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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱とF-35B&EA-18G【30】F-35B艦隊運用の有用性と沖縄局地防空任務の限界

2019-02-07 20:14:03 | 先端軍事テクノロジー
■F-35A/B戦闘機142機体制
 新防衛大綱は具体的にF-35A/B戦闘機を142機揃え、我が国航空防衛力について第五世代戦闘機保有数を世界第二位の水準とする思い切った内容を含めており、中でも汎用性の高いF-35Bを導入する点は画期的といえます。

 F-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として導入する事は、特に艦隊戦闘における情報優位を獲得する観点から必要であり、また能力的にもヘリコプター搭載護衛艦にはその運用は可能であると考えます。しかし、局地防空を担う戦闘機の母艦として運用するならばどうか、個人的にその運用には反対ですし、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型はもちろん、いずも型護衛艦にもその能力は難しいように考えます。

 かが、満載排水量27000tありまして全長も第二次大戦中の空母加賀に匹敵、此処まで大きな護衛艦を見上げますと局地防空任務へ対応出来そうな印象を受けなくも無いのですが、実質艦隊防空が限界であるように思います。局地防空を担うには飛行隊規模の、それも12機の縮小編成ではなく緊急発進待機を含め18機から24機の戦闘機を搭載せねばならない。

 局地防空、つまり那覇基地の能力を艦上に展開させる、という運用ですが、ヘリコプター搭載護衛艦は那覇基地の兵站倉庫程収容力はありません。現実問題として航空母艦が開発されて間もなく100年、局地防空に航空母艦そのものを展開させた事例はあるにはあるのですが、その場合は艦載機を陸上基地に展開させ実施しています、大戦中、ラバウル航空戦に空母翔鶴や瑞鶴艦載機を展開させた事例がこれに当て嵌るでしょう。

 第二次世界大戦中という事例は古すぎるのではないか、と思われるかもしれませんが、航空母艦が実戦に用いられた実例は朝鮮戦争やヴェトナム戦争、限定的ですが第二次中東戦争や第三次印パ戦争、フォークランド戦争、パナマ侵攻にグレナダ侵攻や中米麻薬戦争等多々あります、しかし、局地防空ではなく航空優勢確保がその手段として用いられました。

 那覇基地の代替に局地防空用としてヘリコプター搭載護衛艦からF-35B戦闘機を、という選択肢を用いるのであれば、無理に護衛艦に搭載するのでは無く那覇基地へ航空掩体や滑走路修復器材集積を強化すると共に沖縄本島に所在する嘉手納基地や普天間基地、この他の沖縄県内や鹿児島県島嶼部の民間空港活用や代替滑走路確保を重視した方が確実です。

 ラバウル航空戦を実例として示しましたが、航空母艦が陸上施設を攻撃する事はありますが、地域防空に充てるには航空母艦は、そもそも局地防空の地域が動かないのですから、航空母艦の機動力というものの優位性が喪失してしまうのです、どの海域へ遊弋している蚊の大まかな推測が成り立ってしまう訳ですね。そんな運用を行うならば、攻撃を仕掛けてくる敵航空母艦や敵航空基地施設そのものを攻撃した方が確実ですし早い。

 ニミッツ級航空母艦程度の艦であれば可能なのか、と問われれば不可能ではない、という回答があり得ます。ニミッツ級はGフォード級空母と並び世界最大の航空母艦ですが、局地防空を行う設計ではありません、何故ならば発進に用いる蒸気カタパルトの能力から一日190機程度しか発着を行えない制限がある為で、陸上基地滑走路程自由度はありません。

 クイーンエリザベス級航空母艦、イギリス海軍が導入した新空母で満載排水量65000t、最大36機のF-35B戦闘機を運用します。クイーンエリザベス、プリンスオブウェールズと二隻が建造されますが一機一億ポンドというF-35Bを二隻分艦上稼働させる余裕が無く当面は一隻が空母任務として用いられるとのこと。実際、制空任務はあの規模が必要でしょう。

 F/A-18Eを輸入して運用する案やF-35BかF-35Cか、クイーンエリザベス級航空母艦は建造計画当時に相当その艦載機に議論がありましたので、必ずしもF-35B専用の航空母艦として要求された訳ではありませんが、イギリス海軍は少なくともF-35BとF/A-18Eと同列の戦闘機を見做しており、予備燃料や予備弾薬と中長期的な作戦を考えての設計でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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