぶ多数の来場者です。

 千歳基地航空祭は千歳基地でしか見る事の出来ない巨大な政府専用機とF15の大規模な飛行展示が有名ですし、日本のファントム発祥の地とよばれる百里基地航空祭、観光地の玄関にある那覇基地航空祭、ブルーインパルスの基地である松島基地航空祭も有名です。

 しかし、交通が不便であり、大都市からの距離も大きいことからこちらはまれに10万を越える来場者が押し寄せますが、基本は一番集まるのが入間基地、続いて岐阜か浜松、浜松と岐阜基地に関しては大規模飛行展示と共に東海道新幹線で結ばれ、便利なのですよね。

 名古屋近郊にあるとともに、京阪神からは始発電車で充分間に合う立地、新幹線ならば東京から始発でも開門直後に到着できる、そんな立地にあります。来場者が多いのは、東京から新幹線で日帰りが可能、京阪神から在来線で日帰りが可能、名古屋からも近いという。

 しかも岐阜市は枚方市や高槻市なみの人口を誇り、ホテルは充分あります。岐阜市と名古屋市は京都市と大阪市よりも近く、大阪市と神戸市という程度の距離感ですので、例えば岐阜にホテルがなくとも名古屋の収容力は凄い、なるほどこれならば混雑するはずです。

 名鉄線とJR線で岐阜基地へ行くことができます。滑走路に平行して名鉄各務原線が運行され名古屋から臨時特急も運行される、名鉄線は複線で、JR高山線も岐阜基地付近では名鉄線に並行して運行されていますので、名鉄が満員ならばJRを利用したならば早い。

 鉄道は滑走路に並行して運行されていますので、正門、北門、新北門、それぞれに個別の最寄り駅がある。すると、それほど駅ごとに混雑する印象がないのです。勿論、開門前には基地の前にそれはそれは凄い行列が出来まして、基地へ向かう陸橋も大混雑はします。

 飛行開発実験団が展開する岐阜基地ですが、この部隊が運用する多彩な航空機が岐阜基地航空祭の魅力の一つと言えるでしょう。多様な機種配備の背景、航空自衛隊が新型の航空機やミサイルを運用するさいには、技術開発や実験と試験運用、全てこの基地で行います。

 F35戦闘機のように最新型の装備についても岐阜から試験要員を派遣し、技術試験を行う。また、F-35戦闘機の日本最終組立は小牧基地に隣接する三菱小牧FACOで行われますが、飛行試験では岐阜上空を航過飛行するほど。ですから装備している航空機の種類が物凄い。

 戦闘機は旧式のファントムから近代化改修を進めるイーグルまで、もちろん日米共同開発のF2戦闘機も配備されています。そしてF-2戦闘機は評価試験用塗装のものが大半です。気づけばこの三機種が配備されている基地というだけでも岐阜基地だけなのですよね。

 しかもファントムに関してはF-4EJを航空自衛隊は導入しましたが現在第一線部隊に配備されているのはF-4EJ改です、そしてF-4が今も第一線で運用できる背景にはここでの改良がある。もちろん岐阜にEJ改は配備されていますが、EJ型が全国でここだけ少数残る。

 イーグルに関しても航空自衛隊は様々な改良を実施しています。その改良に際して搭載する先端機材は、岐阜で適合性を検証し、しかも実任務に対応できるかを研究実験するのも飛行開発実験団ですので、岐阜には改良型や搭載用新型器材を各種取りそろえています。

 当然新型ミサイルの実験なども岐阜で行うため、地上展示航空機に装着されているミサイルもここで初公開されるものが少なくない。近年ではGPS誘導型のレーザーJDAM誘導爆弾、F-15搭載用無人偵察機、超音速対艦ミサイルXASM-3等の展示が話題となりました。

 ブルーインパルスで運用されるT4練習機も評価試験支援用に配備しています。そして天候偵察や低速試験支援を含めT7練習機も装備されている。超音速練習機として2005年に最後の一機が引退した国産超音速T2練習機が最後まで運用されていたのもここ岐阜です。

 初等練習機で旧型のT3練習機最後の一機が除籍されたのも、ここ岐阜基地、岐阜基地で過去に活躍した航空機は保存展示機区画、そして隣接の、かかみがはら航空宇宙博物館に揃っている。このほか、無人偵察機が格納庫に並んでいることも見落としてはなりません。

 輸送機は最新型のC2輸送機が初飛行したのは製造されているのが川崎重工岐阜工場ですので、この岐阜基地滑走路から初飛行を果たしました。そして評価試験も岐阜基地で技術研究本部が実施、現在は防衛装備庁に改編されまして、一貫して開発を担った基地です。

 C-2輸送機はその後に飛行開発実験団に移管されましたが、ここ岐阜基地で運用されています。そしてC1輸送機も大型機材の試験用や試験機材の輸送支援へ配備されています。この巨大なC-2輸送機用第七格納庫は基地周辺の国道からもひときわ目立ち鎮座しています。

 C1FTB,フライトテストベットの略称ですが、飛行開発実験団に配備されています。一見してすぐわかるのはC1FTBの塗装で錆止めの銀色地金の塗装となっています。エンジンテストを含め、通常の戦闘機では搭載試験を行うことができないような大物を装備します。

 技術研究本部時代はC-1FTBにP-1用エンジン試作機を搭載し試験も行った。そして従来型のC1輸送機も配備されています、こちらはC-2輸送機に交替したとも。一通り、これだけの航空機をみることができることで、岐阜基地には多くの航空機愛好家が集うのですね。

 もちろん、E-767早期警戒機とKC-767空中給油輸送機やB-747政府専用機といった大型機、E-2C早期警戒機は配備されていませんし、YS-11の電子偵察型等も配備されていませんが、こういった特殊用途機の試験は飛行開発実験団が最初に行っている訳でもあります。

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憲法記念日論点二〇一八【後篇】わかりやすい憲法議論を,合憲原則へ違憲事項限定列挙が必要

2018-05-05 20:18:20 | 国際・政治
■主権者たる日本国民の責務
 憲法議論は憲法解釈というわかりにくい部分が、実定法ではなく司法府と行政府と立法府が運用する憲法故に存在しますが、この視点について。

 子供の日という事で考えたいのは、憲法問題をもう少し明確にして子供でも分かるようにしなければならない、というもの。この為には憲法上やっていけない事と自国民を保護する観点から容認される事を明確に示す事で、例えば義務教育にて教わる平和憲法の内容と我が国防衛力という視点に児童生徒が矛盾を感じず済む法体系を構築するべきでしょう。

 自衛隊法と日米安全保障条約、PKO協力法に武力攻撃事態法や安全保障協力法、集団的自衛権行使、司法府の結論は全て合憲です。司法府は統治行為論として判断は司法府が行うものではなく行政府管轄であるとして判断を委任した上で、行政府内閣法制局が統一解釈として合憲と判断している為、法的には上記全て合憲です。しかし独自解釈は多々ある。

 市民団体等には自衛隊は違憲、に始まり、武力攻撃事態法は違憲、安全保障協力法制は違憲、果ては新護衛艦は違憲に普天間基地は違憲、と自らが一人司法府となり憲法判断を行う事例を散見、いや丸山公園や百万遍では多見します。言い換えれば一人司法府違憲判断は不法判断ですので鳩時計時報の如く受け止める事が自然なのですが制度の欠缺でもある。

 違憲ならば改憲、合憲ならばそのまま、という視点からはそれほど違憲を主張するならば合憲となるよう改憲を提案してみてはどうかとも考えつつ、憲法第一主義を掲げる方々は、言い換えれば天皇制を含む日本の現行制度そのものを支持している、国体護持の視点も含むので、この視点はどうかな、と思いつつやはり平和主義の上限明確化が先決とも考える。

 一国平和主義は響きこそ美しいのですが、周辺国の軍事恫喝、日本の周辺は核兵器国と核保有国に包囲されている特に厳しい状況下で、その恫喝に耐えて主権を維持する事には限界があります。核武装による一国平和主義、スウェーデン等で戦後真剣に議論された命題を含め考えるならば別ですが、通常戦力だけでも一国で均衡を維持する事は非常に難しい。

 重武装中立政策を含む一国平和主義を貫く場合にも、日本は環太平洋火山帯弧状列島故に海洋を防衛正面として守るには有利な立地である一方、火山性地形から食料自給率とエネルギー自給率が限られ、国土の地形上自国の排他的経済水域を防衛するだけでも長大な海軍力が必要で、その上で上記命題に取り組みには最低限シーレーン防衛が不可欠となる。

 一国平和主義は地域大国との二極関係を考えるならば均衡主義を、つまり中国に対抗できる兵力均衡、ロシアに対抗できる兵力均衡、というものを維持すればよいのですが我が国の立地は両国と排他的経済水域を接している状況ですので、二国標準主義、イギリスがかつて掲げたような壮大な防衛力が必要となり、このような重武装中立では、現実味が無い。

 集団安全保障の枠組みの中で、これも繰り返しになりますが日本国は集団的自衛権行使への判断を今世紀まで曖昧としつつ1956年に純然たる集団安全保障機構である国連に加盟しているのですが、集団安全保障の枠組みの中で地域を超えた環太平洋地域における均衡体制や相互抑止の体系を構築せざるを得ない、ここが平和主義の上限を必要とする背景です。

 陸海空軍は有さないが自衛軍や防衛軍という呼称ならば合憲か、国際法上の自然権として且つ国際慣習法上の自衛権における集団的自衛権行使に米英仏有志連合のシリア対処や米英有志連合のイラク対処に当たる措置は合憲であるのか、国際慣習法上の自衛権に自衛権の先制行使は何処まで認められ且つ憲法上合憲であるのか、平和憲法の上限はどこまでか。

 限定列挙として違憲行動を明確に示す、こうした施策が平和憲法の上限を明確化する施策として考えられます。具体的には領土割譲目的での第三国進出禁止や策源地攻撃における人口密集地に対する絨毯爆撃の禁止、核爆発装置開発と移転導入の禁止や国連安全保障理事会決議に基づかない第三国への武力攻撃の禁止、有事の無制限潜水艦作戦の禁止など。

 勿論こうした限定列挙は、明示しますと周辺国の軍事行動に、特に攻撃する側の本土が攻撃や占領されないのならば、と日本に対する過度な軍事行動を行う事に繋がりますので、交戦規則、というような形で部内に明示する形にて、その限定列挙の様式は我が国が加盟する国際法により軍事行動を限定してゆく、という方式がある種自然ではないか、と。

 本特集では政治参加の重要性を前述しましたが、重要なのは合憲違憲の論争に終始し不可思議な個人的憲法解釈を吹聴するのではなく、国民主権の国家なのですから憲法解釈以前に、主権者の代表を選挙にて選ぶ際に、判断を委任するに相応しい代表を送る為の努力の在り方、考える事が肝要ではないでしょうか。こうした意味で主権者は責任があるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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憲法記念日論点二〇一八【中篇】付随的違憲審査制度の限界と司法が行政へ託す統治行為論

2018-05-04 20:12:21 | 国際・政治
■憲法裁判所無き現行憲法
 日本国憲法を論じる場合、行政府が最大の課題とする点は平和主義を手段から目的へ昇華させる事でしょう。

 防衛安全保障、憲法問題はプライバシー権や環境権と様々な視野から憲法改正の必要性が提示されていますが、如何に議論を深めようとも、やはり最大の論点は防衛安全保障について、国の交戦権や陸海空軍を認めない憲法の限界がある、ここに帰結します。交戦権は無いが自然権としての自衛権はある、軍隊はだめだが自衛隊や国連軍はその限りでない。

 日本国憲法は、軍隊ではない実力組織としての自衛隊を維持し今日に至る。集団的自衛権行使には数多の議論を半世紀以上重ねつつ憲法制定まもない1956年、純然たる集団安全保障機構である国連に加盟、そもそも非武装中立論の議論においてさえ、国連加盟、しかも国連憲章には国連への協力義務があり、国連軍については否定されるものは極めて稀有だ。

 国連と日本国憲法、日本国憲法制定直後の朝鮮戦争において国連軍広報司令部が日本国内に置かれる事についてさえ、敢えて知らないことで議論を忌避しているように受け止められ、実のところ建前と本音の使い分けの如く、実質日本国憲法の平和主義とは曖昧模糊とした、政権の、そして野党や個々人までも勝手に定義づけ出来る鵺の様な存在にも見える。

 平和主義が求める防衛力の限界と外交政策の限界はどこまでなのか、護憲という視点から現行憲法を考える場合、思考作業を忌避する現状維持の視点からの消極的護憲という立場から脱して、平和憲法の限界点を明確に示すことが、結局のところ護憲と改憲の分水嶺を明確に示すところへ繋がる、即ち平和憲法が守るべき平和への道筋を示す事が重要と思う。

 司法府は、しかし付随的違憲審査制度、つまり具体的事件における付随的な憲法との適合性を判断するとの現行司法制度に依拠し、憲法判断を積極的に果たす機能を有していません。一方、司法府が統治行為論、この難しい単語よりも英訳を直訳した政治の問題とした方が分かりやすいのだが、行政府が判断すべき問題として内閣法制局に一任しています。

 付随的違憲審査制度の難点は、憲法上特に防衛安全保障という一時の遅滞が生命財産の喪失に直面する問題についてその判断に時間を要する点で、立法そのものの憲法上の整合性に事後に付随的違憲審査制度にて仮に違憲を指摘する場合、法治国家として重大な超法規状態が自然醸成、という部分があります。勿論、制度として否定するつもりはありません。

 司法制度を俯瞰しますと一方、日本国憲法の平和主義と国民の安全という矛盾しなさそうで、目的としての平和を重視するか手段としての平和を重視するかの不均衡、矛盾する制度を採用する際には、やはり防衛安全保障への合憲性判断に際し、付随的違憲審査制度を補完する独立的合憲審査制度にあたるような制度というものは必要ではないか、とおもう。

 憲法裁判所のような制度があれば憲法判断を付随的違憲審査権に基づく制度を超えた積極的判断が可能となる、こう考えた事もありますが、憲法裁判所設置は現行憲法が禁止する特別裁判所にあたりますので設置できません。仮に改憲を経て憲法裁判所制度を導入した場合も、例えばフランス憲法裁判所制度等を比較憲法論の視点から分析すれば限界がある。

 フランス憲法裁判所は受理に際し、統治行為論が絡む命題は不受理となり、行政裁判所への提訴を提案します。行政裁判所は仏語でコセイユデタ、国務院に設置され首相が判事を務める制度です。国務院に立法の適法性を問う構図となりますので、憲法裁判所制度を構築したとしても立法の合憲性を問う機構は、国家制度上あり得ない、という事になります。

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憲法記念日論点二〇一八【前篇】衆議院総選挙連立与党論点に挙がった改憲と国民政治参加

2018-05-03 20:11:21 | 国際・政治
■憲法,平和主義は権利か義務か
 本日は憲法記念日、そこで今回から年に一度ということもありこの国の在り方を示す憲法について少し考えてみましょう。

 日本国憲法の平和主義は平和を目的ではなく行政上の手段としている為、防衛政策の観点からはその現実が本土決戦主義であり、有事の際には着上陸を以て本土決戦を行う、膨大な人命と国富が消耗し影響は甚大である。平和主義の手段として求める事の難しさを前回提示した際、これは第二次大戦における外征主義への反省ではないかとの声を頂きました。

 本土決戦主義ではあっても外征主義として国民が外征に大量動員された第二次世界大戦の厳しく悲しい歴史を前に当時制定された憲法にはこうした視点が盛り込まれ支持された、と指摘されますと、説得力はあるものです。ただ、外征を回避しつつ本土決戦主義という視点も二極主義といいますか過剰論理の印象が拭えず、折衷案が必要だと切に考えます。

 平和主義とは国民が享受する平和を維持するための平和主義であり、政治が周辺国に平和を除く選択肢を封じられる事での厳しい結末を国民が甘受し耐え凌ぐ義務であっては、文字通り民を忘れた政治といえましょう。そして平和手段以外でも戦争を抑止する手段は多々あり、これには予防外交として防衛協力や平和創造、戦争回避手段も多く存在します。

 第二次世界大戦終戦直後という日本国憲法制定当時の時際的視野に視座を持てば、戦前の不戦条約が国際慣習法としての機能を有すると共に武力攻撃禁止条項を盛り込んだ国連憲章が新たな国際慣習法として、後に強行規範として規範性を有するように歩む中、絶大な軍事力の母体となった国土が健在の我が国を、よもや侵略する事は無い情勢がありました。

 国連憲章二条四項の武力攻撃禁止原則が、しかし第二次世界大戦後全ての戦争を封じたかと問われれば、国際法上戦争が武力紛争と名を変えたのみである事は世界史を俯瞰せずとも昨日今日の新聞国際欄を斜めに俯瞰するだけでも自明でしょう。故に安全保障は常に主権国家の課題であり、国際の平和と安全は全ての諸国民の祈念するところでもあります。

 日本国憲法は、しかし平和主義を掲げつつ、その平和主義を曖昧模糊なものとしたことで、手段としての平和主義か、国民権利としての平和主義か、進んで諸国民の権利としての平和主義なのか、不明確です。ただ、安全保障への多国間協力体制構築を制限している、少なくとも立憲当時想定外の、積極関与する事への制限を及ぼしている事は否定できません。

 憲法改正、昨年の衆議院総選挙の一つの論点となり、衆院選の結果受けての国会審議では闊達な憲法議論が期待されましたが、野党は与党の醜聞を糾弾し議場審議拒否と路上演説を繰り返す始末、国民の代表を選んだ総選挙、議員は国民の水準から選ばれるという原則からは、残念ながら政策議論よりも醜聞を追う選挙民の意思が反映されているかたちです。

 平和憲法、この憲法体系は日本国憲法制定当時画期的な概念であったのですが、元々は国民への平和教授を目的とした平和主義が、手段としての平和を求める平和主義へと置き換わり、国民が平和を享受するよりは平和的選択肢のみを国が選ぶことでの結果に険しい現実を突きつけられる国民への逃げの方便となってはいないか、大戦が過去の話となり思う。

 国民主権の現行憲法において、主権者たる国民はどれだけ政治に関与しているのか、特に政治のための時間をどれだけ仕事と余暇を割いて捻出しているのか、実質的に目的としての平和主義が手段としての平和を選ぶ主義へと転換している事について、その要因を考えますと、政治はお上、政治参加機会を捻出しにくい社会構造にも要因があるよう思えます。

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【15】F-35B,ヘリコプター搭載護衛艦搭載と格納庫収容能力

2018-05-02 20:17:40 | 先端軍事テクノロジー
■いずも型&ひゅうが型護衛艦
 F-35Bを航空母艦としてではなく制海艦として運用するという違いを前回提示してみました。それでは、実際に搭載するという視点から。

 ひゅうが型護衛艦に、F-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載する場合、現実的に何機搭載できるのでしょうか。ひゅうが型護衛艦の格納庫は格納庫区画が全長120mと全幅最大20mと最小19mです。ただ、ここにはエレベータ区画と整備区画が含まれています、ここを差し引いた格納庫単体では全長60mとなっていてそれでも広大な格納庫ですね。

 インヴィンシブル級航空母艦、ひゅうが型護衛艦と比較される事が多いイギリス海軍の軽空母では全長152mと幅22.6mという規模の格納庫が確保されており、その容積がはるかに大きいことが分かります。ひゅうが型護衛艦は水上戦闘艦としてのソナー区画を有している為、軽空母としての設計を有するインヴィンシブル級との相違点が強調されるかたち。

 SH-60K哨戒ヘリコプターは胴体長15.9m、胴体全幅2.7mです。ただ、艦載機ですので尾部と回転翼を折り畳む事が出来、この場合は全幅3.3mとなります。ひゅうが型護衛艦の航空機定数はSH-60K哨戒ヘリコプター3機とMCH-101掃海輸送ヘリコプター1機を定数としていますが、実際は格納庫にSH-60Kを3機並列搭載する様子が演習映像で確認できる。

 F-35B戦闘機は全長15.4mmと全幅10.67mという形状でF-35A戦闘機と同大です。空母艦載機型のF-35Cであれば全長15.5mと全幅13.11mなのですが空母格納庫艦載を想定し主翼に折畳機構がある為、全幅9.10mまでコンパクト化できるものの、F-35Cでは垂直離着陸が不可能です、全幅10.67mでは完全に並列し2機を格納庫に収容する事は出来ません。

 ただ、SH-60K哨戒ヘリコプターとF-35B戦闘機を並列に収用する事は可能です。寸法ではSH-60K哨戒ヘリコプター2機とF-35B戦闘機1機を並列搭載する事は出来そうですが、波浪等の動揺に備え格納庫内で機体を固定する必要があります。アメリカ海軍のニミッツ級航空母艦では完全に敷き詰めるような収容方式を採っていますが、護衛艦では難しい。

 それでも、格納庫全長が60mあればF-35B戦闘機4機とSH-60K哨戒ヘリコプター4機を縦列搭載可能で、整備区画にF-35BかSH-60Kを1機搭載可能です。SH-60Kを対潜戦闘重視の場合、一機でも多数を搭載する必要はありますが、忘れてはならないのが現在は汎用護衛艦全てにヘリコプター運用能力があり、SH-60K搭載はそれほど切迫していません。

 F-35B戦闘機を並列に格納庫に収容する事は出来ませんが、斜めに並べるならばF-35Bだけで7機を多少詰め込めれば8機を収容可能で、SH-60Kについては護衛艦はるな型のように回転翼を展開の重整備を飛行甲板で行うと割り切り、整備区画へ収容するならば2機を、整備区画は幅が20mありますので尾部を畳まず無理を通せば横に3機を搭載できます。

 SH-60K哨戒ヘリコプターを20m四方の区画に3機並べる事は一見無謀に見えますが、全幅14.6mの護衛艦あさぎり型航空機格納庫が、勿論格納庫幅は全幅よりも狭くなりますが容積上緊急時に2機の収容を想定しています。平時には満載一杯の航空機搭載の必然性は薄いのですが、緊急時に搭載する能力はこの程度ある、という視点で見ればよいでしょう。

 飛行甲板にも艦載機を留置する、格納庫容積を考えた場合には限界があるように見えるF-35Bの搭載能力ですが、本来航空母艦は格納庫に半分程度の艦載機を収容するのみで、少なくない機数を飛行甲板に留置します。平時の定数は別としまして緊急時に最大収容できる機数はF-35Bは飛行隊規模10機、SH-60Kも同時に3機以上まで詰め込めるのです。

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