北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新哨戒艦はどんなフネ?新中期防考察記【4】ポストはやぶさ型ミサイル艇と将来型三胴船

2019-02-04 20:07:37 | 先端軍事テクノロジー
■みずとり型哨戒艦(仮)選択肢
 哨戒艦、全く新しい装備、これを運用する部隊についても地方隊か新設部隊かの確たる情報がありませんが、艦型だけは将来型三胴船研究という視点を提示してみました。

 哨戒艦とは将来型三胴船研究の成果が反映されるのではないか。この視点を前回までに示しました。実際、基準排水量1160tという船体規模は中期防衛力整備計画に示されている艦艇導入計画の排水量と矛盾せず、また防衛省は防衛庁時代にSES実験船めぐろ、という試験船を導入し特殊船形状の波浪影響等について30年以上もの研究が蓄積されています。

 はやぶさ型ミサイル艇、海上自衛隊が6隻を運用する韋駄天高速艇ですが、実はこのミサイル艇について、最終的には通常船型に収斂したのですが、当初案では真剣にSES船型という低抵抗構造の船体が検討されていました。もっとも、前型にあたる一号型ミサイル艇が水中翼船構造をイタリアより技術導入し実現していますので突飛な案ではないのですが。

 みずとり型哨戒艦、と名前がどうなるのかは別としまして、用途としてはどういったものが考えられるのか、その一つの要素はミサイル艇の後継でしょう。ミサイル艇は対艦ミサイルを搭載し水上打撃へ特化した水上戦闘艦です。これが一隻遊弋しているだけで平時においては強力なプレゼンスを発揮できまるが、有事においては用途が限られる、という。

 はやぶさ型ミサイル艇はSSM-1艦対艦ミサイルと76mm艦砲、それに武装工作船制圧用に重機関銃を搭載しています。しかしSSM-1は射程が200kmちかくあるのですが、はやぶさ型に水平線以遠、つまり20km以上を見渡す手段がありません。勿論、沿岸近くで味方の地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊、沿岸レーダーと協同すると強力なのですが。

 ミサイル艇の草創期にイスラエルのドヴォラ級という満載排水量49tの小型船がありましたが、搭載するガブリエル対艦ミサイルの射程は射程が24kmと、127mm艦砲の射程を念頭としていました。台湾海軍がドヴォラ級を参考に49隻量産した海鴎型ミサイル艇も敢えて射程の短い雄風1型対艦ミサイルと20mm単装機関砲にとどめて装備していました。

 SSM-1のような射程の大きな対艦ミサイルを運用するにはヘリコプターによる索敵誘導支援が欠かせません、はやぶさ型ミサイル艇もデータリンクにより初めてその真価を発揮できるというもの。もちろん平時におけるプレゼンスは強烈です、ミサイルと艦砲を備え高速で白波をけたてて航行、地方隊展示訓練でミサイル艇の展示を視れば見た目も勇ましい。

 しかし有事の際には独力での能力が非常に限られたものになってしまうのも、また事実です。実は、対艦ミサイルを大量に搭載するミサイル艇数隻が奇襲を掛ければ、イージス艦を撃沈できる、と過去には自衛隊装備調達の国産装備を批判する“間違いだらけの自衛隊シリーズ”という書籍でミサイル艇の有用性を示したものがありますが、その為には過度な幸運を要する。

 SH-60K哨戒ヘリコプターから海上自衛隊の哨戒ヘリコプターにはAGM114ヘルファイア空対艦ミサイルの運用能力が付与されました、射程8kmで陸上自衛隊ではAH-64D戦闘ヘリコプターに対戦車ミサイルとして搭載されています。射程がSSM-1よりも二桁短いですが、用途はあります、それは沿岸海域で存在感を増していたミサイル艇の駆逐というもの。

 将来型三胴船規模の水上戦闘艦であれば、ミサイル艇以上のポテンシャルを発揮できるでしょう。搭載できる装備もかなり大きくなりますし、なによりも海上自衛隊が導入予定のMQ-6無人ヘリコプターを運用できる。打撃力一本に特化したミサイル艇後継として様々な用途に対応する将来型三胴船が哨戒艦として充てられる可能性、やはり考えられましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする